Advanced Micro Devices(AMD)は、ZT Systemsをサンノゼ拠点のSanminaに現金と株式を合わせて30億ドルで売却することで合意した。この取引は2025年末に完了予定で、AMDは22.5億ドルの現金を確保しつつ、ZTの1,200名のエンジニアリングチームは維持する。CitiのアナリストはこれによりNvidiaとの競争力強化を見込む一方、AMD株については「中立」評価を継続し、100ドルの目標株価を提示した。米中関係悪化やIntelの価格政策といった複合要因が収益と株価の上値を抑制する可能性が指摘されている。
ZT Systems売却に伴う財務戦略とAI事業への集中強化

AMDはZT Systemsをサンミナに売却する一方で、1,200名に及ぶZTのエンジニアリング部門を約16億ドルで保持する方針を明らかにした。売却によって得られる22.5億ドルの現金は、同社のバランスシートを強化する狙いがあるとされ、債務軽減やAI関連投資の拡充に活用される見込みである。ZT Systems自体はデータセンターインフラ製品を製造する企業であり、その放出は明確に非中核事業の整理を示唆している。AMDは今回の再編を通じて、データセンターGPUやAI推論向け製品へのリソース集中を加速し、Nvidiaとの競争に備える構えである。
一方、保持されるエンジニア部門は、今後の製品開発のスピードやハイパースケール環境への適応力に寄与するとCitiのアナリストは分析している。特にNvidiaが支配するGPU市場で差別化を図るには、技術面での深度と実装スピードが鍵となる。今回の売却は単なる資産処分ではなく、AMDの中長期戦略の転換点として位置付けられるが、その成果が可視化されるには時間を要する可能性もある。事業ポートフォリオの選別が進む中で、今後の収益源と成長領域の明確化が一層求められる局面にある。
米中対立と競争環境がもたらす株価上昇の制約
Citiのクリストファー・ダネリー氏はZT Systems売却を評価しつつも、AMD株に対するレーティングを「中立」に据え置き、目標株価を100ドルに設定した。この水準は現在の株価を約10%下回ることから、市場の一部には調整の余地があるとの警戒感がある。加えて、AMDが公表した輸出規制の影響も看過できない。米国政府による対中輸出管理が強化される中、AMDは最大15億ドルの収益減少を受ける可能性を指摘している。
さらに、競合のIntelが進める価格引き下げ戦略は、AMDの粗利益率を圧迫しかねず、価格競争の激化が収益性に波及する懸念も拭えない。AMDはAI領域への転換を打ち出してはいるが、半導体業界全体を取り巻く地政学リスクと価格競争の激化という外的要因が、株価上昇を阻む圧力として存在し続けている。中期的には成長余地を持つものの、直近の環境では慎重な評価が妥当とされ、強気一辺倒の判断には慎重さが求められる情勢である。
Source:Barchart.com