NVIDIAは米国の最新輸出規制に対応するため、中国市場向け「GeForce RTX 5090D」のスペックを大幅に削減する見込みである。Baiduフォーラム上の情報によれば、CUDAコア数は従来の21,760基から14,080基に減少し、メモリ帯域幅も1.3TB/sに制限される可能性が高い。これにより、同GPUは事実上フラッグシップの地位を失うとの見方が強まっている。
一方で、2025年末にはより強力な「RTX 5080 Ti」または「RTX 5080 Super」の登場が予告されており、24GBのGDDR7を搭載した新GPUがラインアップを再編成する可能性がある。RTX 5090Dが「RTX PRO 5000」クラスに格下げされるとの指摘もあるが、現時点で公式情報は出ていない。
RTX 5090Dの性能制限がもたらす仕様変更と中国市場への影響

GeForce RTX 5090Dは米国の輸出規制による技術的制限を受け、CUDAコア数を21,760基から14,080基に削減し、メモリ帯域幅も1344 GB/sに抑えられる見込みとなった。これにより、従来のRTX 5090や初期のRTX 5090Dと比較して、ゲームおよび生産性向け用途の性能が著しく低下することが予想されている。
メモリ容量も32GBから24GBへと減少し、インターフェース幅は384ビットへと縮小される。このようなスペックの縮小は、米国の規制による帯域幅制限(1.4 TB/s以下)に対応するための措置とされる。
中国市場向けのRTX 5090Dは、元来フルスペックのRTX 5090と比較してコア構成やクロックに調整を加えつつも、実用上は近い性能を保持していた。しかし、今回の規制によりメモリとI/Oの帯域幅にまで制限が及んだことで、その戦略が大きく修正を迫られた。フォーラム上では「RTX PRO 5000」クラスへの性能格下げに言及する声もあるが、これは依然として未確認の情報にとどまる。とはいえ、当該市場への製品供給は、性能調整を伴う妥協的な手段なしには成り立たない状況に置かれたといえる。
年末に控えるRTX 5080 TiとSuperの登場が示すラインアップ再構築の動き
Baiduフォーラムおよび複数のリーカー情報により、2025年末に「RTX 5080 Ti」もしくは「RTX 5080 Super」とされる80クラスGPUが登場すると見られている。これらのGPUは24GBのGDDR7メモリを搭載し、RTX 5090Dと入れ替わるかたちで上位モデルのポジションを担う可能性がある。名称や最終的なスペックは未発表であるが、RTX PRO 5000相当の性能に基づいた価格と市場戦略が示唆されている。
この展開は、フラッグシップの位置づけを失いかけているRTX 5090Dに代わる「新たな象徴」を用意する必要性を物語る。NVIDIAが製品構成を再設計し、ハイエンド帯の選択肢を複層的に展開する姿勢が見て取れる。性能低下が避けられないRTX 5090Dとは異なり、RTX 5080 Ti/Superは価格性能比の再評価によって主力GPUとしての存在感を確立しうる。また、地域によっては名称変更や市場限定モデルへの転用も視野に入っており、供給戦略に柔軟性を持たせた設計方針が見込まれる。
市場再編と規制対応が引き起こすハイエンドGPUの再定義
RTX 5090Dのスペック制限とそれに続く製品再編の動きは、米中間の技術輸出管理がハイエンドGPU市場にもたらす構造変化の一端である。CUDAコア数やメモリ帯域に代表される数値的性能は、もはや単なる競争指標ではなく、地政学的制約の下で調整される新たな枠組みの中に置かれている。今回の制限は、単なる製品劣化ではなく、供給国ごとの性能設計を強いられるグローバル製造の現実を浮き彫りにした。
NVIDIAとしては、規制下であっても特定市場向けにGPUを供給し続ける意義があり、RTX 5090Dの存在はその妥協的選択の表れといえる。反面、性能低下が著しい製品がフラッグシップを名乗ることへの市場評価は厳しく、RTX 5080 TiやSuperの位置づけが新たな基準を形成する可能性がある。今後は、従来のスペック志向に代わり、適応力と供給網の柔軟性が市場価値の尺度となる時代へ移行しつつある。
Source:Wccftech