Nvidiaは次期ミッドレンジGPU「GeForce RTX 5060」の性能プレビューを一部メディア限定で解禁し、同GPUがRTX 4060比で最大25%高速であることが明らかとなった。『Cyberpunk 2077』ではRTX 2060の約4倍、RTX 3060の81%上を記録し、DLSS 4の採用やBlackwellアーキテクチャの恩恵が性能向上に寄与していると考えられる。

このプレビューは厳格な条件下で行われ、解像度は1080p、画質はウルトラ設定、DLSSやFSR 3によるフレーム生成が強制されるなど、評価の自由度は著しく制限されていた。正式レビュー解禁前にあえてプレビュー形式を採用したのは、Nvidiaとして異例の対応であり、市場投入に向けた戦略的布石と見る向きもある。

Nvidiaが導入した異例の「プレビュー」制度とその意図

GeForce RTX 5060の発表に際し、Nvidiaは通常の発売日前レビュー公開を制限し、「プレビュー」という形式での事前報道のみを一部メディアに許可した。これは同社にとって初の試みであり、ドライバ提供を受けた媒体はごく限られていた。

ASCII.jpやGameStar Techが指摘するように、プレビュー対象のゲームや比較対象GPU、描画設定が事細かに指定されており、従来の自由度を大きく欠いていた点が特筆される。DLSSやFSR 3といった補助的なレンダリング技術を前提とする評価環境も、純粋なネイティブ性能比較とは一線を画すものである。

このような厳密なガイドラインのもとで情報解禁を制御する手法は、製品の印象形成をNvidia側でコントロールする狙いがあるとも捉えられる。正式レビューを後日にずらすことで、初期段階の評価を一様な印象にまとめ、市場での不確実性を抑える意図が透けて見える。発表直後の販売促進を狙った広報戦略の一環と見なすことができ、同時にミッドレンジ帯に対するユーザーの関心を高める効果を狙っているとも考えられる。

RTX 5060の性能検証結果に見る世代間の進化と制限条件

RTX 5060のベンチマークは、特定のゲームタイトルに限定された形で実施され、設定はすべて1080p、ウルトラ画質、レイトレーシング有効、DLSSクオリティモード(旧世代にはFSR 3)という統一条件下で行われた。その結果、『Cyberpunk 2077』においてはRTX 4060に対して25%、RTX 3060に対して81%、RTX 2060に対しては約4倍のフレームレート向上を示した。『DOOM: The Dark Ages』でも同様に、RTX 3060比で35%、RTX 2060比では3倍超の性能差が報告された。

ただし、これらの測定結果はいずれもフレーム生成を有効にした状態での比較であり、ネイティブなGPU処理性能を厳密に示すものではない。さらに、RTX 5060と5060 Ti(8GB/16GB)は同じアーキテクチャと技術を採用しているが、フレーム生成有効時の性能差はおよそ14〜17%にとどまる。このことから、Tiモデルの上位性は確かに存在するものの、ミッドレンジ帯の中では十分競争力のある設計であることが確認される。一方で、設定や補助技術の影響を排除した評価が困難である点には留意が必要である。

フレーム生成技術の評価基準と世代間互換性の課題

RTX 5060のプレビューにおける最大の焦点は、DLSS 3および4によるフレーム生成技術の実装である。RTX 4060以上のモデルは最新のDLSS技術を活用可能である一方、RTX 3060やRTX 2060はDLSS非対応のため、代替としてAMD由来のFSR 3が用いられた。この結果、世代間の性能比較においては、同じベンチマーク条件とはいえ、レンダリング手法の違いによる公平性の問題が生じている。DLSSとFSRでは生成フレームの品質や遅延応答に差異があるため、実際のゲーム体験にも微細な差が出る可能性がある。

特に、DLSS 4が採用する「トランスフォーマーモデル」による品質向上は、Nvidiaが競合との差別化に用いている重要技術であり、その恩恵を享受できるか否かが評価に大きく影響する。今回のようにフレーム生成を前提とした比較では、旧世代GPUの不利は避けられず、技術の進化が性能評価に直結していることが浮き彫りとなる。今後のGPU評価においては、補助技術の影響を考慮した分離的な性能分析が求められるだろう。

Source:Tom’s Hardware