建物が天に向かって伸び、都市が立体化する現代社会で、エレベーターやエスカレーターは我々の日常生活において欠かせない存在となっています。その製造元となるエレベーター・エスカレーター製造業界は、躍進を続ける先進技術と変わりゆく経済環境の中で日々進化しています。本記事では、2023年現在の時価総額に基づく世界のエレベーター・エスカレーター会社ランキングTOP28を紹介します。このランキングを通じて、各企業の特性や市場の動向、そして今後の可能性を探求していきましょう。
世界のエレベーター・エスカレーター会社ランキング:時価総額TOP28
下記の世界のエレベーター・エスカレーターランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 企業の所在地:上位企業は地域的に日本、アメリカ、フィンランド、スイスと多様ですが、全体的に見ると中国の企業が一部のランキングに多数含まれています。これは中国の企業が市場において一定の存在感を持っていることを示しています。しかし、時価総額に関しては、日本やアメリカ、フィンランド、スイスの企業が上位を占めています。
- 時価総額:時価総額については、1位の日立製作所(83,457億円)から28位のDarjeeling Ropeway Co Ltd(0億円)まで幅広い範囲で分布しています。特に上位の企業は時価総額が非常に大きく、下位の企業と比較して大きな格差があることがわかります。
- 産業別の特性:このリストに含まれる企業は、機械やエレベーター、電子部品、輸送機器など、一部は重工業や電機産業に関連する企業が多いようです。
- 国別の特性:日本の企業は、時価総額ランキング上位から下位まで広く分布しており、日本国内の企業規模の差が大きいことを示しています。中国の企業はランキング下位に多く、時価総額は全体的に低めですが、出現回数は多いため、中小企業の存在が多いことを示唆しています。
以上の点から、各企業の時価総額ランキングは、地域的特性、業界特性、および企業規模の大小など、様々な要素によって形成されていることがわかります。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位:日立製作所(日本)
日本に本拠地を置く、多角化して事業展開を行っている大手電機メーカーです。ITソリューション、エネルギーソリューション、産業用・社会インフラシステムなど多岐にわたる分野で製品とサービスを提供しています。ランキング上位に位置する理由は、その多角化した事業ポートフォリオと、その事業で得られた安定した収益性によるところが大きいと考えられます。また、継続的な研究開発投資により、最新の技術を商品化し市場へ供給する力も強みとなっています。
2位:Otis Worldwide Corp(アメリカ)
アメリカを本拠地に、エレベーターやエスカレーターなどの製造を手掛ける企業です。世界各地に広がる広範なネットワークと、幅広い顧客層への提供が可能な製品ラインナップが時価総額を押し上げる要因となっています。また、同社の製品は信頼性と耐久性に優れており、メンテナンスやアップグレードのビジネスにおいても一定の成功を収めています。
3位:三菱電機(日本)
日本の大手電機メーカーで、家庭用電化製品からエネルギーシステム、産業用システム、インフラシステムなど、幅広い製品とサービスを提供しています。時価総額が高い理由としては、安定した業績と技術力、そして長年にわたるブランド力が挙げられます。また、世界中で事業を展開しており、国内外の多様な市場に対応しています。
4位:KONE Oyj(フィンランド)
フィンランドを拠点とする、エレベーターとエスカレーターの製造販売で知られる企業です。同社の技術力と製品の信頼性、そして効率的なメンテナンスサービスが、高い時価総額を支える主要な要因となっています。また、持続可能な都市開発を支える製品・サービスに注力しており、エネルギー効率と安全性に優れた製品が世界中で高く評価されています。
5位:Schindler Holding AG(スイス)
スイスを拠点にエレベーターやエスカレーターの製造を行う企業で、世界中に事業を展開しています。その製品は、信頼性と高品質で知られており、これが同社の時価総額を高めています。また、独自のデジタル化戦略と先進的なメンテナンスサービスにより、持続可能な都市移動を支援することで高い評価を得ています。
これらの企業が時価総額ランキング上位に位置する理由は、製品の品質と技術力、ブランドの信頼性、市場での地位、そして戦略的なビジョンといった要素が組み合わさっていると言えます。
※対象となるエレベーター・エスカレーター会社として「上場企業」かつ「エレベーター・エスカレーター業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年6月22日)の株価および為替レートで算出
ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額(億円) |
1 | 日立製作所 | 日本 | 2023/03 | 83,457 |
2 | Otis Worldwide Corp | アメリカ | 2022/12 | 48,603 |
3 | 三菱電機 | 日本 | 2023/03 | 43,749 |
4 | KONE Oyj | フィンランド | 2022/12 | 36,154 |
5 | Schindler Holding AG | スイス | 2022/12 | 30,877 |
6 | 東芝 | 日本 | 2023/03 | 19,656 |
7 | Shanghai Electric Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 13,654 |
8 | Shanghai Mechanical & Electrical Industry Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 2,970 |
9 | フジテック | 日本 | 2023/03 | 2,910 |
10 | Hyundai Elevator Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 1,767 |
11 | Canny Elevator Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,285 |
12 | Shanghai STEP Electric Corp | 中国 | 2022/12 | 1,264 |
13 | Guangzhou Guangri Stock Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,193 |
14 | Shenyang Yuanda Intellectual Industry Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 891 |
15 | GFC Ltd | 台湾 | 2022/12 | 607 |
16 | Suzhou Shijia Science & Technology Inc | 中国 | 2022/12 | 548 |
17 | IFE Elevators Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 485 |
18 | Flying Technology Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 430 |
19 | Xuancheng Valin Precision Technology Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 353 |
20 | Bharat Bijlee Ltd | インド | 2023/03 | 283 |
21 | 三精テクノロジーズ | 日本 | 2023/03 | 256 |
22 | 守谷輸送機工業 | 日本 | 2023/03 | 225 |
23 | Hong Wei Electrical Industry Co Ltd | 台湾 | 2022/12 | 137 |
24 | China Brilliant Global Ltd | 香港 | 2022/03 | 66 |
25 | EITA Resources Bhd | マレーシア | 2022/09 | 58 |
26 | サンセイ | 日本 | 2023/03 | 32 |
27 | Cranex Ltd | インド | 2023/03 | 3 |
28 | Darjeeling Ropeway Co Ltd | インド | 2023/03 | 0 |
出典:各社プレスリリースなど
世界のエレベーター・エスカレーター会社ランキングの有用性
エレベーターとエスカレーターの会社ランキングは、特定の市場での企業の立ち位置を理解する上で非常に有用な情報源となります。その詳細な利点は以下の通りです。
- 市場リサーチ:この種のランキングは、特定の産業の規模、主要プレーヤー、競争状況など、市場全体の概観を提供します。投資家や事業者は、これらの情報を利用して市場のトレンドや成長の可能性を探り、戦略的な意思決定を行うことができます。
- 競争分析:ランキングを通じて、企業は自社と競争関係にある他社のパフォーマンスを評価することができます。これにより、企業は自社の競争力を評価し、必要な改善策を見つけることができます。
- 投資意思決定:投資家にとって、企業のランキングは投資対象の選定に役立ちます。時価総額、財務状況、成長率などを考慮して、最も投資価値のある企業を見つけることが可能です。
- 顧客の視点:エレベーターやエスカレーターを購入またはリースする企業や個人にとって、ランキングは製品の品質、価格、アフターサービスなどを評価する一つの基準となります。ランキング上位の企業は、一般的に高品質の製品とサービスを提供していると見なされます。
- 新規参入:新規参入企業にとって、ランキングは市場への参入戦略を計画するための基礎情報を提供します。どの企業が市場を支配しているか、どの地域やセグメントに機会があるかなど、市場の動向を把握することができます。
しかし、ランキングはあくまで一つの指標であり、総合的な市場理解のためには、他のマーケットリサーチ情報と組み合わせて使用することが重要です。
世界のエレベーター・エスカレーター会社ランキング:変化を与える要素
世界のエレベーター・エスカレーター会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
技術革新
新技術の開発や採用は、企業の製品が市場でどれだけ受け入れられるかを大きく左右します。エネルギー効率や安全性を高めた製品、あるいは独自の革新的な機能を持つ製品を開発できる企業は、市場で競争力を保つことができます。
経済状況
全体的な経済状況や建設業界の動向は、エレベーター・エスカレーター需要に大きな影響を与えます。経済が拡大している時期は、新たなビルや施設が増え、それに伴ってエレベーターやエスカレーターの需要も増えます。
規制と政策
政府の規制や政策も市場に影響を与えます。例えば、エネルギー効率や安全性に関する新たな規制が導入された場合、これに対応できる製品を提供できる企業が優位に立つ可能性があります。
企業の戦略
企業が採用する戦略やその実行力も重要な要素です。新市場への進出、販売ネットワークの拡大、M&Aなどによって、企業の市場シェアや業績は大きく変化することがあります。
品質とサービス
製品の品質とアフターサービスの質は、顧客満足度とリピート購入に直結します。高品質な製品を提供し、優れたメンテナンスやサポートを提供する企業は、顧客の信頼を得て市場での地位を保つことができます。
これらの要素は相互に関連し合っており、それぞれが企業の市場価値と業績に影響を与えます。したがって、これらの要素を把握し、適切に対応することが、ランキングの変動に対する理解と戦略的な意思決定につながります。
まとめ
今回のランキングを通じて、エレベーター・エスカレーター業界がどのような企業によって牽引され、それぞれがどのような特性を持ち、どのような戦略を用いて成功を収めているかを一瞥することができました。それぞれの企業が保有する強み、如何に市場の変動に対応し、絶えず革新を重ねているかが明らかとなりました。
業界は技術の進化、経済状況の変化、政策・規制の影響、そして企業の戦略や製品の品質・サービスによって変動します。これらはすべて、ランキングに影響を及ぼす要素であり、市場の動きを理解する上で重要な視点となります。
今後もこのエレベーター・エスカレーター業界は、都市化の進行や高齢化社会の到来など、社会ニーズの変化に応えながら、引き続き成長していくことでしょう。我々はそのダイナミズムを見守り、そして理解を深めていくことで、これからの社会をより良く理解し、適切な意思決定を行っていけることでしょう。