著名ヘッジファンドマネージャーであるダニエル・ローブ氏が、2025年第1四半期の13F報告書においてテスラ株の全ポジションを解消したことが明らかとなった。背景には、米金利の高止まり、激化する電気自動車市場の競争、そして同社の営業利益率の急低下がある。テスラはModel Yの生産移行に伴い売上・納車ともに減少し、営業利益率はわずか2.1%に落ち込んだ。

一方、ローブ氏はディフェンシブ銘柄や関税影響を見据えた新興セクターへの再配分を進めており、Teslaからの撤退は単なる利益確定ではなく、より根本的な市場観の転換を示唆する。将来的な新車開発やロボタクシー戦略が進行中であるものの、アナリスト評価は分かれており、短期的な株価回復は不透明との見方が優勢である。

ダニエル・ローブがテスラとメタを売却 13F報告書に映る戦略転換の実像

ダニエル・ローブ氏率いるサード・ポイントは、2025年第1四半期に提出された13F報告書でTesla(TSLA)およびMeta(META)の保有株を全て売却したことを明らかにした。さらに、Amazon(AMZN)やMicrosoft(MSFT)などの保有比率も縮小されており、これまでのハイテク偏重の姿勢からの明確な転換が確認された。一方で、新たにNvidia(NVDA)、Pinterest(PINS)、AT&T(T)などに資金を振り向けており、ディフェンシブ志向を帯びた銘柄選好が見て取れる。

また、同報告書にはSPDR S&P 500 ETF(SPY)のプットオプション保有も記されており、市場全体に対する警戒感が浮き彫りとなっている。テスラ売却の背景には、業績低迷やEV市場での競争激化といった外部環境の変化があると見られる。事実、テスラは第1四半期の売上が前年同期比9%減少し、営業利益率も2.1%まで落ち込んだ。こうした局面でのローブ氏のポートフォリオ再編は、今後のマクロ経済環境を踏まえたリスクヘッジ策と解釈される。

テスラの業績悪化が投資判断を揺るがす 株価反転の鍵を握る新型車と自動運転

テスラは2025年第1四半期、売上高193億ドル(前年同期比9%減)、営業利益66%減の3億9900万ドルと、不振を極める決算を発表した。納車台数も13%減少し、336,681台に留まった背景には、Model Yの生産ライン刷新による一時的な停止があるとされる。GAAPベースの営業利益率は2.1%にとどまり、高利益率を支えてきたビジネスモデルに陰りが生じている。こうした状況下での大口投資家による売却は、成長株としての評価に対し強い警鐘を鳴らすものとなった。

一方で、同社は依然として自動運転技術やロボタクシー領域での開発を継続しており、フリーモントやテキサスの工場では車両が自動運転で移動する実証が進んでいる。また、オースティンでのロボタクシー試験運行を6月に開始し、2025年中には人型ロボット「オプティマス」の生産にも着手する計画である。短期的な業績には不安が残るが、これらの次世代技術が順調に商業化へ向かえば、中長期的な株価回復の契機となる可能性は否定できない。

投資家評価が割れるTSLA株 アナリスト見通しとキャッシュフローの対比が示す難解な現実

TSLA株に対する市場の見方は大きく割れている。41人のアナリストのうち、16人が「強く買い」とする一方で、「ホールド」13人、「強く売り」10人という構図が浮かび、見解が真っ二つに分かれる。平均目標株価は284ドルとされるが、これは現在の市場価格を下回っており、割安感よりも将来の業績不確実性が意識されている。こうした評価分散は、企業の成長性に対する期待と実績との乖離を象徴している。

ただし、テスラは強固な財務基盤を維持しており、第1四半期末の現金残高は370億ドル、営業キャッシュフローは22億ドル、フリーキャッシュフローは6億6400万ドルに達する。今後、既存ラインを活用した手頃な価格の新型車の投入により、生産量を60%以上引き上げる方針も示されている。市場における高評価と低評価の乖離は、この実行力と革新性がどれほど業績へ波及するかにかかっており、投資家にとって判断が困難な局面が続くと見られる。

Source: Barchart.com