Nvidiaは、米国の輸出規制により出荷停止となったH20アクセラレータの後継機について、Hopperアーキテクチャを採用しない方針を示し、メモリもHBMからGDDR7への転換を検討していると報じられた。ジェンスン・フアンCEOは、既存アーキテクチャの再調整には限界があると明言しており、Hopperの代替としてBlackwellやAda Lovelace系の設計が候補に挙がっている。GH100がHBM専用の制約を持つ一方で、GDDRをサポートするGPUはAI用途における帯域幅の制約に課題を残す可能性がある。

こうした転換の背景には、H20が米国政府によりスーパーコンピュータ転用のリスクがあるとして事実上の禁輸対象となった事情がある。Nvidiaはこの制裁により数十億ドル規模の打撃を受けており、H800に続く代替案が求められていた。今後も米中間のテクノロジー競争が激化する中、HuaweiのAscendシリーズが台頭する可能性も否定できず、Nvidiaが規制を回避しながら市場を維持する手腕が問われる状況である。

H20後継モデルはHopper非採用へ 設計限界と輸出規制が方向性を決定づける

Nvidiaのジェンスン・フアンCEOは、H20後継AIアクセラレータについて「Hopperではない」と明言し、その理由として既存アーキテクチャの改造余地が尽きた点を挙げた。Hopperは元来、HBMメモリを前提に高帯域設計されたAI専用GPUであり、帯域制限を強いられる中国向け製品に転用するには根本的な適合性を欠く。米国政府がH20のメモリ帯域幅とインターコネクト性能を問題視した結果、NvidiaはHopperの更なる削減を断念せざるを得なかったとみられる。

また、過去のH800やH20に続く一連の輸出制限を受け、Nvidiaは新たな規制回避策を迫られている。今回の発言は、同社が中国市場向けの製品設計において、過去の高性能設計の延長線ではなく、新たな方向性を模索せざるを得ない状況を象徴している。Hopperの応用限界が公然と語られたことで、Nvidiaの戦略は次世代アーキテクチャへの移行、あるいは別系統の製品群を前提に再構築される公算が高まった。

GDDR7採用の可能性とBlackwell系への転換検討 メモリ構成の再定義が焦点に

Nikkei Asiaの報道によると、Nvidiaは今後GDDR7メモリを採用する方向を模索しており、これは従来のHBM中心の高性能設計からの大きな転換となる。HBMはAI・機械学習用途で高い帯域性能を誇る一方、輸出規制において問題視されやすい特性でもある。GDDR7への移行は帯域制限を回避しやすく、消費者向けGPUに用いられてきた実績があることから、制裁下での合理的な選択肢となる。

ただし、GH100のようなHopper系コアはHBM専用のメモリコントローラに設計されており、GDDR系との整合性に課題が残る。これを踏まえ、Blackwell系チップ、特にGDDR7に対応するGB20X(RTX 50シリーズ)を基盤とする設計が検討対象となっている模様である。ただし、Blackwellの消費者向けモデルはNVLinkを搭載しておらず、大規模AI処理に不可欠なGPU間スケーリング機能に制限が生じる可能性がある。

現時点で最終的なアーキテクチャは未定とされており、Nvidiaは米国政府の規制動向や市場の要請を見極めながら仕様を詰めていくものと考えられる。GPUアーキテクチャとメモリ構成の再定義は、性能と規制回避の両立という難題に直面するNvidiaにとって、今後の開発戦略の中核を成すだろう。

Source:Tom’s Hardware