インテルは今月、複数世代にまたがる自社製CPUおよびGPU製品の重大なセキュリティ脆弱性を修正する一連のパッチを公開した。特に注目されるのは、10件の深刻度が高いバグを含むグラフィックスドライバの脆弱性であり、特権昇格やDDoS攻撃、機密情報の漏洩などを引き起こす可能性が指摘されている。
修正対象は、第6世代Intel Coreから最新のCore Ultra、さらに「Arrow Lake」アーキテクチャや「Data Center GPU Flex」シリーズにまで及ぶ。さらに、Core Ultraシリーズに対しては、統合I/Oインターフェースに関するファームウェアとマイクロコードの更新も実施された。
インテル製品の信頼性を左右しかねない今回の修正は、同社のハード・ソフト両面での課題を浮き彫りにしており、設計・開発体制の再構築が今後の競争力維持の鍵となる可能性がある。
Core Ultraを含む最新世代にも影響が及んだ脆弱性の全貌とその修正措置

2025年5月のパッチリリースにおいて、インテルはCore Ultraシリーズを含む最新のプロセッサ群に対してもセキュリティ修正を行った。中程度の深刻度とされる複数の脆弱性は、統合接続I/Oインターフェースを通じた権限昇格や、機密情報の漏洩につながるリスクを含んでいた。これに対し、同社は2件のファームウェアアップデートを提供し、「Core Ultra 5」「7」「9」シリーズに対して最新のマイクロコードを展開して対応した。
特筆すべきは、1件がインテル社内で、もう1件がオランダ・アムステルダム自由大学の研究チームVUSecにより発見された点であり、社外との連携を通じた脆弱性対応体制の機能がうかがえる。さらに、これらの修正はノートPC、デスクトップ、組み込み機器の各分野を網羅している。
今回の対応は、単に脆弱性を塞ぐにとどまらず、Core Ultraプラットフォームの安定性と信頼性を市場に対して再確認させるものである。ただし、先進的なプロセッサにおいても、リリース後に想定外の欠陥が露呈する現実は、設計初期段階におけるセキュリティ実装の抜本的見直しが求められていることを示している。
グラフィックスドライバに集中した10件の重大バグと広範な影響範囲
今回のパッチで最も多くの脆弱性が修正されたのは、インテルのグラフィックスドライバである。合計10件に上る高深刻度のセキュリティ問題は、特権昇格や分散型サービス妨害(DDoS)、さらには機密情報への不正アクセスに繋がる可能性を指摘されていた。対象範囲は第6世代Intel CoreからCore Ultraに至るまで広く、統合GPUおよび独立型Arcグラフィックスカードの両方に影響を及ぼしていた。
さらに、最新世代の「Arrow Lake」アーキテクチャや、データセンター向け「GPU Flex 140/170」シリーズも修正対象に含まれており、単なるコンシューマ用途にとどまらない包括的な脆弱性対応が必要であったことが明らかとなった。こうした複数製品への横断的な影響は、グラフィックスソフトウェアのコア部分に共通した構造的脆弱性が存在する可能性を示唆する。
この事実は、GPU分野で競争を強めるインテルにとって、性能だけでなくセキュリティにおいても信頼性確保の重要性が高まっている現状を浮き彫りにする。今後、ドライバの設計思想そのものを問い直すことが、中長期的なブランド価値の維持に不可欠となろう。
Source:TechSpot