バークシャー・ハサウェイの年次株主総会で、ウォーレン・バフェットはトランプ前大統領による関税政策に対し、「戦争行為になり得る」と強い表現で懸念を示した。市場が不安定さを増す中でも、バフェットは「長期的な米国経済の成長を信じている」との姿勢を崩さず、短期的な市場の動揺を過度に重視しない姿勢を貫いた。
関税の影響をめぐる慎重な姿勢とは裏腹に、彼は投資の継続を強く推奨しており、S&P500 ETFへの分散投資を再び提唱。関税リスクや景気後退懸念が高まる環境下においても、「市場に居続けることが最良の戦略」との信念を強調した。
また、現在注目される投資機会としては、NVIDIAの100分の1規模ながらAIインフラを支える有望な企業の存在も指摘された。インデックス投資の安定性に加え、新興分野への視点も重要になりつつある局面である。
関税への警戒とアメリカ経済への信頼表明

ウォーレン・バフェットは2025年のバークシャー・ハサウェイ株主総会において、トランプ前政権の関税政策に対し異例の強い言葉で警鐘を鳴らした。彼は関税について「戦争行為にもなり得る」と言及し、経済活動に対する障害としての懸念を明確にした。
一方で、彼の発言には短期的な市場動向への動揺を排除する姿勢も見られた。「過去30日、45日に起きたことは、大したことではない」との言葉からは、直近の市場下落に過剰に反応すべきではないという認識が示されている。
実際、2025年初頭にはナスダック総合指数が一時的に弱気相場入りし、S&P500も下落を記録するなど、投資家心理に影を落とす展開が続いている。しかしバフェットは歴史的な視座から、「我々は大恐慌、世界大戦、そして核兵器の開発すら乗り越えてきた」と米国経済の底力を強調。政策変動や短期的リスクが繰り返される中でも、アメリカ経済は最終的に成長を遂げてきたという事実を指摘した。
こうした見解は、現在の不確実性に対して退避するよりも、長期的視点をもって資本を維持することの意義を説くものに他ならない。バフェットの発言は、感情や短期的な混乱に左右されることなく、構造的な成長に着目すべきことを示している。
インデックス投資の推奨と市場への継続的関与
ウォーレン・バフェットは改めて、S&P500を対象とするETFへの投資が、特に個別株の選定に不安を持つ投資家にとって合理的な手段であると明言した。実際、バンガード・S&P500 ETF(VOO)の経費率は0.03%と極めて低く、長期保有によって大きな資産形成が可能であったことが実績として示されている。10年前に15,000ドルを投資していれば、現在では約50,000ドルまで増加していた計算となる。
こうした背景の中、バフェットは市場のタイミングを計る投資行動についても慎重になるよう呼びかけた。関税などの外的要因によって市場の先行きが見通しづらくなる局面ではあるが、それが市場からの撤退を正当化する根拠にはならないと断じている。実際に米中間で関税の一時停止が実施されるなど、政策は常に流動的であり、予測すること自体が難しい。
したがって、最も効果的な戦略は「市場に居続けること」であるという姿勢は一貫している。優れた企業は環境の変化に適応し、時間の経過と共に価値を高めていく。この観点から、長期保有を前提としたインデックス投資は、短期的な混乱時においても有効性を失うことはない。市場変動を利用した投機的行動ではなく、構造的な安定成長を目指す姿勢が今求められている。
技術革新を支える中小型株への目配り
バフェットは明言こそ避けたものの、現在注目を集める有望企業の存在についても示唆された。具体的には、NVIDIAの100分の1規模ながらも、AIやテックインフラ領域で重要な役割を果たす企業が紹介され、これが今後の「メイド・イン・アメリカ」政策の追い風を受ける可能性があるとされた。この分野では約1.5兆ドルもの資金がインフラ・AI・製造業に流入しており、新たな成長ドライバーとして注目されている。
こうした環境は、ETFによる分散投資では得られにくい成長余地を含んでいる。とりわけOpenAIやAppleといった大手が依存するインフラ技術に関わる企業であれば、その規模の小ささに関わらず高い収益性や将来性を秘めている可能性がある。ただし、こうした銘柄は流動性やボラティリティの面でリスクも抱えており、安易な参入は避けるべきである。
S&P500といった大型指数とは異なる値動きを示すこれらの企業群は、ポートフォリオの一部として戦略的に位置づけるべき対象である。市場全体への信頼とともに、技術革新を牽引する小型株への関心も同時に持つことで、真にバランスの取れた投資判断が可能となる。バフェット流の堅実なアプローチに基づきつつも、新領域への柔軟な視座が重要性を増している。
Source: The Motley Fool