MicrosoftはWindows 11の標準アプリ「メモ帳」に、AIによる文章生成機能「Write」を導入した。これはCopilotやChatGPTのバリエーションなどを活用し、プロンプトを入力するだけで新たなテキストを即座に出力できる仕組みである。対象バージョンはInsider向けのメモ帳Ver.11.2504.46.0で、右クリックメニューや「Ctrl + Q」ショートカットからアクセス可能となっている。

Write機能は短めの文章を生成し、生成結果はRewrite機能でさらに編集・再生成が可能。トーン変更や文体変換にも対応し、ビジネス文から詩的表現まで柔軟にカスタマイズできる。これらの機能はMicrosoft 365サブスクリプションに加入することで利用でき、不要な場合は設定から完全に無効化できる選択肢も提供されている。

メモ帳の「Write」が実現するAIによる文章生成の新領域

Windows 11のInsider向けに提供されたメモ帳のバージョン11.2504.46.0では、「Write」機能が導入されたことで、従来の編集補助機能に加えて新規のテキスト生成が可能になった。この機能では、ユーザーが入力したプロンプトに基づいてAIが短文を自動で生成し、右クリックメニューやショートカットキー「Ctrl + Q」から起動できる専用ダイアログ上で操作を行う。AIモデルにはChatGPTの派生系やMicrosoft独自のエンジンが活用されており、既存のトーン変更や文法修正機能とは異なり、文章の骨子から生成される点が大きな進化である。

さらに、生成されたテキストは「Rewrite」機能を通じて再編集でき、文体の変更や長さの調整、さらにはビジネス文、詩的表現、マーケティング向けの文章など、用途に応じた多様な形式に変換できる。この一連の機能はMicrosoft 365サブスクリプションの契約者向けに限定されており、年額99ドルまたは月額12.99ドルの有料サービスとなっている。なお、不要な場合には設定画面から「Copilot」をオフにすることで、メモ帳からすべてのAI機能を非表示にすることも可能である。

このような機能追加により、従来「極限までシンプルなテキストエディタ」として親しまれてきたメモ帳は、AI活用時代の文書作成ツールへと変貌を遂げつつある。ただし、その方向性には一部ユーザーから「メモ帳の本質が失われる」との懸念も上がっており、利便性と本来の役割のバランスが今後の議論点となるだろう。

「シンプルさ」からの脱却が意味すること

かつてWindowsメモ帳は、余計な装飾や機能を排除した純粋なテキスト編集ツールとして、多くのユーザーに支持されてきた。その存在価値は、立ち上げの軽さ、システム負荷の小ささ、インターネット接続を必要としない点にあり、プログラマーやメモ書き用途にとって不可欠な存在であった。しかし今回、MicrosoftがWriteやRewriteといったAI機能を組み込んだことで、その方向性は明らかに変化しつつある。文章の生成・編集・最適化を一手に担うメモ帳は、もはや単なるエディタに留まらず、AIアシスタントとしての側面を持ち始めた。

とはいえ、現時点で生成される文章は比較的短く、あくまで補助的な用途にとどまっている。これにより、日常的なメモや軽作業には依然として適している一方で、本格的な文書作成を求めるには、現段階では出力の質や量に制限がある。また、利用にあたってMicrosoft 365の有料プランが必要な点も、気軽に試すには一定のハードルとなる。AIに対応したとはいえ、ユーザー全体の利便性が向上するとは限らず、旧来のシンプル志向を評価する層との軋轢も避けられない。

この機能追加が今後も進化し続ければ、AIエディタとしての評価は高まる可能性もあるが、それにはメモ帳というツールの本質を見失わないバランス感覚が求められる。誰にでも使える手軽な道具であり続けることと、最新技術への対応を両立するための慎重な設計が今後の鍵となるだろう。

Source:Windows Latest