Nintendo Switchの名作『マリオカート8 デラックス』が、最新アップデート3.0.4により64ビット対応へと変更されたことが判明した。この変更は次世代機Switch 2のARM Cortex-A78Cプロセッサ対応を見据えたものであり、エミュレータ環境においてネイティブコードの実行が可能となり、Yuzu系などでの動作が飛躍的に向上した。
注目すべきは、任天堂自身のアップデートがエミュレーション性能の向上を意図せず後押しした点である。Switch 2では32ビットコードのサポートがソフトウェアレベルで制限される可能性があり、今後他の人気タイトルにも同様の対応が広がる可能性がある。
64ビット移行がもたらした『マリオカート8 デラックス』の予期せぬ進化

『マリオカート8 デラックス』のアップデート3.0.4では、ゲーム本体が32ビットから64ビットへと密かに移行された。この変更は任天堂が次世代機Switch 2に搭載予定のARM Cortex-A78Cプロセッサに対応するためとされている。Cortex-A78Cは32ビットコードの動作に一部制限があるため、64ビット化は新型機との互換性維持に不可欠な措置とみられる。加えて、今回のアップデートによってエミュレータ側でネイティブコードの実行が可能となり、Yuzu系を中心に再現性とパフォーマンスが劇的に向上した。
この変更により、AndroidなどのARMベース環境でも『マリオカート8 デラックス』の動作が滑らかになり、過去困難だったエミュレーションの壁が突破された形となった。元々この作品はWii U時代の32ビット設計を踏襲していたが、64ビット対応によりエミュレート環境の最適化が一気に進んだ。こうした技術的改善は任天堂の直接的な狙いではないと考えられるが、結果としてエミュレータの進化に寄与した点は極めて興味深い。
任天堂が今後も同様の措置を他の旧作タイトルにも適用していくかどうかは明らかではないが、『ピクミン3 デラックス』『モンスターハンター ジェネレーションズ・アルティメット』などの作品に対しても類似のアップデートが行われれば、エミュレーション環境全体の性能向上に繋がる可能性がある。
Switch 2とエミュレーター開発に及ぼすSDK非対応の影響
Switch 2ではSDKレベルで32ビットコードがサポートされておらず、公式には64ビットアーキテクチャへの完全移行が示唆されている。Android Authorityが報じた通り、ハードウェア自体は32ビット動作も可能とされるが、現時点で提供されている開発環境では64ビット専用の構成となっている。これにより、既存の32ビットタイトルをそのままSwitch 2で動かすには変換や再構築が必要となる見通しである。
その対応として、任天堂が選択したのが『マリオカート8 デラックス』の64ビット化であり、今後はより多くのゲームで類似の変更が必要となるかもしれない。この構造変化により、Yuzuを含むARMベースのエミュレータ開発においても64ビット対応がデフォルトとなり、ソフトウェア最適化や互換性の検証に新たな基準が求められるようになる。
一方で、エミュレータ環境における互換性レイヤーの重要性も増しており、CitronやSudachiといった分岐型プロジェクトが注目を集める背景には、こうした任天堂側の設計変更がある。Yuzu閉鎖後も開発が継続されているエコシステムにとっては、Switch 2の仕様は今後の設計指針を左右する要素となると考えられる。
32ビット時代の人気作は今後も更新されるか
任天堂が64ビットへの移行を進める中、残された32ビットタイトルの扱いが注目される。『マリオカート8 デラックス』に続き、同じくWii Uから移植された『New スーパーマリオブラザーズ U デラックス』や『ルイージマンション2 HD』なども、将来的にアップデートされる可能性がある。特にSwitch 2上での安定動作や互換性の維持を優先するのであれば、64ビット最適化は不可避となる。
しかし、全タイトルを一律に変換するには開発リソースや費用がかかるため、任天堂がどこまで対応範囲を広げるかは不透明である。また、ユーザー側からの評価や需要も一因となるだろう。特定タイトルに対するアップデート要望が高まれば、それに応じた対応も想定されるが、逆に需要が低ければ旧アーキテクチャのまま放置されることも考えられる。
一方で、これらのタイトルに対する64ビット最適化が行われれば、エミュレータ上でも動作の滑らかさが増し、描画エラーやクラッシュの軽減といった副次的な恩恵が期待できる。こうした技術的波及効果は、任天堂の意図を超えて多方面に影響を及ぼしていくことになる。
Source:Android Authority