Googleは次世代AIアシスタント「Gemini」の展開において、PixelではなくサムスンのGalaxyスマートフォンを主要な導入先として選んでいる。Galaxy S25シリーズでは、GeminiをOSと深く統合した形で搭載し、発表イベントではGoogle側の幹部も登壇。Bixbyには一切触れず、Gemini一色の構成となった。
さらにOne UI 7のアップデートを通じて、S24や折りたたみモデル、Aシリーズにも順次対応を広げており、サイドボタンでの起動や「Gemini Live」のような連携機能も強化されている。Pixelを含む他のAndroid端末を凌ぐ実装速度と完成度は、Googleがサムスンに寄せる技術的信頼の表れとも考えられる。
Geminiの中核展開はGalaxy S25が起点に Pixelよりも早い実装と広範な統合

2025年のGalaxy Unpackedで発表されたS25シリーズは、AIを中心とした進化を強く印象付けた。キーノートの冒頭ではGeminiの説明から始まり、Google Gemini Experience副社長のSissie Hsiao氏が自ら登壇し、同アシスタントのユースケースを披露。Galaxy端末では、サイドボタンからGeminiを起動できるほか、「Gemini Live」などの新機能がOne UI 7のシステム全体と深く結び付いている。これらの統合はPixelよりも先行して実現されており、単なるGoogleアプリのプレインストールに留まらない、OSレベルでの密な連携が際立っている。
さらに注目すべきは、発表時にサムスンがBixbyの存在を一切示さなかった点である。AIアシスタントの主役が完全にGeminiに移行したことが明白であり、サムスンのソフトウェア戦略における大幅な転換を示唆する。これまでPixelがGoogleサービスの最先端を体験できる代表的端末であったが、今回の展開においてはGalaxyがその立場を一時的に上回っているとも言える構図が見えてきた。
One UI 7で中価格帯にも展開拡大 Aシリーズ対応でユーザーベース拡張へ
サムスンはS25シリーズにとどまらず、Geminiの機能をOne UI 7アップデートを通じてS24、S23、S22、そしてZ FoldやZ Flipといった折りたたみモデルにも順次適用している。さらに2025年5月からはAシリーズにも対象を拡大し、フラッグシップ以外のモデルでもGeminiアシスタントが利用可能となった。One UI 7の導入時には、サイドボタンへの割り当てを促すポップアップが表示される仕様となっており、設定変更の手間を最小限に抑えながら機能普及が図られている。
このような展開は、Android全体におけるGeminiの普及を促進する一方で、サムスン端末がその中心的役割を担っていることを強く印象付ける。Googleは多くのパートナーを持つが、これほど広範な端末において一貫したAI機能展開を進めているメーカーは他に見られない。Aシリーズの導入によって、中価格帯ユーザー層にもAI体験が提供されることで、結果的にGeminiの実利用者数が加速度的に増加する可能性もある。ただし、実際の使用感や機能の反応速度などについては、端末性能に左右される点にも注意が必要である。
Googleとサムスンの関係性に変化か Geminiのプロモーションで示された戦略的優位
今回のGemini展開では、Google自らが実施しなかったとされるプロモーション活動をサムスンが主導して展開している点が象徴的である。たとえば、One UI 7のアップデートと同時にGeminiを紹介する仕組みや、端末のキー操作に組み込むインターフェース設計などは、Googleアシスタントの時代には見られなかった積極的な展開手法である。これにより、Galaxy端末は単なるハードウェアの供給元にとどまらず、AIサービスの訴求・普及における実質的なパートナーとしての役割を果たしている。
特に米国市場では、Galaxyの多様なユーザー層と販売規模がGeminiの広がりに大きく貢献しており、Pixelシリーズ単独では得られなかったリーチをGoogleにもたらしていると考えられる。結果として、Geminiの導入が他のAndroidメーカーにも拡大する契機となり、Androidエコシステム全体のAI対応力が底上げされる構図が生まれつつある。ただし、こうした中核的な役割がサムスンに集中することは、他社との関係バランスに今後影響を及ぼす可能性も否定できない。
Source:Sammy Fans