テスラ株(TSLA)は2025年第1四半期決算発表後から急騰したが、その原動力は業績ではなくイーロン・マスクの政治的ポジション変更とロボタクシー構想への期待にある。実際には、同四半期の収益は市場予想を下回り、利益も規制クレジットによる限定的な黒字であった。

株価上昇の背景には、トランプ政権下での規制緩和期待や米中関係の進展といった外的要因も絡んでいるが、6月に予定されるロボタクシーの商用化が現実的に実行可能かどうかは依然不透明である。現時点で無人運転テストも完了しておらず、規制当局からの技術的照会も続く中、株価の持続的上昇には慎重な見方が求められる。

株価急騰の背後にある業績乖離と政治的要因の影響

テスラ株は2025年第1四半期決算発表後に急伸したが、その原動力は業績の強さではなく、イーロン・マスクの発言や政治的文脈による期待感に依存していた。同四半期の決算は、売上・純利益ともに市場予想を下回り、GAAPベースでの黒字も排出権取引などの規制クレジットによるものである。

にもかかわらず、株価は決算説明会後に急騰し、これはマスクが政府効率局(DOGE)での関与から退く意向を示したことが、投資家心理を好転させた結果であったとされる。また、米中関係における関税の一部撤廃や、インド市場におけるテスラの優遇報道など、マクロ要因が相乗的に作用したことも、上昇の背景にある。

このように、株価の急騰はファンダメンタルズと乖離しており、テスラの実態以上に期待先行の評価が膨らんでいることは否めない。業績の不振に加え、主力事業である自動車の販売成長が鈍化している中で、株価上昇を支える材料が一過性の外的要因に偏っていることは、今後の調整リスクの伏線ともなり得る。マスクの政治的立ち位置の変更が短期的には市場に好感されても、業績の持続的改善が伴わなければ、株価水準の維持は困難であろう。

ロボタクシー開始への懸念と技術的整備の遅れ

6月に予定されるテスラのロボタクシー商用サービス開始は、企業価値の再定義とも言える重要な転機と位置付けられている。イーロン・マスクは、テスラの企業価値の大部分が自動運転技術に基づくとの認識を示しており、ロボタクシーの成功が中長期的な評価を左右すると明言している。

しかし、直近の報道によれば、同サービスの技術的準備は未だ不十分であり、安全運転手なしでの走行テストすら完了していない。The Informationが報じた元従業員の証言によると、これは商用展開の最低条件であり、Waymoの例と比較しても対応の遅れは明らかである。

また、米国家道路交通安全局(NHTSA)は、ロボタクシーに搭載される技術の詳細説明をテスラに求めており、特に悪天候下での走行性能について懸念を表明している。テスラの「完全自動運転(FSD)」はこれまでも同局の監視対象となっており、過去の事故に関する調査も進行中である。

こうした状況から、ロボタクシーが予定通り稼働できるかどうかは不透明であり、導入の遅延が再び発生する可能性を否定できない。マスクが強調する技術革新の象徴的プロジェクトであるがゆえに、その実現性と信頼性の評価は市場におけるテスラの中核的ポジションに直結するといえる。

Source: Barchart.com