かつてコストパフォーマンスで注目されたNvidia GeForce GTX 970が、ブラジルのPaulo Gomes氏らによる8GB VRAMへの改造により再び脚光を浴びている。改造ではGDDR5メモリを高速・大容量チップに交換し、抵抗器の追加で高密度メモリへの対応を実現。
ベンチマークスコアが倍増した事例もあり、改造GPUは「The Last of Us Part II Remastered」や「Horizon Forbidden West」で20~40%超のパフォーマンス向上を示した。一方で、「Cyberpunk 2077」や「GTA V」など旧世代ゲームでは改善が限定的であり、効果はタイトル依存である。昨年のRTX 3070改造でも同様の成功例が報告されており、実機改造による実用的な成果が蓄積されつつある。
改造によるGTX 970の性能向上と検証結果の具体性

ブラジルのPaulo Gomes氏とそのチームによって、2014年に登場したNvidia GeForce GTX 970が8GBのVRAM仕様に生まれ変わった。オリジナルの512MB GDDR5チップを1GB・8Gbpsの高密度メモリへ交換し、GPUがこれを正しく認識するための抵抗器調整も施された。この結果、定番ベンチマーク「Unigine Superposition」ではスコアがほぼ倍増し、技術的な改造の有効性が立証された。
さらに、改造後のGTX 970は「The Last of Us Part II Remastered」で最大24%、「Horizon Forbidden West」では最大40%のフレームレート向上を記録した。一方、「GTA V」や「Plague Tale Requiem」といった旧世代タイトルではVRAM増設による顕著な改善は見られず、効果の発現はゲームの世代や最適化状況に左右されるという事実も浮き彫りとなった。
このようなハードウェア改造は、性能向上の実証に加え、ビデオメモリの重要性に関する議論にも影響を及ぼす可能性がある。近年のAAAゲームが要求するVRAM容量が増大する中、8GBという水準が依然として現行モデルの標準に留まっていることは、開発側とユーザー側の期待値の乖離を示している。特に「Cyberpunk 2077」ではグラフィック設定次第で5〜15%の改善が見られることから、今後のソフトウェア最適化のあり方も注目される。
GTX 970に続くRTX 3070改造成功と改造技術の拡張性
Paulo Gomes氏のチームは、今回のGTX 970の改造に先立ち、2024年2月にもRTX 3070の修復とアップグレードに成功していた。この時は、標準8GBのGDDR6メモリを12GBに増設し、2GBメモリチップの追加とBIOSの改変によってGPUの認識領域を拡張。ストレステストにも耐え、改造後も安定動作を維持したことから、単なる理論的実験ではなく、実運用における再活用の道があることを証明した。また、同GPUは「Resident Evil 4 Remake」で最大66%、「Hogwarts Legacy」で20%、「The Last of Us Part I」で25%の性能向上を見せた。
このような改造事例は、単なる個人の趣味を超え、旧世代GPUの価値再評価に資する動きとも読み取れる。部品調達やハンダ付け、BIOS書き換えといった高難度作業を必要とするものの、技術者にとっては知見とスキルの蓄積に直結する分野である。また、廃棄や買い替えに頼らず資源を再利用する手法としても意義がある。ただし、改造は保証対象外であり、失敗時のリスクは使用者が全て負うことになるため、普及には慎重な判断が求められる。
8GB VRAMの限界とGPU市場の現行仕様への警鐘
NvidiaとAMDの両社はこれまで「8GBのVRAMでほとんどのユーザーにとって十分」との立場を維持してきた。しかし、今回のGTX 970やRTX 3070改造によって示されたパフォーマンス向上は、実利用環境下における8GBの限界を浮き彫りにする結果となった。
特に高負荷な現代のゲームにおいては、テクスチャ読み込みやキャッシュの余裕がフレームレートや安定性に直結しており、8GBでは不足する場面が増加している。そうした状況下でも、NvidiaはRTX 5060/5060 Tiを、AMDはRX 9060 XTをいずれも8GB仕様で投入予定であり、業界の姿勢には変化が見られない。
メモリ容量の仕様が性能のボトルネックとなり得る以上、ミッドレンジクラスの製品設計にも再検討の余地があるといえる。コストや発熱、消費電力といった設計上の制約があるとはいえ、今後のゲーム環境における実行性能を担保するためには、GPUメーカー側にも仕様変更の柔軟性が求められる。Paulo Gomes氏らのような技術者の実験が、こうした市場への警鐘となりうるか注目される。
Source:Tom’s Hardware