韓国Zalmanは、Computex 2025で新型CPU空冷クーラー「ZET」シリーズを発表し、同社が2000年代に市場を席巻した円筒型設計の再解釈を提示した。最上位モデルZET5は最大200W TDPに対応し、5本のニッケルメッキヒートパイプと磁力装着式デュアルファンを備える。ZET4は180W対応のLCDディスプレイ交換機構を特徴とし、ZET3は150W対応のコンパクト志向設計である。
加えて同社は木目調パネルを採用した新型ケースP40/P10 Namuも併せて公開し、冷却性能とデザイン性を両立する戦略を示した。今回の発表は単なる新製品投入に留まらず、ブランドの原点回帰と差別化を通じた再ポジショニングの意図が見え隠れする。
タービン構造と磁力装着式ファンで象徴されるZET5の設計革新

Zalmanが発表したZET5は、最大200WのTDPに対応し、冷却効率と視覚的デザインを高次元で両立するフラッグシップモデルである。航空機エンジンを模した円形フィンスタックに、ニッケルメッキされた5本のヒートパイプが貫通。さらに、ファンは磁力で着脱可能という先進機構を備え、マザーボードへの接続にはポゴピン式インターフェースを採用する。これにより、従来の煩雑なケーブル配線を排除し、組み立てやすさとメンテナンス性が向上している。
ファンにはハイドロベアリングが採用され、最大2000RPMの回転で44.48CFMの風量を確保。静音性と冷却能力を兼ね備え、長期使用にも適した仕様となっている。加えて、ブラックとホワイトの2色展開に加え、3つのARGBライティングリングを搭載し、デザイン面でも高い完成度を示す。これは単なる性能追求ではなく、ユーザーのDIY精神と美意識への訴求でもある。
ZET5の設計からは、Zalmanが過去のヒット製品であるCNPS9000シリーズの哲学を現代的に解釈し直し、原点に立ち返りながらも進化を遂げようとしている姿勢が見て取れる。ブランドアイデンティティを再定義しながら、技術革新によって他社との差異化を図る動きと位置づけられるだろう。
拡張性と表示機能を両立するZET4の中間戦略
ZET4は180W TDP対応という堅実な冷却性能に加え、ユニークな機能として取り外し可能なフロントパネルが搭載されている。このパネルはZalman独自のソフトウェアにより、カスタム画像やシステム統計の表示が可能なLCDディスプレイと交換できる仕様となっており、視認性と個別最適化を重視するユーザーへの訴求が強い。また、ヒートパイプは4本構成、ファンは磁力によって本体に着脱可能で、メンテナンス性とデザイン性を両立している。
カラーバリエーションとしてはブラックとホワイトの2色が用意され、設置環境やシステム全体のデザインとの調和が図られている。特にLCDディスプレイの換装機構は、静的な冷却装置という従来の枠組みを超え、ユーザーとのインタラクションを意識した設計思想を感じさせる。
ZET4のような中間モデルに高度な表示機能を持たせる戦略は、単にスペックの埋め合わせではなく、上位モデルとの差別化を図る一方でエントリーユーザーにとっても拡張的な価値を提供し得る。Zalmanが単価ではなく体験価値で製品を位置づけようとする姿勢が見て取れる。
最小限の設計に徹したZET3とNamuシリーズの相乗効果
ZET3は3本のヒートパイプと単一ファン構成による最大150W TDP対応のモデルで、冷却性能の基本に忠実な設計が特徴である。ファンの着脱やライティングといった装飾的要素は省かれ、静音性とコストパフォーマンスを重視した構成となっている。特に省スペースかつ予算を重視する構成に最適で、エントリーグレードのPCビルダーや業務用構成において一定の需要を見込める仕様である。
さらに、ZalmanはこのZET3と親和性の高い新型PCケース「P40 Namu」「P10 Namu」も同時に公開した。P40は最大10基のファンを搭載可能なフルATXケースで、木製のアクセントを加えた水槽型設計が特徴。一方のP10はコンパクトなミッドタワーながら最大9基の120mmファンに対応し、Fractal Design Northを想起させる木目調フロントが印象的である。
ZET3とNamuシリーズの同時展開は、冷却ソリューションとケースを組み合わせた全体最適化という戦略の一環と見なせる。ハイエンド志向と同時に、機能美と一体設計の提案を通じて、Zalmanは冷却市場における再浮上の足掛かりを築こうとしている。
Source:Tom’s Hardware