Windows 11のSnipping Tool最新版(v11.2504.38.0)に、画面上の任意の色を取得しHEX・RGB・HSL形式で表示・コピーできるカラーピッカー機能が導入された。このツールはPowerToys由来の機能を統合したもので、スクリーンショットを撮ることなく直接カラーコードを抽出可能となる。
また、新たにAIによるテキスト抽出機能もSnipping Toolに実装され、Win + Shift + T
のショートカットで画面上の文字を直接選択・コピーすることができるようになった。構造保持や改行制御にも対応し、手作業での編集負担を軽減する。
Snipping Toolに統合されたカラーピッカーがもたらす操作性の進化

Windows 11 Insider向けに提供されたSnipping Tool バージョン11.2504.38.0には、新たにカラーピッカー機能が追加された。この機能は、ショートカット「Win + Shift + S」でツールを起動し、スクリーンショットを撮る前に画面上の色を選択・抽出できる仕組みである。ツールバーに表示される鉛筆型のアイコンをクリックし、ポインターを目的のエリアにかざすことで、リアルタイムにカラーコードが確認可能となった。
対応するカラー形式はHEX、RGB、HSLの3種類。コードはそのままクリップボードにコピーされ、外部アプリを用いた変換処理が不要となる。これにより、従来PowerToysなどで実現していた機能をWindowsの標準機能として誰もが手軽に扱えるようになった点は大きい。また、ズーム機能やマウスホイールによる精密な色選択も可能であり、デザイン用途における細かなニーズにも応える仕様となっている。
従来のSnipping Toolはスクリーンショット後に加工・抽出する流れが前提だったが、今回のアップデートにより、キャプチャ前の色情報取得という新たな作業フローが確立された。色抽出という一見地味だが繊細な作業を効率化することで、日常的に色を扱うユーザーにとっては利便性が格段に向上する。
新ショートカット「Win + Shift + T」が示すAIテキスト抽出の現在地
Snipping Toolは今回のアップデートで、画面上のテキストをリアルタイムに認識してコピー可能とするAIベースの「テキストスキャン機能」を搭載した。この機能は「Win + Shift + T」で直接起動でき、スクリーンショットを撮らずに範囲を選択するだけで文字情報を自動抽出し、構造を保持したままクリップボードに保存する設計となっている。
この機能は、以前からSnipping Tool内で画像を開き、そこから手動でテキストを抽出する手順を必要としていたプロセスを一変させる。複数の改行や段落構造も保持されるうえ、「改行を無視」するオプションも備わっており、用途に応じた柔軟な活用が可能である。メモ帳やエディタへの転記が簡略化され、視覚的に選んだ情報を即座に扱える点が実用面での魅力となっている。
ただし、この機能には現時点でCopilot+ PCを前提とする機能の先行実装が含まれており、すべての環境で同等の体験が得られるとは限らない。とはいえ、画像からではなく“画面そのもの”から意味ある情報を取り出す流れは、Windowsの操作体系に新しい習慣をもたらす可能性がある。AIの利用範囲が画面操作の基本動作にまで及び始めたという点で、日常のPC作業にも影響を与える変化といえる。
NotepadとPaintにも拡張されるAI機能の方向性
Windows Latestによると、MicrosoftはSnipping Toolに加え、NotepadおよびPaintにもAI機能の強化を計画している。Notepadには「Write」機能が導入予定で、これはプロンプトに応じた文章生成を可能とする。ユーザーの指示に従ってテキストを構成することに加え、既存文書を基にした内容の補完にも対応する。ただし、利用にはMicrosoftアカウントとクレジットが必要とされており、誰でも即座に利用できるわけではない。
Paintでは「Cocreator」機能に新たなステッカー生成ツールが加わり、プロンプトからグラフィックを即生成・貼り付け・保存できるようになる。さらに、画像内のオブジェクトを知的に識別し選択する「オブジェクト選択ツール」も開発中である。これらの機能もCopilot+ PCを前提とした実装が想定されており、AI対応ハードウェアの有無が利便性に差を生む可能性がある。
これらの拡張は、一連の操作の自動化や補完によってアプリの価値を再定義しようとする動きと見ることができる。ただし、AI機能を最大限に活用するためには、ハードとアカウント環境の整備が前提となるため、その敷居は依然として存在する。今後、こうしたAIツール群がどこまで一般的なPC操作に溶け込むかは、今後の展開次第といえる。
Source:Windows Latest