レイ・ダリオ率いるブリッジウォーター・アソシエイツが2025年第1四半期にアリババ株の保有額を3,360%以上増加させた。保有額は2,160万ドルから約7億2,700万ドルへと急拡大し、同ファンドの主要銘柄に浮上した。中国AI分野への信頼と、地政学的リスクを踏まえた大胆な戦略が読み取れる。

この動きは、米中貿易摩擦が続く中での例外的な対中投資といえる。アリババはAI主導の収益拡大により株価が年初来で45%上昇し、マイケル・バーリも買い増すなど注目度を高めている。ただし、米国の保護主義政策が強化されれば逆風となる可能性も否めない。

アリババへの大規模投資が示すダリオの強気戦略とその構図

ブリッジウォーター・アソシエイツは、2025年第1四半期にアリババ株の保有額を前四半期の約2,160万ドルから約7億2,700万ドルへと急増させた。これは前年比で3,360%を超える増加であり、同ファンドのポートフォリオにおいてアリババが中核銘柄の一つへと格上げされたことを意味する。ダリオはAI分野の競争力に加え、アリババの国際展開力を評価しているとみられ、中国市場全体に対する選別的な信頼を明確に示している。

また、この大胆な買い増しは、トランプ前大統領が再び対中強硬姿勢を強める中で行われた。米中間の貿易関係が不安定な状況下でのこの投資行動は、リスクを承知の上での「ハイリスク・ハイリターン」戦略の典型ともいえる。実際にアリババ株は年初来で45%上昇しており、短期的な成果も見られている。地政学的な緊張を受けて他の投資家が中国から撤退するなか、ブリッジウォーターはAIと国際戦略の成長余地に着目し、相対的に割安と判断されたアリババへの強気姿勢を鮮明にした。

AI分野での優位性と収益改善がもたらす中長期的成長期待

アリババは2025年初頭にかけて、AI関連事業の成長を背景に収益を前年同期比7%増加させた。この業績改善は、クラウドコンピューティングおよび生成AIサービスへの継続的な投資と、中国国内におけるデジタル化需要の高まりに支えられている。「中国のアマゾン」とも称される同社は、国内最大級のクラウドプロバイダーとしての地位を確立しつつあり、今後もテクノロジー主導の事業モデルによって安定した成長が期待される。

一方で、米中関係の不透明性は依然として大きな懸念材料である。もしアメリカが今後さらに保護主義的な政策を強化すれば、アリババの国際展開や資本市場アクセスに対する圧力が高まる可能性は否定できない。とりわけ、米市場に上場する中国企業に対する監査要件や規制強化は、株式の流動性や投資家心理に影響を与える余地がある。ただし、AI主導のビジネス領域において先行優位を築いたアリババは、国内市場での需要拡大と技術革新によって一定の収益防衛力を持つと考えられる。

他の著名投資家も注目するアリババの資産価値とリスク分散策

アリババへの強気な姿勢はレイ・ダリオに限られない。2008年の金融危機で名を馳せたマイケル・バーリ率いるScion Asset Managementも2024年末時点でアリババ株を15万株保有しており、平均取得価格は96.55ドル、評価額は約1,860万ドルに達している。これは米中関係の緊張にもかかわらず、同社がAI分野でのリーダーシップと収益性を兼ね備えていると判断されたことを示唆している。

とはいえ、バーリはその後このポジションを25%縮小しており、短期的な利益確定とリスク調整の動きも見られる。これはアリババ株の持つ成長可能性と、地政学的リスクのバランスを意識した対応であり、一定のリターンを確保した上での戦略的撤退と捉えることができる。アリババを巡る投資判断は、単なる成長株としての評価にとどまらず、マクロ環境を見据えた柔軟な資産配分が求められている局面にあるといえる。

Source: Barchart.com