モルガン・スタンレーの最新レポートが、テスラの自動車部門に対する市場の期待は過剰であるとの警鐘を鳴らした。競合として中国のBYDや小米が急速に台頭する中、販売減と利益悪化が進み、株価は年初来15.3%下落。第1四半期では自動車売上が前年同期比20%減少し、EPSも予想を大幅に下回った。

一方で、エネルギー事業やAI戦略は明確な成長軌道を描いており、DojoスーパーコンピュータやOptimusロボットは数兆ドル規模の将来価値を内包する可能性があると評価されている。テスラは製造拠点とサプライチェーンの多様化にも取り組み、長期的な競争力の確保を模索している。

アナリストの評価は分かれ、「中核事業は厳しいが、非自動車領域には光明あり」という見方が台頭。目標株価の上限は現在水準から36%の上昇余地を示すが、短期的なボラティリティは避けがたいとの見方も根強い。

テスラ自動車部門の業績悪化と競争圧力の顕在化

テスラは2024年第1四半期において、売上高193億ドルと前年同期比9%の減収、自動車部門では20%減の139億ドルと厳しい結果を示した。納車台数も前年同期から13%減少し、33万6,681台にとどまり、販売不振が業績全体を押し下げた。加えて、1株当たり利益は40%減の0.27ドルに落ち込み、市場予想の0.41ドルを大きく下回った。コスト上昇と販売台数の減少が複合的に作用した格好である。

こうした中、モルガン・スタンレーは中国勢の台頭、とりわけBYDや小米による競争激化を懸念材料として挙げている。中国EVの米国市場流入は時間の問題とされ、既存の優位性を維持するのは困難との見方が広がっている。カリスマ性に依存したブランド戦略だけでは、製品力と価格競争力を持つ競合に対抗するには不十分である可能性がある。

一方、同社は自動車以外の部門で健闘を見せており、サービス事業やエネルギー発電の成長が減収分を一部補っている。ただし、利益構造の中心を成す自動車部門が縮小傾向にあることは、株主にとって持続可能な収益基盤に対する不安を強める要因となるだろう。

AI・ロボティクス・エネルギー事業が切り拓く新たな収益源

EV事業に対する期待が後退する中、テスラはAI訓練技術、ヒューマノイドロボット、エネルギー貯蔵といった次世代事業に注力している。中でもDojoスーパーコンピュータは、運転データの解析を通じてFSD(完全自動運転)技術を強化する基盤となるとされ、モルガン・スタンレーはその経済的価値を最大で5,000億ドルと試算している。さらに、Optimusロボットは2025年末までに数千台の導入が計画され、2030年代初頭には100万台規模での展開を視野に入れている。

これらの取り組みは、Nvidia製GPUへの依存度低減や製造現場の自動化といった戦略的意図を内包しており、従来の自動車企業の枠組みを超えた企業像の構築に寄与する。特にAI活用による差別化は、競合他社が追随しにくい優位性を築く可能性がある。ただし、それらが短期的に収益へ寄与するとは限らず、商業化の進捗次第では市場評価にばらつきが生じ得る。

加えて、エネルギー事業も堅調であり、67%の売上増を記録した同部門は今後の事業の柱として注目される。リン酸鉄リチウム電池の米国内生産やサプライチェーンの多様化など、エネルギー自立性を高める施策も着実に進行している。これらの要素は、将来的にボラティリティの高い自動車部門を補完しうる事業ポートフォリオ構築の試みと位置付けられる。

Source:Barchart.com