Cisco Systemsの株価は2025年に入り9%強の上昇にとどまっているが、AIインフラ需要の拡大や安定したサブスクリプション収益を背景に、今後の本格上昇への期待が高まっている。最新決算ではARRが5%増、ソフトウェア収益は25%増となり、クラウドや通信セクターからの製品受注も好調に推移している。

アナリストはCisco株の目標株価を現在価格から約29%上の79ドルと設定しており、ネットワーク製品の堅調な需要とSnapAttack買収によるサイバーセキュリティ強化も成長の追い風とされる。

粗利益率の上昇や製品群別の注文増など財務面の強さも際立ち、今後は中長期的な株価上昇への道筋が描かれる可能性がある。

財務成長を支える継続収益と製品需要の広がり

Ciscoの2025年第3四半期決算は、あらゆる主要収益指標での成長を確認させる内容であった。ARRは前年同期比5%増の306億ドルに到達し、ソフトウェア収益は同25%増の56億ドル、RPOも7%増の417億ドルに伸長した。

中でもサブスクリプション収益は15%増の79億ドルに達し、総売上高の56%を占めるまでに拡大している。これらは同社が従来のハードウェア中心モデルからソフトウェアと継続課金モデルへと転換しつつある成果であり、長期的な収益の安定性を示している。

製品受注面では、Splunk買収を除いたオーガニック成長ベースでも前年比9%の増加となり、特に企業向け製品と公共部門でそれぞれ22%、8%の受注拡大が見られた。さらに、AI関連需要の急拡大に伴い、通信事業者やクラウドベースの顧客からの注文は前年比32%増となっており、特定のWebスケール企業からの注文は3桁成長を記録している。WiFi 7製品群や産業用IoT、データセンター向けスイッチ製品も堅調な伸びを示し、Ciscoが複数の成長セグメントで優位性を確立していることが裏付けられる。

これらの動向は、Ciscoの収益構造がサブスクリプションやソフトウェア収入を基盤とした安定型へと移行し、短期の市況変動に左右されにくい形での成長モデルが形成されつつあることを示唆する。今後の課題は、こうした収益の質的転換をいかに継続し、他の競合と差別化された製品群において優位性を維持していくかにある。

AIインフラ需要と戦略的買収がもたらす株価上昇余地

Ciscoはクラウドおよび通信分野の主要顧客からAIインフラ関連の大型注文を獲得しており、ネットワーク技術における基盤的立ち位置を強化している。とりわけ、Webスケール企業からのAI用途の注文が急増し、前年比で3桁成長を記録した点は注目に値する。

この傾向は、ネットワークインフラとAIが不可分となる次世代IT需要の変化を如実に反映しており、Ciscoのハードウェアとソフトウェアの統合的アプローチが、AI時代の基盤企業としての地位を確立させる鍵となっている。

同時に、2025年第3四半期に実施されたサイバーセキュリティ企業SnapAttackの買収は、既存のSplunkプラットフォーム強化に直結しており、今後のクロスセルや拡張可能なセキュリティ基盤形成に寄与するとみられる。このような戦略的M&Aは単なる成長の加速策に留まらず、Cisco全体のポートフォリオにおけるAIおよびセキュリティ領域の競争力向上にも直結している。

アナリストの間では、CSCO株の目標株価として79ドルが提示されており、5月14日時点の61.29ドルからは約29%の上昇余地があるとの見方が示されている。この評価は、安定収益、成長市場との結びつき、そして堅調な財務基盤という三要素の融合による企業価値の再評価に基づいている。今後の株価動向は、市場がCiscoのAI対応戦略をどの程度信認するかによって左右される可能性がある。

Source: Barchart.com