テスラ株は2024年に入り約30%下落し、販売減と利益率悪化が重なって業績が低迷するなかで市場の信頼を揺るがせていた。第1四半期決算では売上高が前年比9%減となり、EPSも前年同期比で半減するなど厳しい内容であったが、CEOイーロン・マスクはSNSで「すでに立ち直った」と強調し、8月の自動運転タクシー発表にも言及した。

一部のアナリストはテスラの成長戦略を評価して買い推奨を維持する一方、競争激化と利益率への懸念から慎重な見方も根強い。AIと自動運転技術への注力が株価回復の要因とされるが、実態がともなわなければ再び失望を招く可能性も否めない。

今のテスラ株をどう見るかは、短期の業績ではなく中長期の技術実装力と市場支配力をどう評価するかにかかっている。

業績悪化と需要鈍化が株価に与えた影響

2024年第1四半期におけるテスラの決算は、市場予想を下回る内容となり、投資家の期待を大きく裏切った。調整後の1株当たり利益は前年同期比で53%減の0.45ドルにとどまり、売上高も前年から9%減少して213億ドルと、いずれも市場のコンセンサスを下回った。販売台数の急減や製造規模の縮小が主因であり、マクロ経済的な高金利環境が消費者心理を冷やしていることも影響している。

こうした環境下でテスラは需要喚起を目的とした価格引き下げを実施したが、結果として利益率を圧迫する構造的問題を浮き彫りにした。2023年の急騰を経た後の30%超の株価下落は、市場が業績の実態に失望していることの表れである。利益重視の投資家にとって、短期的な業績悪化はリスクとみなされやすく、株価の反転には確たる収益回復の兆しが必要となる。

テスラが抱える現在の課題は、単なる販売不振にとどまらず、コスト構造と価格戦略の見直しを含めた経営全体の柔軟性に及んでいる。成長ストーリーが鮮明であった時期とは異なり、現状では足元の収益性に対する市場の評価がより厳しくなっていることを無視することはできない。

マスク氏の発言とロボタクシー構想がもたらす将来期待

イーロン・マスクは、X上で「テスラはすでに立ち直っている」と公言し、悲観的な見方が広がる市場に対して反転のメッセージを発した。特に注目を集めたのは、8月に予定されている自動運転タクシー(ロボタクシー)の発表であり、AIと自動運転技術における同社の優位性が再び脚光を浴びる契機となった。

テスラはソフトウェア主導型のビジネスモデルへの転換を加速しており、ロボタクシー構想はその象徴とも言える。ハードウェアとしてのEV製造から、AIを駆使したサービス提供型企業への進化を目指す姿勢が明確になっている。こうしたビジョンは、一部の投資家にとっては再評価の根拠となり得る。

ただし、現在の株価水準が今後の技術実装や市場支配力に十分見合うものかは依然不透明である。自動運転技術は法規制、インフラ、セキュリティといった多くの障壁を抱えており、商業化が進むかどうかは即断し難い。短期的な収益に代わる中長期的成長への布石としての意味はあるが、その実現可能性を市場がどう評価するかが鍵を握る。

ロボタクシーが現実の収益貢献に結びつくまでには相応の時間を要する可能性が高く、マスク氏の発言に対しても冷静な検証が求められる。ビジョンと実行力の乖離をどの程度許容できるかが、今後のテスラ株の動向を左右する。

Source:Barchart