Appleは、2024年6月のWWDCでのiOS 19発表を前に、iOS 18.5を5月12日にリリースした。今回のアップデートでは、新たなプライド壁紙「Pride Harmony」の追加や、メールアプリでの送信者写真の表示切替、「すべてのメール」カテゴリへの即時アクセスなど、操作性向上が図られた。また、iPhone 13シリーズにも衛星通信対応が拡大され、T-Mobileが米国でベータ提供を開始している。

さらに、Back Tap機能に通知バナー表示が加わるなど、視認性にも配慮された。セキュリティパッチやバグ修正も含まれており、派手さはないが日常使用に直結する安定性が強化されている点が注目される。

iOS 18.5で進化したメール体験とアクセシビリティ機能の実用性

iOS 18.5では、日常的な操作性の向上が随所に施されている。中でも、メールアプリの改良は注目点のひとつであり、送信者の連絡先写真の表示切替機能が加わったことで、視覚的に煩雑だったインターフェースに柔軟性が生まれた。これにより、業務用アカウントなどでは写真を非表示にして一覧性を高めることが可能となった。また、「すべてのメール」カテゴリが追加されたことで、従来のリスト表示に近い感覚でメール全体を横断的に閲覧できるようになっている。

さらに、アクセシビリティ機能のひとつである「Back Tap」に新たな通知表示オプションが導入された点も見逃せない。端末背面をタップする操作に対し、画面上部にバナーでフィードバックが表示されるため、タップが正しく認識されたかどうかが一目で確認できる。従来の振動や動作変化に頼っていたユーザーにとっては、視覚的な安心感が加わることで操作精度の向上も期待できる。些細な機能強化に見えても、実際の使用頻度が高い部分を丁寧に見直した点は、日常利用者の不満を汲んだ設計といえる。

iPhone 13が衛星通信に対応 T-MobileとStarlinkによる新展開

iOS 18.5により、iPhone 13シリーズでも衛星通信が利用可能になったことは、今回のアップデートの中でも最もインパクトのある変更点のひとつである。これまで衛星通信は最新機種の特権とされていたが、iPhone 13世代にまで対応範囲が広がったことで、より多くのユーザーが緊急時の通信手段としてこの機能を活用できるようになった。現時点ではT-MobileがStarlinkとの連携でサービスを提供しており、米国内においては7月まで無料トライアル、その後はGo5G Nextなどのプラン内で継続利用が想定されている。

一方、VerizonやAT&Tも月額10ドル程度の追加料金で対応を予定しており、iPhone 13を使用するユーザーにとっては選択肢が広がりつつある状況である。ただし、今回の機能はソフトウェアアップデートによって開放されているため、衛星通信自体の使用には通信事業者との契約条件が影響する。そのため、今後の利用に際しては各キャリアの料金体系やカバレッジが鍵となる。iOS 18.5は、通信技術の民主化を一歩前進させたともいえる内容となっている。

プライド壁紙とセキュリティ修正が象徴するAppleの年次的メッセージ

Appleは例年6月のプライド月間に合わせ、新たなデザインの壁紙をリリースしており、iOS 18.5では「Pride Harmony」が登場した。色と動きが連動する太いストライプが特徴的で、ロック画面やホーム画面に個性を加える演出として仕上げられている。この取り組みは、見た目の刷新以上に、Appleが一貫して多様性を尊重する企業姿勢を示す象徴として機能している。

加えて、今回のアップデートにはセキュリティパッチとバグ修正も含まれており、Apple Vision Proアプリの表示不具合の改善や、スクリーンタイムに関する通知機能の改良など、細部にわたる調整が行われている。これらの内容は直接的な新機能とは異なるが、長期間安定してiPhoneを使い続ける上では欠かせない要素である。派手な発表が控えるWWDC前にこうした調整を行ったことからも、Appleが基盤の安定性とユーザー体験の質を同時に重視している姿勢が読み取れる。

Source:CNET