米国前大統領ドナルド・トランプ氏が、AppleによるiPhoneのインド生産拡大に懸念を示し、米国市場向け製品は国内で製造すべきとの姿勢を明らかにした。ティム・クックCEOとの私的なやり取りも交えつつ、トランプ氏はAppleの5,000億ドル規模の対米投資を改めて求めたとされる。一方でアナリストは、Appleのサプライチェーンがアジアに根付いていることから、製造の完全移行は非現実的との見方を示し、価格上昇や供給網混乱の懸念も指摘している。
仮に製造を米国へ戻した場合、iPhone価格は25%以上上昇する可能性があるとの試算もある。この発言の影響もあってか、Appleの株価は211.46ドルへとわずかに下落し、今後の製造戦略の行方が改めて注目されている。
トランプ氏がAppleのインド製造を牽制 米国市場向け製品の国内回帰を主張

トランプ前大統領は、カタール訪問中の会見において、Apple CEOティム・クックとの対話を明かし、同社がインドでのiPhone生産を拡大している現状に明確な懸念を示した。彼は「インド市場向けなら問題ないが、アメリカで売る製品はアメリカで作るべきだ」と強調し、Appleが過去に掲げた5,000億ドル規模の米国内投資計画を守るべきであると再主張している。こうした発言は、Appleが進める生産地の多様化に対し、政治的な圧力が再び強まる兆しとも受け取れる。
この発言により、Apple株は一時的に下落し、211.46ドルで取引を終えた。なお、トランプ氏は2019年にMac Proのテキサス州オースティンでの製造拠点をティム・クックと視察した経緯もあり、国内生産への関心は一貫している。だが、今回の発言では明確なタイムラインや実行手段には触れられておらず、実際にAppleが生産を本格的に米国へ戻すかは依然として不透明である。
現実的には、Appleの広大かつ高度に最適化されたサプライチェーンは中国や東南アジアを中心に構築されており、インドもこのネットワークに組み込まれつつある段階である。これを覆すには時間と巨額の追加コストが伴うため、仮に一部移転が行われたとしても全面的な国内回帰には慎重な見方が支配的だ。
生産移転がもたらす価格への影響と現実的な制約
トランプ氏が主張する「米国回帰」にはコストの壁が立ちはだかる。Appleの製品価格は、世界水準で見ても高額な部類に入るが、現在の価格帯は中国・インドなどアジア圏の低コストな製造体制によって維持されている。これを米国国内に移すとなれば、労働賃金の上昇やインフラ整備不足といった構造的な課題が一気に噴出することになる。
NotebookCheckが伝えるアナリストの見解では、全面的な国内製造移転が現実となれば、iPhone価格は最大25%以上上昇する可能性があるという。この上昇幅は、現行モデルのハイエンド価格帯にすでに不満を持つ一部消費者層にとっては受け入れ難い変化であり、販売動向にも影響を与える可能性がある。
さらに、Apple製品の品質と供給スピードは、複雑に連動するサプライチェーンの精度に支えられている。米国内ではこうした規模と柔軟性を再構築するには時間がかかり、短期的には生産遅延や部材確保の問題も無視できない。Apple自身もこの点を理解しており、完全移転ではなく「現地最適化」と「リスク分散」を進める姿勢を崩していない。トランプ氏の発言は注目を集めるが、そのまま政策に直結するかは依然として流動的である。
Source:NotebookCheck