Googleは独自イベント「Android Show」にて、Android 16で導入予定の新デザイン「Material 3 Expressive」を初披露した。紫やピンクを基調とした鮮やかな色彩と、有機的なモーション効果を軸に、視覚的な情報整理や感情的なつながりを重視した設計へと刷新される。若年層に焦点を当てたこの変更は、18〜24歳の87%が支持しており、特にiPhoneユーザーに多い層であることが注目点である。
感情を軸にした「Material 3 Expressive」が導くAndroid 16の転換点

Googleが発表した「Material 3 Expressive」は、単なる視覚的な刷新ではなく、ユーザーとの感情的なつながりを重視したインターフェースへの大転換である。紫やピンクを多用した鮮やかな配色、35種類の新しい形状、通知操作時の自然な動きなど、UX全体がより有機的かつ動的に再設計された。2014年のMaterial Design以来で最多となる46の調査と18,000人以上のユーザー分析に基づくこの変更は、視認性や整理性ではなく、体験そのものへの没入感を高める狙いがある。
特に注目すべきは、通知のスワイプ時に生まれる“空間の動き”や視覚的なグループ化の手法であり、アニメーションを通じて情報の意味や階層が直感的に伝わるよう設計されている点だ。また、デザイン変更を支持した18〜24歳層の反応にもGoogleの意図が見える。この年代はiPhoneユーザー比率が高く、そこに照準を合わせた表現選びが意識されていると考えられる。
この設計思想は、Android OSの根幹にある自由度の高さに対する見直しでもある。これまでの「機能中心」から「感情中心」への転換は、Android 16以降のプラットフォーム全体に波及する可能性がある。
Wear OSとGoogleアプリ群も巻き込む一斉再構築の波
Material 3 Expressiveの導入はスマートフォンのUIに留まらない。GoogleはWear OS 6への同デザインの展開も明言しており、これにより時計画面でも紫基調のテーマやアニメーションが一体となった操作感が実現される。特に、ディスプレイのサイズや形状に応じて変化する「アダプティブボタン」の導入は、限られた表示領域を有効に活用する新たな挑戦である。また、Google PhotosやGoogle Mapsなど主要アプリでも今後数か月でのUI刷新が予定されている。
さらに、Wear OSには写真からテーマカラーを抽出する新機能も追加され、外観の一体感がより一層強化される。このように、Googleが展開する主要サービスとハードウェアが新たなUI設計思想のもとで統一される動きは、過去に例がない広範な取り組みである。Android AutoやGoogle TV、さらには未発表のXRデバイスにまでMaterial 3の要素が波及することが示唆されている点も見逃せない。
こうした統合戦略は、個別最適化を重ねてきた従来のGoogle設計とは一線を画すものであり、今後の製品群の一貫性と世界観構築に重要な意味を持つと考えられる。
iPhone的機能への対抗とAI搭載の広がりが示すGoogleの方向性
Android 16には、Appleの「Dynamic Island」に酷似した「Live Updates」や、「Lockdown Mode」に対応する「Advanced Protection」など、明確にiOSを意識した機能がいくつも追加されている。Live Updatesでは、Uber Eatsの配達状況などを画面上部に常時表示でき、情報への即時アクセス性が強化される。一方で、Advanced Protectionは高リスク環境を想定したセキュリティ強化機能で、USB経由の不正接続や無線によるアクセスも遮断可能とされている。
さらに、Find My Deviceの進化形として「Find Hub」も導入予定であり、UWB(超広帯域)技術による高精度な位置追跡がMotorolaの「Moto Tag」から開始される見込みである。こうしたiOS類似の機能群は、Androidの脆弱性を補完するだけでなく、iPhoneからの移行を検討する層への配慮として捉えることもできる。
加えて、Geminiのあらゆるプラットフォームへの展開も今回の「Android Show」で明言され、Android AutoやGoogle TV、Wear OS、さらには今後登場するXRグラスまで含めた広域展開が計画されている。この流れは、GoogleがUIの統合とAIの浸透によって、一貫した体験設計を重視し始めていることを示している。今後のアップデートでも、デザインとAIの融合が中心に据えられる可能性が高い。
Source:TechRadar