米著名投資家ジム・クレイマーが、イーライリリー(LLY)株を「手を変え品を変え買うべき銘柄」として強く推奨した。背景には、同社のGLP-1系減量薬「ゼップバウンド」が競合ノボ・ノルディスクの製品を大きく上回る効果を示した臨床データがある。

2025年の収益見通しは据え置きながらも、マンジャロやジャーディアンスなど主要製品群が予想を超える売上を記録し、第1四半期の総売上は前年比45%増の127億ドルに達した。EPSは予想を下回ったものの、長期的な株価パフォーマンスとアナリストの「ストロング・バイ」評価に支えられ、株価には依然として上昇余地があると見られている。

減量薬市場での差別化が業績と株価見通しに直結

イーライリリーが展開するGLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」は、同業ノボ・ノルディスクの「ウェゴビー」との比較で顕著な優位性を示している。臨床試験では、ゼップバウンドの服用者が72週間で平均50ポンド(約22.7kg)減量したのに対し、ウェゴビーでは平均33ポンド(約15kg)にとどまった。この成果の背景には、ゼップバウンドがGLP-1に加えGIPという別のホルモンも標的としている点が挙げられる。これは単一ホルモンに依存するウェゴビーとの差異を生み、医薬品の機序設計の巧拙が実効性に反映された結果であるといえる。

このような結果は、ジム・クレイマー氏の「イーライリリーはノボ・ノルディスクを明確に凌駕する」との言葉にも裏付けられており、今後の市場競争の構図を塗り替える要因となりうる。特に体重管理薬市場が成長分野とされる中、より高い臨床効果を提示できることは、医療機関や保険者の選定基準に強い影響を与える可能性がある。市場の反応が進めば、同氏が言及したように株価の急騰余地が生じることも想定されるが、あくまで流動的な評価にとどまる。

EPS下振れにもかかわらず強気評価が維持される理由

イーライリリーの2024年第1四半期決算は、売上高が前年比45%増の127.3億ドルと好調で、アナリスト予想(126.2億ドル)を上回った。一方、調整後1株当たり利益(EPS)は3.34ドルと、予想値3.52ドルを下回った。通常であればEPSの下振れはネガティブ要素として評価されるが、今回の事例では主要製品の販売実績が軒並み市場予想を上回っており、収益構造の安定性に対する信頼が維持されている。

とりわけ、糖尿病薬「マンジャロ」の売上は前年比113%増の38.4億ドル、ゼップバウンドは23.1億ドルで20.9%増、ジャーディアンスも48%増の10.1億ドルと躍進が目立つ。これらは同社の中核製品群として売上全体を牽引しており、成長エンジンとしての機能を果たしている。利益見通しの一部引き下げにもかかわらず、こうした数値が投資家やアナリストの楽観的な見解につながっていると考えられる。25人のカバレッジ中21人が「ストロング・バイ」と評価している点も、市場の中長期的な信頼感を反映している。

長期的パフォーマンスと株価目標がもたらす投資妙味

イーライリリー株は短期的には変動が目立つものの、長期スパンで見ると圧倒的な上昇を遂げている。過去1年間の株価は2%の下落、年初来では2%のマイナスと停滞感が漂うが、2年で73%、5年で390%の上昇実績は驚異的である。この成長曲線は、同社が長年にわたり革新的医薬品の開発に注力してきた成果を反映しており、投資対象としての安定感を持つ。

現在の平均目標株価は992.17ドルとされ、現水準から約31%の上昇余地がある。これは、減量薬の成長ポテンシャルに加え、パイプラインの拡充やグローバル市場の広がりを織り込んだ評価であるとみられる。ただし、医薬品業界は規制変更や副作用リスクなどに常にさらされており、過去の成績がそのまま未来を保証するものではない。とはいえ、堅実な実績と競争優位のある製品構成を有する同社は、ポートフォリオの中核として評価するに足る存在といえる。

Source:Barchart.com