量子コンピューティング企業IonQが、LightsynqとCapellaの買収を通じて量子ネットワーク構築を加速させる構想を明らかにした。特にハーバード大学発の量子メモリ技術と、宇宙ベースの量子鍵配送に強みを持つ技術の統合により、ネットワーク距離の飛躍的拡張と国家安全保障分野への進出を目指す。
2025年第1四半期の好決算や、EPBとの2200万ドル規模の商業契約、ID Quantiqueの支配的持分取得といった成果が投資家の期待を後押ししており、株価はCEOによるNvidia比較発言を背景に約40%上昇した。売上の急成長が予想される一方で、黒字転換の時期は依然不透明である。
大規模買収で加速するIonQの量子ネットワーク構想

IonQはLightsynqとCapellaという2社の買収により、量子コンピューティングの枠を超えた広範なネットワークインフラの構築に動き出している。Lightsynqはハーバード大学で開発された量子メモリ技術により、従来20マイルに制限されていた量子ネットワークの距離を数百マイルに拡張する可能性を持つ。これにより、フォトニック相互接続の性能が向上し、数百万量子ビットへのスケーラビリティが強化される。
加えて、Capellaの買収は、宇宙空間における量子鍵配送技術と、国家安全保障に特化したノウハウをIonQにもたらす。中国の量子ネットワーク戦略に対抗する意味合いも含まれており、同社の安全保障分野への進出が視野に入る。
これらの動きは、量子技術の商業化を前提とした成長ビジョンを裏付けるものであり、単なる技術革新ではなく、事業戦略の一環としてのネットワーク整備が進行していることを示す。一連の買収は、IonQが単なる量子コンピュータの提供企業ではなく、将来的な量子インターネットの中核を担う存在へと進化しつつあることを物語っている。
投資家の関心を集める業績改善とエコシステム戦略
2025年第一四半期、IonQは760万ドルの売上を計上し、ガイダンスを上回る好決算を発表した。これに加え、ID Quantiqueの過半数取得やEPBとの2200万ドル規模の契約といった商業面での成果が続き、量子ネットワークとコンピューティングの両軸での展開が具体化してきた。技術面でもDARPA主導の量子ベンチマークプロジェクトや、NvidiaのGTCイベントでの12%のシミュレーション効率改善など、応用実証も進んでいる。
CEOニコロ・デ・マシ氏は、IonQのエコシステム重視の戦略を強調し、自社をNvidiaやBroadcomに例えながら、業界における覇権確立を目指す姿勢を示した。これらの発言を受けて株価は約40%上昇し、市場の注目が一段と高まった。しかし、売上の拡大が見込まれる一方で、IonQは依然として赤字経営を脱しておらず、2029年でも4860万ドルの純損失が予想されている。短期的な黒字転換には慎重な見方が必要であり、成長期待と収益性のバランスに対する評価が今後の株価に影響を与える可能性がある。
Source:Barchart