バークシャー・ハサウェイが2025年第1四半期の13F報告書で明かしたポートフォリオの変化には、シティグループ株からの完全撤退が含まれていた。バフェットは過去10四半期にわたり一貫して株式を純売却しており、今回の動きもその流れに沿ったものとされる。
一方で、シティは配当利回り3%という水準を維持しつつ、改革による財務改善を背景に有形簿価に近づく評価が進んでいる。2025年第1四半期のROACEは前年同期比で1.4ポイント上昇し、投資妙味を示す指標となっている。
市場環境としてはFRBの利下げ動向や銀行業界全体のバリュエーション回復が鍵となる中で、割安感と安定配当に注目する一部投資家にとって、依然として魅力ある銘柄である可能性がある。
シティからの撤退はバフェットの資産戦略の一環か

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2025年第1四半期の13F報告書でシティグループ(C)株式の完全売却を明らかにした。これは同社がバンク・オブ・アメリカやキャピタル・ワンの保有比率も引き下げる中で実施されたものであり、個別銘柄に対する否定的な評価というよりも、広範なポートフォリオ再編の一環と位置づけられる。実際、過去10四半期連続で純売却を継続しており、保有現金は2025年3月末時点で3,480億ドルと過去最高水準に達している。
シティに限らず、バークシャーはアップルを含む複数の主要銘柄で売却を進めており、市場環境の不透明さや割安な新規投資先の不足が背景にあると考えられる。バフェットは従来、企業の内在的価値に着目して長期的に保有する姿勢を貫いてきたが、その一方で市場全体が割高と判断すれば、広範囲にわたる現金化を進めることも厭わない。
その意味で、シティの売却も特定企業への失望ではなく、投資先としての相対的な魅力度低下を反映したものであろう。従来の蓄積による利得確定に加え、株式市場の先行きに対する慎重なスタンスが今回の撤退判断に色濃く反映されていると解釈できる。
財務改善と配当成長が示すシティの反転余地
シティグループは現在、3%を超える高水準の配当利回りを維持しており、2025年第1四半期にはROACEが前年同期の6.6%から8.0%へと上昇するなど、財務指標も改善傾向にある。同時に、有形簿価は91.52ドルに達し、株価とのギャップも0.83倍と縮小している。これは同業他社と比較して依然として低評価である一方、改革進展による評価修正の余地を示している。
ゴールドマン・サックスは同社の配当成長率を2024年から2026年にかけて年平均19%と見積もっており、収益の安定化と合わせて長期的な資本回収の可能性を支える材料となる。市場全体が金利動向や経済指標に揺れる中で、シティのように安定的な利益成長と自己資本の拡充を両立させる企業には特異性が見られる。
ただし、FRBが利下げに転じれば銀行業界全体の利ざや縮小リスクは残存する。また、同行の評価が割安にとどまる背景には、過去の業績低迷や収益率の鈍化があることも忘れてはならない。現状の評価修正は道半ばであり、今後の業績動向と資本政策の実行力が引き続き注視される局面といえる。
Source: Barchart.com