スロバキアのテックメディアHW CoolingによるGigabyte工場見学の過程で、未公開だったRadeon RX 9060 XTのPCB写真が撮影され、同GPUの構造とメモリ構成の一端が明らかになった。コードネーム「R906XTG」が示すように、この基板はGigabyte製Gamingシリーズに属し、GDDR6メモリチップと8ピン電源コネクタ、PCIe 5.0 x16スロットなどが確認されている。

ただし、現時点では搭載VRAMが8GBか16GBかを特定する証拠はなく、表面に見える2枚以外のチップ構成や裏面の設計に関する情報は判然としない。AMDはすでに同モデルの価格帯と6月5日からの供給開始を公表しているが、具体的な性能評価やユーザー評価は今後の正式レビュー待ちとなる。

工場見学で撮影されたRX 9060 XTの基板が示す物理的特徴と製品構成の手がかり

HW CoolingがGigabyteの製造拠点で捉えたRX 9060 XTのPCB画像は、従来のリーク情報に新たな信憑性を与える内容となった。PCBにはGigabyte専用のコード「R906XTG」が印字され、これは同社のGamingモデルに該当すると見られる。電源供給には8ピンコネクタが採用され、インターフェースは最新のPCIe 5.0 x16に準拠。

GPU本体とメモリは基板中央に配置され、GDDR6チップが12時方向と3時方向に取り付けられていた。現段階で確認できるのは2枚のメモリチップのみで、これによりVRAM容量が8GBか16GBかは断定できない構成である。

Gigabyteは同GPUのSKUとして4種を予定しており、すべてトリプルファン・デュアルスロット仕様という共通設計である点からも、今回の基板が量産前提のリファレンスとは異なる設計である可能性も示唆される。写真からはディスプレイ出力が3系統に限定されていることも確認され、AMDの設計方針が反映されていることが伺える。

このような限定的な仕様確認ではあるが、製品完成度の高さや基板設計の精緻さから、Gigabyteが製品化に向けて最終調整段階に入っていると見る見方もある。ただし、メモリ容量や冷却性能、動作クロックといった要素に関しては一切の確証がなく、確定的な評価は時期尚早である。とはいえ、製造現場で撮影された未公開基板という性質上、マーケティングを経ない生素材としての価値は高く、製品の物理的特性を読み解く上での一次資料としての意義は極めて大きい。

AMDが公表した価格と供給予定が意味する市場投入戦略

AMDは既にRX 9060 XTの希望小売価格を、8GBモデルが299ドル、16GBモデルが349ドルと提示している。また、供給開始は6月5日から段階的に始まる見通しで、広範な市場展開が前提となっている。今回の価格設定は、性能とコストのバランスを重視する中級GPU市場を強く意識したものであり、RTX 4060 TiやIntel Arc A770といった同価格帯製品との直接競合を狙っていると見られる。Navi 44を搭載するRX 9060 XTは消費電力やボード長でも抑制された仕様が予測されており、ゲームユーザーだけでなく、クリエイティブ用途を重視する軽量PC構成にも親和性が高い。

この価格帯において、Gigabyteを含むAIB各社が複数SKUを同時展開する構えを見せていることは、AMDがパートナーを通じた早期浸透を狙っている証左と考えられる。ただし、価格競争力を武器とする一方で、今回のように製品写真の一部のみが出回る状況では、消費者の関心と懐疑が並立することも予想される。

実際の動作性能や温度耐性、静音性といった評価軸が明らかになるのは製品供給が始まって以降であり、エンドユーザーが判断材料を得るにはもう一段の時間を要する。よって、AMDの戦略は価格優位性を入り口に市場の注目を引き、以降のレビューやユーザー評価によって市場定着を図る段階的アプローチといえる。

Source: Tom’s Hardware