固体リチウム金属電池の開発を手掛けるQuantumScapeが、試作セル「B0」の出荷や新技術「コブラ」の進展により技術面で前進を見せている一方で、収益化の遅れや株価の大幅下落により依然として市場の評価は二分されている。

2025年第1四半期決算では損失縮小や財務の健全性が示され、現金残高は8.6億ドルと強固であるが、商業化までの道のりはなお険しい。こうした中、Evercore ISIが掲げる目標株価8ドルに対し、他のアナリストは慎重な姿勢を崩しておらず、期待と警戒が交錯している状況である。

商業化前夜に立つQuantumScapeの技術進展と財務体質

QuantumScapeは2025年第1四半期において、固体リチウム金属電池の試作セル「B0」を出荷し、量産化に向けた第一歩を踏み出した。セパレーター製造においては、「ラプター」から「コブラ」への技術移行が進行中で、第2四半期中の統合完了を見込んでいる。これは、同社が目指すスケーラブルな商業生産において中核的な意味を持つ技術進展であり、開発計画におけるマイルストーンとされる。

一方で、QuantumScapeは依然として収益を伴わない開発段階にあり、2025年第1四半期も損失計上が続いた。純損失は前年同期比で470万ドル縮小し、コスト管理の進展が数値上に現れている。EBITDAも改善傾向を示し、保有する現金および有価証券は8億6,030万ドルと、堅牢な財務基盤が維持されている。現金消費が継続する中で負債を抱えていない点は、先行投資型企業としての体力を物語る。

ただし、バッテリー市場の競争は熾烈であり、商業化までに技術の成熟と市場との適合性を証明する必要がある。村田製作所との協業の可能性が示唆されていることは、将来的な生産力確保に向けた重要な足掛かりとなりうるが、現段階では具体的な成果に至っていない。したがって、現時点での技術的進展は希望を感じさせる一方で、投資判断には慎重さも求められる局面にある。

アナリスト評価に見るQuantumScape株の不確実性

QuantumScapeの株式は、2020年の上場後に急騰したものの、直近3年間で70%、過去3ヶ月でも24%の下落を記録している。投資家の関心はかつての熱狂から冷却され、今や確かな商業成果を求める視線に変わりつつある。Evercore ISIのアナリスト、Chris McNally氏は目標株価を8ドルに設定し強気の姿勢を示す一方、Bairdは6ドルへと引き下げ、中立評価を維持した。これは、同社の四半期決算における鈍化と、今後の進展に対する懸念を反映したものとみられる。

市場の評価は分かれており、ウォール街のアナリスト8人中「強い買い」は1名にとどまり、「ホールド」4名、「強い売り」3名という構成である。平均的な目標株価は4.79ドルであり、現在の水準から見て21%の上昇余地を示唆しているものの、最も強気なシナリオである8ドルは、実に102%の上昇を意味する。このギャップは、QuantumScapeの将来に対する期待値と不安定性が入り混じる状況を端的に表している。

このような評価の割れは、技術的進展が認められる一方で、明確な収益モデルや商業契約が確立されていないことへの警戒を反映している。今後、セパレーター技術の量産化や外部パートナーとの連携が具体的な成果として現れるか否かが、株価に対する評価の転換点となる可能性がある。中長期的にはバッテリー産業の成長と政策支援が追い風となるが、足元の市場は慎重な観測を崩していない。

Source:Barchart