D-Wave Quantum(QBTS)は、量子アニーリング技術を核とする第6世代量子コンピュータ「Advantage2」の一般提供を開始し、株価が一時26%上昇するなど市場の熱狂を呼んでいる。同社は過去1年で株価が1,366%急騰し、第1四半期決算では売上が前年比509%増、粗利益は736%増を記録した。さらに1株損失も大幅に改善し、過去最高の現金保有額により経営基盤の安定性も高まっている。

一方、アナリスト評価は依然「ストロングバイ」が優勢であるにもかかわらず、目標株価の平均は現在の水準から34%以上の下落を示唆しており、過熱感と短期的な調整リスクへの警戒が求められる。これにより、投資家は量子技術の将来性と現在のバリュエーションの乖離を慎重に見極める必要がある。

第6世代「Advantage2」が示した量子計算の商用進化と株価急騰の背景

D-Wave Quantumが2025年5月20日に発表した新型量子コンピュータ「Advantage2」は、4,400超の超伝導量子ビットを備えたアニーリング方式の第6世代機であり、商用レベルでの応用が可能とされている。同社によれば、前世代と比較して性能が大幅に向上し、極めて複雑な計算問題の処理が現実的となる。この発表直後、同社株は一時26%急騰し、量子分野の技術革新に対する市場の期待の高さを裏付けた。

しかし、株価上昇の背景には単なる技術革新だけでなく、2025年第1四半期決算における売上1,500万ドル(前年比+509%)、粗利益1,390万ドル(前年比+736%)という圧倒的な実績もある。これは高利益率の量子システム販売によるものであり、実需と事業収益力の裏付けがあってこその評価であると言える。現時点でクラウドとオンプレミスの両方に対応したD-Waveのソリューションは100社以上に採用され、同分野での地位を明確に示している。技術的優位と商用展開の両輪によって、同社は他の競合を凌駕している。

ウォール街の強気評価と34%下落余地が示すバリュエーション乖離のリスク

Barchart.comが報じたアナリスト6名の評価によると、D-Wave Quantum株(QBTS)に対して5名が「ストロングバイ」、1名が「モデレートバイ」としており、全体として強気の見方が支配的である。しかし、その一方で提示された平均目標株価は12.33ドルにとどまり、現在の株価から約34%の下落を示唆している。この乖離は、目先の急騰が投資家の期待先行による過熱を含んでいることを暗示している。

市場参加者の期待が業績を大幅に上回るスピードで先行した場合、短期的な調整局面に直面する可能性は否定できない。特に、過去1年での株価上昇率が1,366%、2025年年初来で114%という水準は、通常の成長曲線とは一線を画すものであり、テクニカル的な過熱感を伴う。一部のアナリストは、実需と成長力の裏付けがあるとはいえ、現時点の時価総額約45億ドルが正当化されるには時間と持続的成果が求められると指摘しており、冷静なリスク評価も必要である。

Source: Barchart.com