2025年第1四半期のCPU市場は、AMDのRyzen 9000X3Dシリーズへの予想外の需要と、ArmベースCPUの急伸により異例の展開を見せた。Mercury Researchの最新レポートによると、AMDはデスクトップ分野で平均販売価格が史上最高を記録し、Intelを上回る水準に到達。特にゲーム向けSoCの回復も売上を下支えした。一方、IntelはノートPC分野での健闘によりシェアを維持したが、全体的な出荷は減少基調にある。
Chromebook向けを中心にArmのCPUシェアは13.9%に達し、AppleのMac減少を補う形で市場を拡大。サーバー分野では両陣営が成長を遂げる中、AMDが過去最高の27.2%に到達するなど、AI需要の波が市場を活性化させている。Intelの構造改革と対照的に、AMDとArmの機動力が新たな競争局面を形づくりつつある。
AMDのRyzen X3Dシリーズが牽引したデスクトップ市場の再活性化

2025年第1四半期において、AMDはRyzen 9000および9000X3Dシリーズを中心とするデスクトップCPUの販売により大きな成果を収めた。例年であれば年末商戦がピークとなるが、今回は異例の早期需要が発生し、AMDはクライアント向けデスクトップCPUの平均販売価格で過去最高水準を記録した。Mercury Researchのアナリスト、ディーン・マカロン氏によれば、この価格はIntelの平均価格をも上回り、市場構造の変化を象徴している。
この現象は単なる需要の前倒しではなく、AMDが競合他社に対して明確な製品優位性を持っていることを反映している。特にX3Dシリーズは、ゲームや高度な演算処理を求めるユーザー層から高い評価を受けており、PC市場全体が成熟局面にある中で単価上昇による収益改善を実現した点は注目に値する。出荷台数が減少しても収益が拡大する構造は、AMDの価格戦略と技術優位性が噛み合った結果であり、今後のビジネスモデルの転換点となる可能性がある。
Armの二桁台シェア到達とChromebook市場の再編成
Armアーキテクチャを採用するプロセッサが2025年第1四半期にクライアントPC市場で13.9%のシェアを獲得し、初めて二桁台に突入した。とりわけChromebook向けCPUの出荷が急増しており、2024年第4四半期の10.9%から3ポイントの上昇を見せている。Mercury Researchによると、Apple製Macの出荷は減少したものの、Copilot PC向けにおけるARM採用が一定の増加に貢献しており、主因はChromebook需要の回復であるとされる。
この動きはArmがノートPC市場における実効支配力を着実に拡大していることを示しており、今後IntelやAMDの競争構造に変化を及ぼす可能性がある。特に教育市場や軽量業務用途でのシェア増は、性能よりもコスト効率や電力性能が評価された結果と考えられる。ただし、Chromebook市場は正確な需要把握が困難であるため、実態の分析には慎重さが求められる。加えて、Armのデスクトップ市場への影響は依然限定的であり、主戦場はノートPCにとどまっている。
サーバー分野でのAMDの成長とAI需要の構造的影響
サーバー向けCPU市場では、2025年第1四半期において出荷台数が前年同期比で20%増加するという顕著な成長が見られた。AMDはこの分野で過去最高の27.2%というシェアを記録し、Intelを大きく上回る成長率を示した。Mercuryのレポートは、AIやエンタープライズ分野の需要が高まる中で、各社のシリコン供給が急増している点に注目している。サーバー領域ではx86に加え、Armも一部で存在感を示しているが、依然として主役はAMDとIntelである。
この成長の背景には、クラウドプロバイダーやAI処理を担うデータセンターからの継続的な需要がある。AMDのEPYCシリーズは、多コア構成と電力効率の高さから、特にAI推論用途において高い支持を得ていると見られる。サーバー市場は家庭用PCと異なり価格弾力性が低く、性能と供給能力が優先されるため、AMDにとっては長期的なシェア拡大の戦略的拠点となる可能性がある。今後もAI向け演算処理の需要が増す中で、この領域での競争は激化すると予想される。
Source: PCWorld