Appleは、iPhoneとの統合性を高めた新たな車載システム「CarPlay Ultra」を正式発表した。対応車両第一弾はアストンマーティンで、KiaやHyundaiなど複数メーカーにも順次展開予定とされる。リアルタイム表示に対応した計器類、空調や音楽操作も統合されたインターフェース、Appleと自動車メーカーの共同開発によるテーマパーソナライズ機能などを備え、運転体験を一新する内容となっている。

本システムはiOS 18.5以降のiPhone 12シリーズ以降が対象で、物理ボタンや音声操作にも対応。AppleはCarPlay Ultraを「次世代の車載体験」と位置づけ、自動車メーカーの独自性とAppleのUXを両立させる方向性を明確に示した。

アストンマーティンが初搭載 Apple CarPlay Ultraが描く車載体験の刷新

Appleは「CarPlay Ultra」をアストンマーティンの新型車に初搭載すると発表し、車載オペレーティングシステムの次世代像を提示した。これにより、計器パネルやインフォテインメント画面全体がiPhoneと連携し、リアルタイムの速度情報やナビ、音楽再生などの表示に対応するようになる。Appleはこの新システムを“運転者のあらゆる画面を統合するもの”とし、各社のデザインテイストを反映しつつカスタマイズ性を重視している。空調やシートの温度管理まで含む一元的な制御は、従来のCarPlayとは一線を画すものである。

アストンマーティンが初採用ブランドとなった背景には、大手グループに属さず独自のテクノロジー調達を進めてきた事情がある。CNETのAntuan Goodwin氏によれば、同社はかつてMercedes-Benzからインフォテインメント技術をライセンスしていた経緯があり、既存技術の刷新に柔軟であった可能性が高い。また、Appleとの連携により、車載UIの完成度やブランド体験の強化を図る意図も感じ取れる。第一弾の展開に高級ブランドを選んだAppleの狙いは、体験価値の高さを印象付ける戦略とも読み取れる。

デザインと操作性のパーソナライズ CarPlay Ultraがもたらす新たな価値

CarPlay Ultraは単なるApple製UIの拡張にとどまらず、自動車メーカーとの協働によって車両ごとに最適化されたテーマと機能が実装される。Appleは、スピードメーターや地図、アルバムアートなどを1つの画面内に融合しつつ、見た目のテーマをカスタマイズ可能にしている。これにより、各社の車両デザインと統一感を保ちつつ、ユーザーの好みに合わせた外観変更が実現される。Appleと自動車メーカーのデザインチームが共同で作成したカスタムテーマは、ブランドの個性とAppleのユーザー体験哲学の交差点といえる。

iOS 18.5以降を搭載したiPhone 12以降が対応機種とされ、操作面では従来のタッチスクリーンに加えて物理ボタンやSiriによる音声入力もサポートされる。従来のCarPlayユーザーが不満を感じがちだった車両側とのUI整合性の問題も、CarPlay Ultraでは自社システムとの融合により軽減される見込みである。複数の自動車メーカーがすでに導入を計画している点を踏まえると、今後の標準的な車載システムの一翼を担う存在となる可能性が高い。

車両全体をiPhoneで制御する時代への布石

CarPlay Ultraの本質は、単にiPhoneをダッシュボードに表示するのではなく、車両全体の制御と連携を前提としたアーキテクチャの導入にある。Appleは、運転中に必要な情報や操作系統を全画面で提供すると同時に、温度調整や車線情報表示、ウィジェット機能までを統合し、デジタル化された運転環境を提示している。従来は分断されていた車載UIとスマートフォンUIが融合することで、アプリの操作性と車両特有のインターフェースが共存できる土台が整ったといえる。

また、Appleが各メーカー向けに個別のCarPlay Ultraバージョンを提供する点は、iPhoneのような一律なUXではなく、車両に合わせた柔軟な設計を重視している証拠でもある。これは、運転中の視認性や操作性において車種ごとの最適解を導入するアプローチであり、今後の車載OS開発にも影響を与える可能性がある。Appleが車両全体の体験設計にまで踏み込んできたことは、将来的な完全自動運転時代に向けたUI支配権争いの序章とも捉えられる。

Source:CNET