ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが2025年第1四半期にシティグループ株1,460万株を全て売却したことが13F報告書で判明した。年初来36%上昇しているシティ株だが、価値志向で知られるバフェットの撤退は同社の将来性への警戒と受け止められている。一方で、同氏が消費財セクターのコンステレーション・ブランズ株を買い増したことは、景気後退を視野に入れた投資戦略の方向転換を示唆するものと見られる。

ただし、シティ株に対してはウェルズ・ファーゴのマイク・メイヨ氏が強気を維持しており、110ドルの目標株価を提示。実質簿価との乖離や再編による企業体質の改善、そして2.97%の配当利回りを根拠に、今後の反発余地を主張している。市場の評価は「Moderate Buy」で、金融株への見方は二極化が進んでいる状況にある。

バフェットの売却判断が示す投資戦略の転換点

バークシャー・ハサウェイが2025年第1四半期にシティグループ株を全株売却したことは、単なる個別株の整理ではなく、ポートフォリオ全体の戦略的転換を示唆する動きと捉えるべきである。長年にわたって価値投資を貫いてきたウォーレン・バフェットが、銀行株の象徴的存在であるシティから撤退した背景には、金融セクター全体に対する不透明感が影を落としている可能性がある。

加えて、代わりに取得を拡大したのがアルコール・飲料大手のコンステレーション・ブランズ(ティッカー:STZ)であるという点が、現在の市場局面を冷静に見据えた投資行動を裏付ける。

現在の金利水準や規制環境、経済の減速リスクなどを踏まえたとき、バフェットが金融株の比重を減らし、ディフェンシブ性の高い消費関連銘柄へと資金を振り向けた動きは、収益の安定性と成長余地を重視した結果と考えられる。一方で、シティ株は2025年年初来で36%上昇しており、業績も堅調に推移している。

にもかかわらず撤退を決断したことは、外部からは見えにくいリスクを重視した結果である可能性も否定できない。投資判断としては、単なる業績動向だけでなく、バフェットの選好の変化を重要なシグナルとして読み取る視点が求められる。

ウェルズ・ファーゴの強気評価と市場の分岐

バフェットによるシティ株の売却とは対照的に、ウェルズ・ファーゴの上級アナリストであるマイク・メイヨ氏は依然として強い買い推奨を維持している。特に注目されるのは、現在の株価が実質簿価(Tangible Book Value)に対して約20%のディスカウントで推移している点であり、バリュエーションの観点から投資妙味があると分析されている。また、同氏はシティが進めてきた50年ぶりの大規模な再編によって、組織の効率性が高まり、企業体質の抜本的な改革が進行中であると評価している。

さらに、2025年第1四半期決算では市場予想を上回る好調な実績を示し、配当利回りも2.97%と魅力的な水準にあることから、中長期のリターンを見込む投資家には有望な選択肢と映る可能性がある。メイヨ氏は目標株価を110ドルに設定しており、これは現在の株価水準から約50%の上昇余地を意味している。

こうしたアナリストの見解は、市場の評価が一枚岩でないことを浮き彫りにしている。金融株全体に対する見方が分かれる中、バフェットの動きだけに依存せず、複数の視点から判断材料を吟味することが今後ますます重要となる。

銀行株を巡る評価の乖離と投資家への示唆

現在のシティ株を巡っては、バフェットの完全撤退とウォール街の強気評価という相反する見解が並立しており、投資家は判断を一層難しくしている。実際に、シティ株は過去1年間で業績改善と株価上昇の両面で成果を上げており、アナリストの間では再編の効果が今後さらに顕在化すると見る向きが多い。コンセンサス評価も「Moderate Buy(適度な買い)」であり、平均目標株価は84ドルとされ、現在の水準から約12%の上昇余地があるとされている。

このような評価の乖離は、投資におけるリスク認識の違いや、市場参加者ごとの時間軸の差異を如実に示すものである。バフェットはリスク要因に対する許容度が低いことで知られ、特にマクロ経済の先行きに対して慎重な姿勢を貫く傾向がある。

そのため、彼の売却が即座にネガティブシグナルと断定されるべきではない。一方で、業績面の堅調さや割安感を重視する投資家にとっては、現在のシティ株はむしろ好機と捉えられる余地が残されている。結局のところ、投資判断には自身のリスク許容度と市場観に基づく多角的な分析が不可欠である。

Source: Barchart