ソニーはXperia 1 VIIの正式発表に合わせ、新開発のAIカメラ機能を前面に押し出したプロモーション展開を開始した。中でも被写体を自動追尾する「Auto Framing」や構図を安定させる「AI Camerawork Mode」など、動きのあるシーンでの使い勝手を重視した機能が複数披露されている。

新型はSnapdragon 8 Gen 3 Eliteを搭載し、6月12日から欧州で出荷予定。予約特典としてWH-1000XM5が付属し、価格は1,499ユーロから。一方で米国発売の予定はなく、対象市場が絞られている点も注目される。

AI Camerawork ModeとAuto Framingがもたらす撮影スタイルの変化

Xperia 1 VIIでは、動画撮影における構図維持と被写体追尾の両面で新たなアプローチが採用されている。AI Camerawork Modeは、フレーム内で被写体を中心に捉えるための自動制御機能であり、動きの多いシーンでもカメラが的確に反応し続けるよう調整されている。また、Auto FramingはAIがリアルタイムで構図を調整し、カメラマンがディスプレイを確認せずとも自然なフレーミングが可能となることを意図している。これにより、手持ち撮影でも安定感のある映像が得やすくなる。

一方で、Auto Framingがデジタルズームに依存するという仕様上、画質への影響を避けるのは難しいと考えられる。AIによる補正が構図や安定性に寄与する一方、画素の再構成処理によって細部の解像感が損なわれる場面も想定される。とはいえ、動的な被写体の記録において、映像全体の完成度を優先する場面ではこうした手法が十分に実用的といえる。スマートフォン単体での高品質な撮影を志向するユーザーにとって、操作負担を減らしつつ見栄えを担保するAI機能は新たな選択肢となり得る。

Alpha由来の撮影思想を体現するマーケティング戦略

ソニーはXperia 1 VIIのプロモーションにおいて「Powered by Alpha」という表現を前面に押し出し、同社のミラーレスカメラ技術をルーツとする撮影思想を本製品にも反映させていることを強調している。プロモーション動画では、複数のエンジニアが登場し、特に低照度環境での描写力や自然な色再現に関する取り組みが語られている。また、Eye AutofocusやAIによるホワイトバランス調整、露出制御といった従来の特徴も再定義され、AI技術との融合が一層深まっている様子が見て取れる。

スペック面での変更が限定的であっても、ソニーがマーケティングの軸をカメラ体験に特化させているのは、この分野でのブランド価値を再認識させる狙いがあると考えられる。従来のスマートフォンでは撮影者が積極的に操作しなければ成立しなかった表現も、本機ではAIが裏側で支えることで新たな創造の余地が広がる。撮影における“支援”から“代替”への移行という観点で、本製品は新たな転機を示すものとなりそうだ。

Source:NotebookCheck