「食」は私たちの生活の基本であり、その源となる農業は世界の人々の命を支える重要な産業です。そして、農業を支える重要な役割を果たしているのが種苗会社です。彼らは科学的な手法を用いて新しい種類の作物を生み出したり、既存の作物を改良したりしています。

また、気候変動や人口増加といった社会的課題に対応するための新しい種類の種苗の開発も進めています。そこで本日は、2023年最新版となる「世界の種苗会社ランキング時価総額TOP40」をご紹介します。

世界の種苗会社ランキング:時価総額TOP40

下記の世界の種苗会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。

このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。

  • 企業の国籍に関する特徴:企業の多くはインドと中国に本社があります。特にランキング下位ではインドの企業が多くを占めています。ランキング上位ではドイツとアメリカの企業が高い時価総額を有しています。Bayer AG(1位)とCorteva Inc(2位)は、それぞれ70,187億円と53,987億円の時価総額を誇っています。

  • 時価総額に関する特徴:時価総額は非常に広い範囲に渡っています。最大は1位のBayer AGの70,187億円で、最小は38-40位の企業で1億円です。この大きな格差は、各企業の規模や市場での地位の違いを反映している可能性があります。インドや中国の企業は数が多いものの、時価総額では上位に位置している企業は少ないです。これは、これらの国の企業がまだ成長途中であるか、あるいは国内市場に主に焦点を当てているためかもしれません。

  • 業界の特徴:全ての企業は農業や種苗などの関連業界で事業を展開しています。これは業界全体の特徴として、時価総額の大きさが直接的に企業の規模や販売量と一致しない場合があることを示しています。一部の企業は特定の地域や種子の種類に特化しており、時価総額はそれほど大きくないかもしれませんが、その地域や市場では非常に重要な役割を果たしている可能性があります。

このような観察は、各企業がそれぞれ異なる市場環境、規模、戦略を持っていることを示しています。それぞれの企業がどのように競争し、市場を開拓していくのかを理解するためには、さらに詳細な情報が必要です。

以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。

1位:Bayer AG(ドイツ)

Bayer AGは、医薬品、消費者保健製品、農業製品などの幅広い分野で事業を展開する多国籍企業です。その農業部門では、農薬と遺伝子組み換え種子の製造に特化しており、世界的な市場シェアを持っています。

大規模な研究開発投資や積極的なM&A戦略(Monsantoの買収など)により、競争力を保ち続けています。このような戦略が時価総額ランキング1位の位置づけに寄与しています。

2位:Corteva Inc(アメリカ)

Cortevaは、農業科学と技術を専門とするアメリカの多国籍企業です。Cortevaは、種子、農薬、デジタルソリューションを提供し、世界中の農家が持続可能で生産的な作物生産を行うことを支援しています。

同社はDowDuPontから分離した農業部門であり、長い歴史と強固な製品ポートフォリオを持っています。その広範な市場存在感とブランド力が時価総額ランキング2位を支えています。

3位:UPL Ltd(インド)

UPLは、インドを拠点とする世界的なジェネリック農薬製造業者です。製品ラインは殺虫剤、除草剤、殺菌剤など多岐にわたります。

高品質なジェネリック製品と効率的な生産手法により、高い競争力を持っています。その全球展開と製品ラインの多様性が、ランキング3位の高い時価総額を支えています。

4位:Yuan Longping High-tech Agriculture Co Ltd(中国)

この会社は、中国の農業科学者である袁隆平氏によって創設され、水稲の超高収量品種の研究開発と普及に重点を置いています。

袁隆平氏の革新的な遺伝学の手法と高収益作物の開発は、中国の食糧安全保障に貢献し、世界的な評価を得ています。このような独自の技術力と中国の大規模な市場が、高い時価総額を生み出しています。

5位:Bayer CropScience Ltd(インド)

この会社は、Bayer AGの子会社であり、農業と環境科学に焦点を当てています。製品ラインは種子、農薬、プラントバイオテクノロジーに及びます。

Bayer AGの強力なブランドと研究開発能力を背景に、インドという大規模で成長する農業市場での競争力を持っています。これらが高い時価総額とランキング5位の地位を支えています。

【世界の種苗会社ランキング:時価総額TOP40リスト】

※対象となる種苗会社として「上場企業」かつ「種苗業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年6月28日)の株価および為替レートで算出

ランキング企業名所在国決算期 (決算期)時価総額(億円)
1Bayer AGドイツ2022/1270,187
2Corteva Incアメリカ2022/1253,987
3UPL Ltdインド2023/038,302
4Yuan Longping High-tech Agriculture Co Ltd中国2022/123,811
5Bayer CropScience Ltdインド2023/033,176
6Central Garden & Pet Coアメリカ2022/092,821
7KWS SAAT SE & Co KGaAドイツ2022/062,637
8Shandong Denghai Seeds Co Ltd中国2022/122,540
9Vilmorin & Cieフランス2022/062,040
10サカタのタネ日本2022/051,972
11Winall Hi-tech Seed Co Ltd中国2022/121,859
12Zhongnongfa Seed Industry Group Co Ltd中国2022/121,769
13Gansu Dunhuang Seed Group Co Ltd中国2022/12644
14Wanxiang Doneed Co Ltd中国2022/12637
15Rallis India Ltdインド2023/03623
16Hainan Shennong Technology Co Ltd中国2022/12618
17Kaveri Seed Co Ltdインド2023/03467
18PT BISI International Tbkインドネシア2022/12419
19Gufic Biosciences Ltdインド2023/03362
20カネコ種苗日本2022/05172
21Agripure Holdings PCLタイ2022/12169
22Nong Woo Bio Co Ltd大韓民国2022/12147
23Graines Voltzフランス2022/0984
24Vietnam National Seed Group JSCベトナム2022/1269
25Nath Bio-Genes (India) Ltdインド2023/0358
26Equippp Social Impact Technologies Ltdインド2023/0350
27ベルグアース日本2022/1048
28Raghuvansh Agrofarms Ltdインド2023/0343
29Asia Seed Co Ltd大韓民国2022/0940
30Mangalam Seeds Ltdインド2023/0339
31Origin Agritech Ltd中国2022/0938
32JK Agri Genetics Ltdインド2023/0334
33Basant Agro-Tech India Ltdインド2023/0331
34ホーブ日本2022/0614
35NHC Foods Ltdインド2023/0310
36Unique Organics Ltdインド2023/033
37Techindia Nirman Ltdインド2023/032
38Shree Ganesh Elastoplast Ltdインド2023/031
39Omega Ag-Seeds (Punjab) Ltdインド2022/031
40R J Bio-Tech Ltdインド2022/031

出典:各社プレスリリースなど

世界の種苗会社ランキングの有用性

種苗会社の世界ランキングを理解することは、農業産業や関連産業にとって多くの価値を持っています。以下、その有用性について詳しく考察します。

  • 業界のトレンド理解: ランキングは、現在どの企業が優位であり、業界全体の傾向を理解する手助けとなります。たとえば、大手企業が投資を集中している地域、製品カテゴリ、または技術など、その戦略の一端を読み解くことができます。

  • 競合分析: 企業間の相対的なパフォーマンスを比較し、競合状況を明確に理解するための参考資料となります。また、自社の地位と他社とのギャップを確認することで、戦略の見直しや新たな事業展開のヒントを得ることができます。

  • 投資判断の補助: 投資家にとって、ランキングは種苗業界の投資判断を下す際の重要な参考情報となります。企業の規模、成長性、地位などを比較検討し、投資先を選定します。

  • 業界の成熟度と将来性: ランキングは、業界の規模、成長性、競争状況といった観点からその成熟度と将来性を示します。これは政策立案者や研究者にとっても有益な情報で、農業政策の策定や研究開発の方向性を見定める際の参考となります。

  • M&Aの機会: ランキングは、M&Aの可能性を探る際の重要な情報源となります。企業の時価総額や業績は、その買収価格や取引成立の可能性を示す一因となります。また、規模が小さくても独自の技術や地域ネットワークを持つ企業を見つけるきっかけにもなります。

これらの点から、世界の種苗会社ランキングは、多様な視点からの有益な情報を提供します。

世界の種苗会社ランキング:変化を与える要素

世界の種苗会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。

技術革新

農業分野では、品種改良、遺伝子組み換え技術、デジタル農業などの技術革新が盛んに行われています。これらの技術をいち早く取り入れて新製品を開発・販売できる企業は、市場での競争優位を築くことができます。

市場環境の変化

人口増加、都市化、気候変動など、社会的・環境的な大きな変化は、農業ニーズに大きな影響を与えます。これらの変化を見越し、対応する製品を開発できる企業は、ランキング上位を維持または上昇する可能性があります。

規制環境の変化

GMO(遺伝子組み換え作物)などの新技術は、国や地域によって規制状況が大きく異なります。これらの規制の変化や、新たな規制が導入されることは、企業の業績に直接影響を与えます。

M&A(合併・買収)

企業が他の企業を買収したり、合併したりすることで、規模が拡大し、製品ラインアップや市場範囲が広がるため、ランキングに影響を与えます。

研究開発の成果

新しい種苗の開発や、耐病性や収穫量を改良した品種の開発など、研究開発の成果は企業の競争力を高め、時価総額や売上高を増加させます。

企業の財務状況

企業の利益性や財務安定性は、投資家の評価に影響を与え、株価や時価総額に反映されます。経営の質や財務の健全性は、ランキングの位置を左右する重要な要素です。

これらの要素は、企業の業績だけでなく、その競争力や将来性にも影響を与えるため、種苗会社のランキングに大きな変動をもたらすことがあります。

まとめ

今回ご紹介したランキングを通じて、種苗産業の現状と、その中で各企業がどのような役割を果たしているのか、また、どのような要素がランキングの変動に影響を与えるのかについてご理解いただけたことと思います。

農業が直面している様々な課題を解決し、持続可能な未来を作り出すためには、種苗会社の役割がますます重要となってきます。各企業の取り組みや革新的な技術開発を通じて、農業の発展とともに、我々の生活がより豊かになることを期待します。引き続き世界の種苗産業の動向に注目してまいりましょう。

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