ウォーレン・バフェットが1942年に投資を始めた当時と比べ、2025年の市場環境は大きく変貌を遂げているが、彼の投資哲学は「割安株を買う」という原則において今もなお揺るぎない。仮に現在の若きバフェットが投資を始めるなら、米国の覇権が今後も続くと見なし、中心的な成長領域である人工知能(AI)関連分野に目を向ける可能性がある。
とりわけ米国コロラド州のパランティア(PLTR)は、AIを駆使したデータ分析ビジネスを展開し、NHSなど公的機関との連携で急成長している企業として一部の投資家の注目を集めている。ただしPER300倍超という高評価は、バリュー投資の観点からは慎重な検討を要するリスク要因であり、過度な楽観は禁物と言える。
AI主導の米国優位性とパランティアの戦略的地位

2025年の投資環境において、若き日のウォーレン・バフェットが注目する可能性が高い分野は、人工知能(AI)である。米国はAIの中核を担う技術と企業を数多く擁し、ChatGPT、Claude、Grok、Geminiといった大規模言語モデルはすべて米国企業が開発したものであり、AI半導体においてもNvidiaが圧倒的なシェアを維持している。こうした構図は、かつてバフェットが信頼を寄せた「アメリカの競争力」が今もAIを通じて発揮されていることを示唆するものである。
中でも注目を集めるのが、コロラド州に拠点を置くパランティア・テクノロジーズである。同社は機械学習とAIを活用し、膨大なデータセットを解析・視覚化するソリューションを提供しており、NHS(英国国民保健サービス)との連携をはじめ、公共分野での採用実績が拡大している。CEOアレックス・カープの発言によれば、自社のAIプラットフォームに対する需要は「飢えた旋風」のごとき勢いで増加しているとされる。このような高い社会的需要と先進的な技術基盤は、成長期待の源泉と見なされうる。
ただし、米国のAI主導体制が今後も継続するとは限らず、欧州・中国を含む他国の技術革新も無視できない。また、国家安全保障やデータ主権の観点からグローバルな規制強化が進むことで、米企業の市場支配に逆風が生じる可能性もある。そのため、米国優位の構図を前提とした投資判断には、地政学的リスクや規制動向への慎重な注視が求められる。
バリュエーションの壁と成長期待の不確実性
パランティアの株価は過去5年間で1273%の上昇を記録し、現在の時価総額は2980億ドルに達する。この規模は、仮にロンドン市場に上場していたとすればFTSE100構成銘柄の中で圧倒的な首位に立つほどである。しかしながら、同社株には明確なリスク要因が存在している。最たるものは株価評価の高さであり、1株当たり利益(EPS)が41セントにとどまる一方で、株価は126ドルに達しており、株価収益率(PER)は300倍を超える水準となっている。
このような高いバリュエーションを正当化するには、極めて高い利益成長が不可欠となるが、今後3年間のEPS予想は58セント、73セント、97セントと段階的な上昇にとどまる。これが意味するのは、目下の株価水準は将来的な成長を先取りしすぎている可能性があるという点である。現時点で同社株を組み入れるには、極端に楽観的な見通しを前提とすることとなり、いわゆる「安全域」の観点からは乏しい選択肢と判断されうる。
長期視点での成長性は否定しがたい一方、割安性を重視するバリュー投資家にとっては見送るべき局面とも言える。とりわけバフェットが一貫して唱えてきた「わかりやすく、確かな収益力を持つビジネス」に当てはまるかどうかは、疑問の余地を残す。よって、パランティアのような高評価銘柄には慎重な分析と、過熱感を冷静に見極める視座が必要とされる。
Source: The Motley Fool UK