MicrosoftのシニアエンジニアMatt Hamrick氏は、.NET 7アプリでの設定ミスが引き起こす深刻な性能低下について公式ブログで警鐘を鳴らした。reloadOnChangeパラメーターを誤って「true」に設定することで、アプリケーションが不要に設定ファイルの変更を監視し続け、メモリリークを誘発。結果としてシステムリソースが枯渇し、動作が極端に重くなる可能性があると指摘されている。
この問題は一部の開発者が仕組みを理解しないまま再利用していることが要因であり、再現性のある不具合として既存の.NETバージョンにも影響が及ぶ恐れがある。Hamrick氏はWinDbgを用いたメモリダンプ解析で問題箇所を特定しており、対策としてコード構成の見直しが求められる。
Windowsの動作が重く感じられる際、原因はハードウェアではなく、こうした設計上の落とし穴に潜んでいる場合がある。
reloadOnChangeの設定ミスが誘発する.NETアプリのメモリリーク

Microsoftのシニア・エスカレーション・エンジニアであるMatt Hamrick氏は、同社公式ブログにて.NET 7アプリケーションにおけるパフォーマンス低下の原因について詳述した。具体的には、reloadOnChangeパラメーターを「true」に設定したことによる設定ファイルの動的再読み込みが、メモリを逼迫させるトリガーとなるという。この誤設定は、アプリが監視対象ファイルを継続的に読み込むことでメモリリークを引き起こし、やがてアプリケーションやシステム全体の応答性を著しく低下させる。
この問題は、開発者が構成システムの仕組みを誤解したままコードを記述した場合に発生しやすい。特に、コントローラーアクションやミドルウェア内でこの設定を用いることは避けるべきだとHamrick氏は警告している。こうした設定は本来、起動時の限定的な読み込み用途にとどめるべきであり、想定外の再読み込みはパフォーマンスに悪影響を与える。
再現性の高い不具合であることから、現行の.NETバージョンにおいても同様のリスクが残るとされており、アプリの設計段階での慎重な構成管理が不可欠となる。
メモリ使用量の可視化とWinDbgによる問題コードの特定
Hamrick氏はこのコード不具合の検証にあたり、Windowsのデバッグツール「WinDbg」を使用してガベージコレクター(GC)のメモリダンプを解析。これにより、アプリが意図せず大量の設定情報を保持し続けていたことが明らかになった。この手法は、目に見えない動作の原因追及において極めて有効であり、Visual Studioやタスクマネージャーでは捉えきれない問題の特定に貢献した。
reloadOnChangeによる動的再読み込みは、アプリの状態や外部環境に応じて頻繁に発動されるため、コードの実行頻度が高いほど影響は深刻になる。Hamrick氏は「この設定の影響は一見して分かりにくいが、動作頻度が高まれば高まるほど症状が顕在化する」と述べている。
こうした事例は、開発現場におけるパフォーマンス問題のトラブルシューティング手法としても示唆に富む。特に.NET環境下では、ガベージコレクションの挙動とコード設計の相関を把握することが、安定したアプリケーション運用の鍵となる。
新旧ハードウェア論争と「遅さ」の真因
Neowinで紹介されたこの事例は、必ずしも古いハードウェアが原因でWindowsの動作が遅くなるわけではないことを示している。実際、.NETアプリの設定一つで最新のシステムすら重くなる可能性があることは、PCの買い替えに慎重なユーザーにとって示唆的な事実である。Microsoftが推奨する「Copilot+ PC」への移行は性能向上の選択肢ではあるが、ソフトウェア側の設計ミスがパフォーマンスの足を引っ張る場合には、その恩恵も限定的となる。
また、Windows 10や11で「遅くなった」と感じる一部のユーザーが、かつてのWindows 8.1の方が軽快に動作したという印象を抱くのも、こうしたコード設計の影響を無視できないからである。ただし、Windows 8.1はすでに2023年1月でサポートを終了しており、安全性の観点から選択肢にはなり得ない。
パフォーマンス改善を求めるのであれば、単にスペックの高いハードに頼るのではなく、アプリケーションコードの見直しや、リソース使用状況の検証が不可欠である。ハードとソフトのバランスがあってこそ、快適な環境が構築される。
Source:Neowin