ウォルマート(WMT)の株価は第1四半期決算を受けて下落したが、eコマース部門の初黒字化や売上成長ガイダンスの維持が投資家の注目を集めている。トランプ前大統領が掲げる新たな関税政策により価格引き上げを迫られる一方で、広告収入による収益性の高さや強固な財務体質が下支えとなり、著名投資家ジム・クレイマー氏をはじめウォール街のアナリストも強気姿勢を崩していない。
年初来で20%上昇している同社株は、約1%の配当利回りを提供しつつ、現在の水準から13%の上昇余地があるとされている。株価の一時的な調整にもかかわらず、eコマース黒字化のインパクトや業界内での競争優位が中長期的な成長期待を下支えする構図にある。
通商政策の逆風下でも維持された成長ガイダンスと事業構造の強靭さ

ウォルマートは2025年の第1四半期決算において市場予想をわずかに下回る結果となったが、それでも年間売上成長率のガイダンスを最大4%と据え置いた。過去10年間の平均成長率と整合性があり、事業の安定性を示す内容である。
また、注目すべきはeコマース部門が米国と海外の両市場で初めて黒字を計上した点であり、アマゾンとの競争での収益構造の変化を浮き彫りにしている。広告収入を柱とした高利益率モデルの確立や、関税によるコスト増への耐性を考慮すれば、利益率重視の企業体質が明確に現れている。
価格引き上げが迫られる状況にもかかわらず、財務ガイダンスを後退させない姿勢は、サプライチェーンマネジメントの強さやコスト転嫁能力に支えられているとみられる。加えて、配当利回りが約1%と低めではあるものの、株主還元を継続することで長期保有の魅力も維持している。短期的には株価が調整する局面にあるが、構造的な利益体制と成長見通しの明確さは、中期的な株価回復の可能性を示唆している。
ウォール街とジム・クレイマーが共鳴する強気評価の根拠
CNBCでのコメントにおいて、ジム・クレイマー氏はウォルマートの「素晴らしいバランスシート」と「広告収入による収益構造」を高く評価しており、特に利益の大半が広告由来である点を強調している。高利益率かつ景気変動の影響を受けにくい広告モデルの浸透が、同社株に対する同氏の強気姿勢を支えている。
また、同社がサプライヤーとの強固な関係を維持していることも、価格転嫁の柔軟性やコスト圧力への耐性につながるとされている。こうした構造的優位性が、短期的な業績鈍化にも関わらず株価が早期に反転するとの見方を導いている。
市場コンセンサスもこの評価を支持しており、アナリストの大半が「強い買い」を維持、目標株価は平均で108ドルと、現水準から13%程度の上昇余地を見込んでいる。年初来で既に20%上昇している点から見ても、調整は限定的との見方が強い。株価の一時的な下落をむしろ好機と捉える投資家心理が形成されつつあり、確固たる財務基盤と業績見通しの両立が、ウォルマート株の中長期的な信認を支えている。
Source: Barchart