2023年、航空機器産業は新たな技術進化と挑戦の舞台となり、その動きは全世界のランキングに大きな影響を与えています。世界の航空機器産業は、経済の全般的な状況、新たな政策や規制、そして企業自身の戦略によって大きく変化し続けています。
そこで、この記事では「2023年最新版:世界の航空機器会社ランキング時価総額TOP66」をお届けします。本ランキングは時価総額を基にしていますが、その背後には各企業の技術革新、ビジネスモデル、そして市場環境への適応力など、様々な要素が反映されています。
世界の航空機器会社ランキング:時価総額TOP66
下記の世界の航空機器会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 地域別: アメリカが業界を支配していることが明らかで、ランキング上位に多数の企業が含まれています。時価総額の最も大きな企業であるRaytheon Technologies Corp、Honeywell International Inc、General Electric Coなどはすべてアメリカ企業です。また、ランキングリストの30の企業のうち、約半数(16社)がアメリカの企業です。その他の国々の中では、中国が8社で2番目に多く、次いで日本が5社、フランスが3社となっています。
- 時価総額: ランキングは明らかに上位企業と下位企業との間で大きな格差があります。上位の企業(Raytheon Technologies CorpやHoneywell International Incなど)の時価総額は数兆円に達していますが、一方でランキング下位の企業(A-Sonic Aerospace LtdやSIFCO Industries Incなど)の時価総額は数十億円程度です。これは航空宇宙産業が大規模な資本投資を必要とするため、大企業が業界を支配しやすい特性を反映している可能性があります。
- 業種: これらの企業は主に航空宇宙産業に関連していますが、それぞれが提供する製品やサービスは多様です。例えば、一部の企業は航空機の製造に重点を置いている一方で、他の企業は航空エンジンや航空電子機器などの製造に重点を置いています。これは航空宇宙産業が非常に広範で技術的に高度な産業であるため、その中に多くの専門分野が存在することを示しています。
これらの分析から、このランキングは航空宇宙産業のダイナミクスと多様性を示しています。また、アメリカ企業の強さと影響力、そしてこの産業における大規模な資本投資の必要性も反映しています。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位:Raytheon Technologies Corp(アメリカ)
Raytheon Technologiesは航空宇宙と防衛の分野で世界をリードする企業で、航空機エンジン、電子システム、ミサイル、航空機など、広範囲にわたる製品とサービスを提供しています。
Raytheon Technologiesは2020年に発生したUnited TechnologiesとRaytheonの統合により設立され、膨大な資源と業界での強力な位置づけを利用して成長を遂げています。その製品とサービスは、商用航空宇宙業界から防衛部門まで、広範囲にわたる市場で必要とされており、その事業規模と多様性が高い時価総額を維持する要因となっています。
2位:Honeywell International Inc(アメリカ)
Honeywellは航空、建物技術、パフォーマンス素材、安全性におけるグローバルなリーダーであり、これらの領域で技術的な革新を主導しています。
Honeywellは幅広い産業に製品とサービスを提供することによって強固な市場地位を確保しています。航空宇宙部門では、航空機用エンジン、統合航空システム、航空電子機器など、高い技術力を活かした製品を提供しています。そのため、同社の時価総額は高水準を維持しています。
3位:General Electric Co(アメリカ)
General Electricは、航空、ヘルスケア、パワー、再生可能エネルギーなど、多岐にわたる産業で革新的なソリューションを提供する多国籍企業です。
GEはその航空部門で広く知られており、世界の航空会社にジェットエンジンと関連サービスを提供しています。これらの高品質で信頼性の高い製品が、その高い時価総額を支える主要な要因となっています。
4位:Northrop Grumman Corp(アメリカ)
Northrop Grummanは、防衛、航空、宇宙などの分野で先端技術製品とサービスを提供しています。
その先進的な航空宇宙技術、特に無人航空機、航空防衛システム、サイバーセキュリティ技術などの領域でのリーダーシップが、その市場価値を高めています。
5位:Safran SA(フランス)
Safranはフランスの多国籍企業で、航空、宇宙、防衛産業で幅広い製品を提供しています。航空エンジンや装備品、宇宙推進システム、防衛電子機器などを手掛けています。
Safranは特に航空エンジンで強い地位を確立しており、その革新的な技術と信頼性の高い製品が世界的な航空会社から高く評価されています。これが高い時価総額を支えています。
【世界の航空機器会社ランキング:時価総額TOP66リスト】
※対象となる航空機器会社として「上場企業」かつ「航空機器業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年6月28日)の株価および為替レートで算出
ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額(億円) |
1 | Raytheon Technologies Corp | アメリカ | 2022/12 | 187,902 |
2 | Honeywell International Inc | アメリカ | 2022/12 | 176,750 |
3 | General Electric Co | アメリカ | 2022/12 | 149,967 |
4 | Northrop Grumman Corp | アメリカ | 2022/12 | 91,499 |
5 | Safran SA | フランス | 2021/12 | 79,620 |
6 | TransDigm Group Inc | アメリカ | 2022/09 | 67,631 |
7 | Thales | フランス | 2022/12 | 40,355 |
8 | Heico Corp | アメリカ | 2022/10 | 31,083 |
9 | Howmet Aerospace Inc | アメリカ | 2022/12 | 25,420 |
10 | 三菱重工業 | 日本 | 2023/03 | 22,465 |
11 | Hindustan Aeronautics Ltd | インド | 2023/03 | 20,640 |
12 | SUBARU | 日本 | 2023/03 | 20,364 |
13 | China Avionics Systems Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 12,894 |
14 | Singapore Technologies Engineering Ltd | シンガポール | 2022/12 | 11,117 |
15 | Woodward Inc | アメリカ | 2022/09 | 9,924 |
16 | Curtiss-Wright Corp | アメリカ | 2022/12 | 8,802 |
17 | Leonardo SpA | イタリア | 2022/12 | 8,643 |
18 | Avic Heavy Machinery Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 7,096 |
19 | Avic Aviation High-Technology Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 6,303 |
20 | 川崎重工業 | 日本 | 2023/03 | 5,948 |
21 | AECC Aero-Engine Controls Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 5,926 |
22 | IHI | 日本 | 2023/03 | 5,912 |
23 | Korea Aerospace Industries Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 5,584 |
24 | AviChina Industry & Technology Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 5,289 |
25 | Moog Inc | アメリカ | 2022/09 | 4,884 |
26 | Spirit AeroSystems Holdings Inc | アメリカ | 2022/12 | 3,923 |
27 | Albany International Corp | アメリカ | 2022/12 | 3,707 |
28 | Crane Co | アメリカ | 2022/12 | 3,535 |
29 | Mercury Systems Inc | アメリカ | 2022/06 | 2,773 |
30 | Barnes Group Inc | アメリカ | 2022/12 | 2,737 |
31 | Zhejiang Wanfeng Auto Wheel Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 2,730 |
32 | SIA Engineering Co Ltd | シンガポール | 2023/03 | 2,720 |
33 | Aerospace Industrial Development Corpora | 台湾 | 2022/12 | 2,580 |
34 | AECC Aero Science and Technology Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,539 |
35 | Chengdu ALD Aviation Manufacturing Corp | 中国 | 2022/12 | 1,330 |
36 | Senior PLC | イギリス | 2022/12 | 1,129 |
37 | Xi’an ChenXiAviation Technology Corp Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,117 |
38 | Triumph Group Inc | アメリカ | 2023/03 | 1,068 |
39 | 新明和工業 | 日本 | 2023/03 | 952 |
40 | Kaman Corp | アメリカ | 2022/12 | 871 |
41 | Xinjiang Machinery Research Institute Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 866 |
42 | Ducommun Inc | アメリカ | 2022/12 | 846 |
43 | Astronics Corp | アメリカ | 2022/12 | 810 |
44 | OHB SE | ドイツ | 2022/12 | 782 |
45 | Sansera Engineering Ltd | インド | 2023/03 | 762 |
46 | SAM Engineering & Equipment (M) Bhd | マレーシア | 2022/03 | 730 |
47 | Beijing Andawell Science & Technology Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 664 |
48 | Beijing Emerging Eastern Aviation Equipment Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 634 |
49 | Heroux-Devtek Inc | カナダ | 2023/03 | 491 |
50 | Magellan Aerospace Corp | カナダ | 2022/12 | 460 |
51 | ジャムコ | 日本 | 2023/03 | 407 |
52 | FACC AG | オーストリア | 2022/12 | 404 |
53 | Firstec Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 226 |
54 | Avingtrans PLC | イギリス | 2022/05 | 224 |
55 | 東京計器 | 日本 | 2023/03 | 220 |
56 | Aero Win Technology Corporation | 台湾 | 2022/12 | 180 |
57 | AeroSpace Technology of Korea Inc | 大韓民国 | 2022/12 | 160 |
58 | Latecoere SA | フランス | 2021/12 | 140 |
59 | PT Garuda Maintenance Facility Aero Asia Tbk | インドネシア | 2022/12 | 138 |
60 | Magnate Technology Co Ltd | 台湾 | 2022/12 | 130 |
61 | Chaheng Precision Co Ltd | 台湾 | 2022/12 | 114 |
62 | Sogeclair SA | フランス | 2022/12 | 78 |
63 | Hizeaero Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 66 |
64 | CPI Aerostructures Inc | アメリカ | 2022/12 | 63 |
65 | A-Sonic Aerospace Ltd | シンガポール | 2022/12 | 49 |
66 | SIFCO Industries Inc | アメリカ | 2022/09 | 22 |
出典:各社プレスリリースなど
世界の航空機器会社ランキングの有用性
世界の航空機器会社ランキングは、多くの観点から有用性を持つと考えられます。
- 投資者にとって:ランキングは投資者が航空機器市場の動向を理解する上で貴重な情報を提供します。ランキング上位の企業は、一般的に業界でのリーダーシップと財務上の安定性を示しており、これが投資判断の一助となります。さらに、ランキングの動向や変化を追うことで、業界のトレンドや市場の変動を把握することが可能となります。
- 業界関係者にとって:航空機器メーカーやサプライヤー、サービスプロバイダーなどの業界関係者は、ランキングを参照することで競合他社のパフォーマンスを評価し、自社の位置付けを理解することができます。これにより、自社の戦略を調整したり、新たなビジネス機会を探したりするための情報が得られます。
- 消費者にとって:航空機器の購入者や航空会社などの消費者は、ランキングを利用して信頼できるサプライヤーを見つけることができます。製品の品質、信頼性、技術革新の能力などは、ランキング上位の企業であれば一般的に保証されることが多いです。
- 学者・研究者にとって:業界の動向、企業の成長パターン、市場の変動要因などを研究する学者や研究者にとって、ランキングは重要なデータソースとなります。
ただし、ランキングの有用性を最大限に活用するためには、ランキングがどのような基準で作成されているか(例えば、時価総額、売上高、純利益など)を理解することが重要です。そして、ランキングは一時的なスナップショットであり、業界の動向や企業のパフォーマンスを評価する際には、その他の要素(例えば、企業の戦略、市場環境、技術革新の能力など)も考慮する必要があります。
世界の航空機器会社ランキング:変化を与える要素
世界の航空機器会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
技術革新
新技術の導入や革新的な製品の開発は、企業の競争力を大幅に高めることができます。例えば、よりエネルギー効率の高いエンジンの開発や、人工知能を活用した航空機の制御システムなどは、企業のランキングを押し上げる可能性があります。
経済状況
経済の全般的な状況は航空旅行の需要に影響を及ぼし、これが航空機器会社の業績に反映されます。たとえば、経済が好調な時期は航空旅行の需要が増え、新たな航空機の需要が高まる傾向にあります。
政策・規制
国際的な貿易政策や規制の変化も影響を及ぼします。例えば、貿易戦争や関税の導入は部品のコストを増加させ、企業の利益を圧迫します。また、環境に対する規制強化は、環境に優しい技術へのシフトを余儀なくされ、これに対応できる企業が優位に立つ可能性があります。
企業の戦略
企業が取る戦略もランキングに影響を与えます。新市場への進出、効率的な生産ラインの確立、質の高いアフターサービスなど、成功した戦略は企業の評価を高めます。
市場の競争状況
市場の競争状況も重要です。新興企業の参入や既存企業間の競争激化は、企業間のランキングに変動をもたらす可能性があります。
災害・事故
航空機の事故や大規模な自然災害は、航空機需要や製造に影響を及ぼす可能性があります。また、パンデミックのような全球的な危機も、航空需要に大きな打撃を与え、企業のランキングに影響を与える可能性があります。
これらの要素は、どれも企業のランキングに影響を与える可能性がありますが、各企業がこれらの要素にどのように対応し、どのようにこれらの変化を機会に変えるかが、結果的に企業のランキングを左右することになります。
まとめ
ここで紹介した「2023年最新版:世界の航空機器会社ランキング時価総額TOP66」は、産業全体の動向を把握する一つの手段となります。それぞれの企業がどのような戦略を取り、どのような技術革新を行い、またどのように市場環境に適応しているかを理解することは、航空機器産業の未来を予測する上で非常に有益です。
ランキングの変動は、新たな技術進化、市場の競争状況、政策・規制の変更、経済状況など、多岐にわたる要素によって引き起こされます。これらを踏まえつつ、各企業の成長と航空機器産業の進化をこれからも注視していきましょう。