中国のBeelinkは、16コア・126TOPSのAI性能を誇るRyzen AI Max 395を搭載した新型ミニPC「AI Mini」を発表した。Mac Studioを強く意識したこのモデルは、Zen 5世代のCPUとRadeon 8060S統合GPUにより、AI処理と汎用計算の双方を効率化する設計となっている。
最大128GBのRAMやUSB4、10GbEなどの充実したインターフェースにより、クラウドに頼らずローカルAIサーバーとしての運用も視野に入る。DeepSeek R1のような高負荷AIモデルにも対応可能とされ、開発者やコンテンツ制作者向けに訴求する。
16コア搭載のRyzen AI Max 395が支えるBeelink AI Miniの圧倒的処理性能

Beelinkが発表したAI Miniは、AMDの最新チップ「Ryzen AI Max 395」を採用し、コンパクトな筐体ながら16コア32スレッド、最大126TOPSのAI推論性能を誇る。このプロセッサはZen 5アーキテクチャを基盤にしており、高速な汎用演算とAI特化処理を同時にこなす設計が特徴である。加えて、統合型のRadeon 8060S GPUを搭載することで、グラフィックス処理能力も従来モデルから大幅に向上している。
この構成により、AI Miniは開発者がローカルでAIモデルを直接動作させることを可能にし、クラウド環境に依存せずに高負荷な計算作業を処理できる。Beelink自身も、DeepSeek R1のような高性能AIを単体で動作させられる点を強調している。16コアAPUとGPUの一体化により、従来の省スペース型PCでは困難だった処理が現実のものとなった。
ただし、最大性能を引き出すには冷却効率や電源の安定供給といった設計面の完成度も問われる。AI Miniがその点でどこまで成熟しているかは、今後のレビューなどを通じて慎重に評価される必要がある。
最大128GBメモリと高速通信でローカルAIサーバー化も視野
AI Miniは最大128GBのDDR5メモリを搭載可能で、大規模なデータセットを常時扱うような作業にも適している。USB4(最大40Gbps)ポートを2基、10GbE対応のLANポートを2基備えることで、外部ストレージや複数機器との高速接続も実現されており、単体でのAIサーバー運用を想定した仕様となっている。ビデオ編集や機械学習の中間処理にも適応できる構成だ。
加えて、フロントにUSB Type-Cポートを配置している点も、日常的な周辺機器の接続を想定した設計といえる。これにより、開発者やクリエイターは複雑な作業をストレスなく進められる環境を得ることができる。とくにAIトレーニング用途では、メモリ帯域と入出力速度のバランスが重要となるが、AI Miniはその両方において現行ミニPCの中でも上位に位置づけられる。
ただし、実際にどこまでのAIモデルに対応できるかは、ソフトウェア側の最適化状況や電力消費を含めた総合的な検証が必要である。理論性能と実運用の差を埋められるかどうかが鍵となる。
価格は約20万円超も競合機と同水準 高価格帯ミニPC市場への本格参入か
AI Miniの価格は1,999ドルと、Beelinkの従来機種「SER9 HX-370」の約2倍となっている。これは同じくStrix Halo搭載でAI処理に特化したGMKTec EVO-X2(約1,500ドル超)を上回る水準だが、仕様を踏まえると不自然な価格設定ではない。処理性能、メモリ上限、接続ポートの構成などからみても、本機は従来のミニPCよりもワークステーションに近い位置づけといえる。
これにより、Beelinkは明確に高性能志向の市場を狙った製品戦略へと舵を切ったことになる。特にMac Studioのようにプロフェッショナル用途を想定したユーザー層を取り込む姿勢が読み取れる。Appleシリコンに対抗する形でRyzen APUを全面に押し出している点も、x86陣営の可能性を訴える製品と言えるだろう。
とはいえ、価格帯としては安価とは言えず、消費者の選択はブランド信頼性やサポート体制にも左右される。Beelinkがこのハイエンドセグメントで持続的な支持を得られるかは、性能以外の総合力にかかっている。
Source:TechRadar