地政学リスクの後退とともに市場心理が改善する中、ウォール街では配当貴族の中でも過小評価された銘柄に買いの視線が向かっている。Barchartはテクニカル指標とアナリスト評価を基に、100日移動平均線が200日線を上回る「Buy」シグナルを持つ企業を抽出。

その結果、コカ・コーラ、アボット・ラボラトリーズ、マクドナルドの3社が売られ過ぎながらも上昇余地を残す銘柄として浮上した。これらはいずれも安定した配当実績と堅実な業績を背景に、長期保有の候補として再評価が進む可能性がある。一方でRSIなど短期的な変動指標も考慮し、安易な押し目買いには慎重さが求められる。

上昇転換の兆しを見せるコカ・コーラの株価動向と安定配当の持続力

コカ・コーラ(ティッカー:KO)は、全世界200か国以上に展開し、1日あたり22億本を販売する飲料業界最大手である。四半期配当は1株あたり0.51ドル、年間利回りは約2.8%に達し、配当貴族として60年以上の実績を誇る。2024年後半には株価が200日移動平均線の下で推移していたが、現在は100日移動平均線が200日線を上回るゴールデンクロスが発生しており、技術的な上昇転換の初期段階にあるとみられる。

Barchartの13種指標を用いたシグナル評価でも「Buy」が提示されており、短期から中期にかけての買い意欲が高まりつつある。

同社の事業は清涼飲料だけでなく、無糖飲料や機能性製品への多角化が進んでおり、景気変動の影響を受けにくいビジネス構造が特長である。こうした点からも、同社は不安定な市場局面においても一定の防御力を提供する銘柄といえる。もっとも、RSIなどの短期指標は日々変動しており、現時点での割安感が持続する保証はない。過去のパターンに固執せず、需給動向とともに配当継続性の裏付けとなるキャッシュフローの動向も継続的に確認する姿勢が求められる。

アボット・ラボラトリーズの強気評価とヘルスケア事業の構造的優位性

アボット・ラボラトリーズ(ティッカー:ABT)は、医療機器や栄養製品など多岐にわたる事業を展開し、53年連続で増配を実現してきた。現在の年間配当は2.36ドル、利回りは約1.7%と控えめながら、アナリストの大半が「Strong Buy」と評価する背景には、業績の堅調さと事業領域の社会的必需性がある。

年初来では株価が約17.5%上昇し、100日移動平均線を安定的に上回る水準を維持している。Barchartの複合的指標でも「Buy」評価が継続しており、中長期的な上昇トレンドの継続が視野に入る状況にある。

医療・ヘルスケア分野は、人口の高齢化や新興国市場での需要拡大により、今後も持続的な成長が期待される。アボットは、糖尿病管理システムや栄養強化製品などの高付加価値領域に注力しており、収益構造の強化が進行中である。

ただし、足元では関税関連の報道を契機とした一時的な売り圧力も観測されており、短期的な価格変動リスクに対する警戒も必要である。評価指標の変化や政治的要因に左右されやすい点を念頭に置きつつ、基礎的な成長力を冷静に見極める必要がある。

マクドナルドの不動産収益モデルと横ばい相場の持続性への懸念

マクドナルド(ティッカー:MCD)は、全世界に展開するファストフードチェーンとして知られるが、同時に自社所有の土地と建物を収益源とする不動産事業にも強みを持つ。年間配当は1株あたり7.08ドル、利回りは約2.2%であり、生活必需品セクターの中でも高い安定性を誇る。

株価は100日移動平均線の上に位置しているが、200日線との乖離が縮小しており、直近では横ばいの値動きが続いている。14日間RSIが中立圏にあることからも、現段階では強気・弱気いずれの勢いも決定的ではない。

マクドナルドの収益性は、原材料費や人件費の上昇に左右される構造的課題を抱えている一方で、価格転嫁力やフランチャイズモデルによって一定の利益率を維持している。特に景気後退局面では消費者の低価格志向が強まることから、同社の需要が底堅くなる傾向がある。

ただし、最近の株価の伸び悩みは投資家の間で将来的な成長余地に対する不安が根底にある可能性を示しており、今後の展開には注意が必要である。業績の安定性とチャート上の停滞感が交錯する状況下、次なるトレンドを見極める判断力が問われている。

Source: Barchart