AI半導体の巨人Nvidiaに対し、Tiger Global Managementが最新の13-F報告で保有株を13%増の1,100万株へ拡大した。米中貿易摩擦や競合の台頭といった不確実性が漂う中で、同社はQualcommやArmから完全に撤退し、Nvidiaへの選択と集中を鮮明にしている。第4四半期決算では前年比78%増収、データセンター部門も93%増と突出した成長を示したが、利益率には一部減少も見られた。
短期的にはBlackwellチップの立ち上げコストが収益性を圧迫する可能性があるが、2026年以降も強い成長軌道が予想されている。Nvidiaの現バリュエーションは過去よりは落ち着いているものの依然高水準で、一般投資家にとってはタイミングとリスクの見極めが焦点となる。
Tiger GlobalがNvidia株を128万株追加取得 他半導体銘柄からの撤退が示す一点集中戦略

Tiger Global Managementは2025年の13-F報告で、Nvidia株の保有数を約13%増加させ、合計約1,100万株とした。同時に、QualcommやArm Holdingsなど他の主要な半導体株をポートフォリオから完全に除外しており、この動きはセクター内での選択と集中を明確に示すものである。過熱感が懸念されるAI分野において、同ファンドは依然としてNvidiaを中核的存在と位置づけ、今後の見通しに強気の姿勢を崩していない。
この決断は、AI投資のペースや米中貿易摩擦、新興チップ競合の台頭といった逆風の中で行われたものであり、Tiger Globalが持つNvidiaに対する信頼の強さを浮き彫りにしている。通常であれば、こうした不確実性を前に分散戦略が選好されやすいが、同ファンドは一貫してAIの中心をなす企業に資本を集中させる道を選んだ。短期的なボラティリティを受け入れることで、長期的なキャピタルゲインの最大化を狙う構図が見て取れる。
一方で、こうした姿勢は市場環境に左右されやすく、同様のアプローチを取る一般投資家にとっては注意が必要である。特定銘柄への過度な依存は下落局面での影響が大きくなるため、資産全体のリスク管理を怠らないことが前提となる。
売上高とEPSで市場予想超えも粗利益率は低下 Blackwellチップ生産立ち上げの影響が色濃く反映
Nvidiaの2025年度第4四半期決算は、売上高393億ドルで前年比78%増、調整後EPSは0.89ドルといずれも市場予想を上回る結果となった。特にデータセンター部門は、H200 Hopperチップの好調な需要を背景に93%増の収益成長を記録した。こうした数字は、AIインフラの需要が依然として高水準にあることを裏付ける内容である。
しかし、注目すべきは利益面の変化である。粗利益率は前年の76%から73%に減少し、これは次世代Blackwellチップの量産初期段階におけるコスト上昇が影響している。CEOジェンスン・ファンはこの点について、生産加速による一時的なコストであり、長期的な収益拡大への布石と述べているが、短期的には利幅の縮小が業績に影を落とす可能性がある。
投資家は、こうした構造的コストの変動要因に加え、今後の利益回復の速度にも注視する必要がある。第1四半期の売上予想は430億ドルと引き続き成長が見込まれているが、利益率が元の水準に回復する時期については不透明な面も残る。企業としての強さは揺るぎないが、その成長過程は一様ではないことを認識すべきである。
過去比では割高感が緩和も依然高水準 バリュエーションの持続性と今後の上昇余地に対する慎重な見極めが求められる
NvidiaはAI分野の覇者として高いバリュエーションが常態化しているが、現在の予想PERは33.46倍、PSRは25.18倍と、セクター平均より高い水準で推移している。一方で、過去の平均値であるPER47.49倍、PSR25.83倍と比較すれば、評価水準はやや沈静化しており、過熱感は一定程度緩和されつつある。
それでもなお、同社株の上昇余地には限界も存在する。2025年に入り株価の伸びは減速傾向にあるが、前年比では40.1%の上昇を記録しており、S&P 500指数のリターン(10%)を大きく上回っている点は依然として投資家の評価を受けている根拠となっている。市場参加者の間では、現在の株価水準が正当化されるには持続的な利益成長と競争優位の維持が不可欠との見方が強まっている。
アナリストの平均目標株価は166.22ドルと現価格から24%の上昇余地を示しており、最も強気な予測では220ドル(最大62.5%上昇)という声もある。ただし、この期待はBlackwellチップの本格拡販やデータセンター需要の拡大が順調に進むことを前提としており、外部環境や政策リスクの変動次第では未達のリスクも併せ持つ。評価の高さに惑わされず、妥当性を都度見直す姿勢が肝要である。
Source: Barchart.com