OpenAIのサム・アルトマンCEOは、AIの発展がインターネット以上の社会変革をもたらす可能性を指摘し、米国議会に対しエネルギー供給、半導体調達、規制整備の早急な対策を訴えた。5月8日の上院公聴会では、Microsoft、AMD、CoreWeaveの幹部も出席し、連邦政府に対し大規模データセンター建設の円滑化と緩やかな包括的ルールの制定を求めた。

アルトマン氏は、NvidiaのGB200を6.4万台導入予定の「Stargate」キャンパスを例に、AI需要に見合うエネルギーとインフラの拡充が不可欠と強調。一方、関税強化や輸出制限がNvidia・AMDに深刻な影響を及ぼす中、産業界では国家安全保障と技術競争力の両立が課題として浮上している。

AI技術の急成長と米国インフラへの圧力

OpenAIのCEOサム・アルトマンは、AIの発展が今後10年の米国経済・社会の構造を一変させる規模であると証言し、その根拠としてChatGPTの週5億人超の利用実績を挙げた。また、同社が建設中の「Stargateスパコンキャンパス」では、Nvidia製GB200 GPUを64,000台導入し、初期段階だけで200メガワットの電力を消費する計画が進行中である。

このようなハイパースケールインフラの整備は、AI技術の規模に見合う電力と土地、冷却設備を求めるため、既存のインフラに深刻な負荷を与える。さらに、エネルギー省によると、米国内のデータセンターによる電力需要は2028年までに2~3倍に拡大し、全米の電力供給の最大12%を消費する可能性があるとされる。

一方で、エネルギー供給や建設認可の遅延がAI開発のボトルネックとなり得るという懸念は現実的である。連邦政府による許可プロセスの迅速化や送電網の再構築が進まない場合、技術革新がインフラ制約によって制限される恐れもある。現在進行中のプロジェクトを例にすれば、巨額投資にもかかわらず、その立地や電力確保の不確実性が商業化スピードに影響を与えかねない。AI産業の成長とインフラ整備の歩調をいかに合わせるかが、米国の競争力維持に向けた鍵を握る。

対中競争と規制のバランスが問われるAI覇権戦略

公聴会に出席したAMDのリサ・スーCEOは、包括的な規制導入がかえって同盟国の中国製半導体への依存を招くリスクに言及し、米国の規制政策が市場アクセスと国家安全保障の両立を目指すべきであると警鐘を鳴らした。実際、4月にはNvidiaの「H20」およびAMDの「MI308アクセラレータ」に対し新たな輸出ライセンスが課され、Nvidiaは55億ドル、AMDは15億ドルの収益減少を見込む事態となっている。これらの措置は中国への技術流出を抑制する目的があるが、同時に米企業の海外展開にとって大きな障壁ともなっている。

AI技術の世界的普及に伴い、米国がリードするためには単なる制限ではなく、外交・通商・産業政策が連動する戦略的対応が不可欠である。過剰な制裁措置は、サプライチェーンの分断や市場シェアの逸失を招く恐れがあり、特に新興国市場での地位低下にもつながりかねない。一方で、技術優位性を維持するには知的財産や先端半導体の保護も避けて通れない。そのためには、敵対的排除に偏らず、規制と振興の均衡を図る制度設計が求められる。現行の対中政策は、その舵取りの難しさを象徴している。

Source:Barchart