グローバルゲーム業界の地図が塗り替わりつつある中で、ネクソンはかつてない転換期を迎えている。創業から30年、同社は『アラド戦記』や『メイプルストーリー』といった不朽のIP(知的財産)を軸に、安定したキャッシュフローを維持してきた。しかし市場環境の変化、モバイルシフトの加速、そして地政学的リスクの高まりは、同社に抜本的な構造改革を迫った。

2024年、経営トップに就任したイ・ジョンホンCEOが打ち出したのは「垂直的成長」と「水平的成長」を二本柱とする新戦略である。前者は既存IPの深化、後者は新規IP創出とグローバル展開による多様化を意味する。この戦略の背景には、韓国・中国市場への過度な依存という構造的課題と、欧米AAA市場への挑戦という高いハードルが存在する。

それでも、ネクソンは財務的な盤石さと長年培ったライブ運用能力を武器に、新たな成長軌道へ踏み出した。本稿では、決算データやアナリスト評価を踏まえながら、同社の戦略的進化と未来の成長可能性を徹底的に検証する。

ネクソン再浮上の背景――新リーダー体制が描く成長ビジョン

イ・ジョンホンCEOの就任は、ネクソンにとって経営転換点となった出来事である。前任のオーウェン・マホニー氏が財務戦略を軸に企業価値の安定を追求したのに対し、イ氏はプロダクト起点の「現場主義経営」へと舵を切った。彼はネクソン・コリア出身の生え抜きであり、20年以上にわたり現場でIP開発を担ってきた人物である。この背景が、ネクソンの次世代戦略「垂直的成長」と「水平的成長」に直結している。

ネクソンの強みは、他社に比べて圧倒的に長寿命なIP群にある。『メイプルストーリー』は2003年のサービス開始から20年以上が経つが、2025年に入りPCカフェ市場で過去最高のシェアを更新するなど、依然として主力IPとしての地位を維持している。一方、『アラド戦記』も2025年第2四半期に前年同期比132%増という驚異的な成長を記録した。これらの復活は、単なるゲーム更新ではなく、イCEOが推進するライブ運用の刷新とIP再設計の成果である。

新体制が掲げる経営方針は、「IPの寿命を延ばし、世界市場で新たな成長を創出する」ことである。そのための具体的な施策が以下の3点に集約される。

・既存IPの再活性化による収益基盤の安定化(垂直的成長)
・新規IPおよび欧米市場開拓による多様化(水平的成長)
・開発力とマーケティング力を一体化したグローバル運営体制の構築

この方向転換は、単に事業領域の拡張を意味しない。ネクソンが“ゲーム企業”から“IP経済圏創出企業”へ進化する布石なのである。特に、欧米スタジオであるEmbark Studiosの完全子会社化や、映画製作会社AGBOへの巨額投資は、IPをメディア横断的に展開する「エンターテインメント総合企業」への転身を意識した戦略的布陣といえる。

こうした経営姿勢は市場でも評価されつつあり、2025年のアナリスト・コンセンサスでは依然「中立」評価ながら、強気買いの比率が増加している。財務基盤の強さ(自己資本比率81%、営業キャッシュフロー1,000億円超)と、CEOの現場理解を兼ね備えた体制は、持続的な再成長への布石として高い注目を集めている。

最終的にイCEOが描くのは、「韓国と日本のゲーム文化を融合し、世界市場に通用するIPブランドを生み出す」という構想である。財務安定性を土台に、創造性を解放する経営モデルへと変貌するこの動きこそ、ネクソンが“再浮上のフェーズ”に入った最大の証左である。

IP戦略の核心:「垂直的成長」と「水平的成長」の実像

イ・ジョンホン体制の戦略の中核を成すのが、二本柱のIP成長戦略である。垂直的成長は既存IPの深化、水平的成長は新規IPの拡張を意味し、この二軸がネクソンの未来の収益構造を支える。

まず垂直的成長とは、『アラド戦記』『メイプルストーリー』『FC』シリーズといった既存フランチャイズの価値最大化を狙う戦略である。これは単なるリメイクやアップデートではなく、ユーザー体験そのものを進化させる「再設計」に近い。『メイプルストーリー』では、プレイヤー主導のコンテンツ創造を可能にする『MapleStory Worlds』が導入され、前年比でユーザー数が7倍に拡大した。『アラド戦記』ではAIによる難易度調整機能や、リアルタイム・レイド運用の最適化によって、長期離脱ユーザーの復帰率が急上昇している。

一方、水平的成長とは、ポートフォリオ多様化の推進を意味する。『マビノギモバイル』はその象徴であり、農業や裁縫など“生活系MMO”という新たなジャンルを確立した。特に女性プレイヤー比率が46%と高く、MMORPG市場の裾野拡大に成功した。また、欧米市場を狙った『The First Descendant』や『THE FINALS』といったタイトル群は、ネクソンのIPがアジア市場を超える挑戦の第一歩である。

これらの動きの背景には、「収益の地域・IP依存度を分散させる」という経営課題がある。現状、同社の売上の約85%が韓国・中国に集中しており、規制・為替リスクに脆弱である。この構造を打破するために、ネクソンは欧米AAA市場への参入を急ピッチで進めている。

表:ネクソンの二軸戦略の要約

戦略軸目的主な施策代表タイトル成果指標
垂直的成長既存IPの深化長期運用・アップデート強化メイプルストーリー、アラド戦記PC市場シェア拡大、収益安定化
水平的成長新規IP創出と多様化新スタジオ設立・海外展開The First Descendant、マビノギモバイル欧米市場進出、ポートフォリオ拡張

この二軸は単なる拡大戦略ではなく、ネクソンのリスクマネジメントそのものでもある。IP集中・地域集中という構造的リスクを、開発・市場の多層化によって吸収する意図が明確だ。

さらに、AGBOとの資本提携によるトランスメディア展開は、IPをゲーム以外の領域――映画・ドラマ・アニメーションへと拡張する次の段階である。これにより、ネクソンは「プレイヤー人口」だけでなく「IP視聴人口」という新たな市場を開拓する。

このように垂直と水平の二軸は、短期的な利益拡大策ではなく、ネクソンを100年続くIP企業へと進化させる長期戦略の骨格を成している。

財務分析が示す強固なキャッシュ創出構造とリスク要因

ネクソンの財務体質は、ゲーム業界の中でも極めて健全である。2024年12月期における売上収益は4,462億円、営業利益は1,241億円を記録し、自己資本比率は81%超という高水準を維持している。これは、安定したキャッシュフローを継続的に生み出せる体質の証左である。特に営業キャッシュフローは1,009億円と堅調であり、事業投資と株主還元の双方を可能にする財務余力を確保している。

一方で、2025年度に入ってからは純利益の変動が目立ち、為替差損が収益を圧迫した。米ドル建て資産の評価損が大きく影響し、表面的には利益率が低下している。しかし、これは本業の不調ではなく、為替変動という非営業要因による一時的な減益であり、事業の競争力そのものは揺らいでいない

ネクソンの財務構造を支えるもう一つの要素は、地域別・プラットフォーム別の収益分散である。2025年上期の地域別業績を見ると、韓国市場が売上2120億円・利益837億円と中核を占めるが、北米は45%増、日本は減収ながら構造改革を進行中である。中国市場は減速したものの、他地域での成長が全体を下支えしている。

地域売上収益(百万円)前年同期比セグメント利益(百万円)
韓国212,085-0.1%83,746
北米14,078+45.3%1,144
日本2,679-7.6%-1,844
中国815-56.3%-112
その他3,127-24.6%-4,956

この地域構造は一見リスクを孕むが、裏を返せば収益多角化の余地が大きいとも言える。韓国・中国に依存する現状を打破するために、欧米市場でのAAAタイトル開発が急務となっているのだ。

さらに注目すべきは、ネクソンの「安定キャッシュ+攻めの投資」モデルである。安定的に稼ぐ既存IP群から得た利益を、新規開発や株主還元(自己株取得1,000億円規模)に再配分している。成熟市場の収益をベンチャー的投資に再循環させる構造は、リスク分散と持続的成長を両立する巧妙な設計である。

為替・地政学リスク・競争激化といった外部要因は無視できないが、ネクソンの強固な財務基盤はそれらを吸収するクッションとして機能する。収益の一時的な揺らぎの背後に、長期的な投資戦略が明確に存在している点が、他社との差別化要因である。

主要IPの復活劇――『アラド戦記』『メイプルストーリー』『ブルーアーカイブ』の再評価

ネクソンの競争力の核心は、単発のヒットではなく「IPの長寿命化と再成長力」にある。『アラド戦記』『メイプルストーリー』『ブルーアーカイブ』という三本柱は、それぞれ異なる市場で成功を収めつつも、共通してライブ運用能力の高さが収益の源泉となっている。

『アラド戦記』は、2005年のリリース以来20年近く経過しているが、韓国での2025年第2四半期業績は前年同期比132%増と驚異的な伸びを示した。新クラス導入と季節イベントによる高頻度アップデートが功を奏し、若年層のプレイヤーが急増している。一方、中国では『アラド戦記モバイル』が苦戦し、ユーザー定着率が課題となったが、Tencentとの共同開発による新コンテンツ投入が巻き返しの鍵を握る。

『メイプルストーリー』は、長期運用の成功モデルである。韓国PC市場で再びトップシェアを獲得し、収益面でも過去最高水準を更新した。特筆すべきは、派生プラットフォーム『MapleStory Worlds』の急成長で、ユーザー数は前年比7倍超に達した。これは、プレイヤー自身がゲームを創造できるというUGC(User Generated Content)戦略の成功であり、“遊ぶ”から“創る”へと進化したIPの象徴といえる。

また、『ブルーアーカイブ』は日本発のIPとして異彩を放つ。重厚なストーリーとキャラクター表現が共感を呼び、SNSや二次創作を通じてファン層を拡大した。特に「エデン条約編」以降のシナリオが国内外で高評価を得ており、運営側の柔軟なユーザー対応が高いロイヤルティを生み出している。

箇条書きで整理すると、各IPの特徴は以下の通りである。

・アラド戦記:PC市場の復活象徴。ライブ更新頻度とコミュニティ維持力が強み
・メイプルストーリー:UGC化によるIP再成長モデル。次世代プレイヤー層を獲得
・ブルーアーカイブ:物語性とファン文化の融合によるブランド力拡大

これら三大IPは、単なる収益源ではなく、ネクソンの経営哲学を体現している。すなわち「既存を捨てずに革新する」という理念である。長寿命IPの再構築を通じて、新規開発リスクを抑えながら安定的成長を確保する仕組みが形成されているのだ。

ネクソンの真の強みは、IPを育て、時代ごとに再定義できる運営力にある。ゲーム業界が“消費型ヒット”を追いがちな中、ネクソンは“継続型ヒット”という独自の成功方程式を築きつつある。

グローバル進出の最前線:『The First Descendant』とEmbark Studiosの挑戦

ネクソンが掲げる「水平的成長」戦略の象徴が、欧米市場向けに投入されたAAA級タイトル群である。その中核を担うのが『The First Descendant』とスウェーデンの開発拠点Embark Studiosによる『THE FINALS』『ARC Raiders』である。これらのタイトル群は、単なる新規IPではなく、ネクソンがアジア中心企業から真のグローバルパブリッシャーへと変貌するための試金石となっている。

『The First Descendant』は、Unreal Engine 5によって開発されたネクソン初の本格的ルーターシューターであり、欧米市場での競合は『Destiny 2』や『Warframe』といった世界的ヒット作である。リリース直後にはSteamで売上ランキング1位を獲得し、同時接続ユーザー数26万人を突破するなど注目を集めた。プレイヤーからは「戦闘の爽快感」「グラフィックの完成度」「キャラクターの多様性」といった肯定的な評価が相次いだ一方で、ストーリーの浅さやミッション構造の単調さといった改善点も指摘された。この結果は、ネクソンが初めて欧米プレイヤーの嗜好を正面から受け止め、学習サイクルを構築する重要なフェーズにあることを示している。

一方、Embark Studiosが開発する『THE FINALS』は、物理演算を駆使した革新的なバトルシステムが高い評価を受け、サービス開始直後には欧米の主要配信プラットフォームで人気ランキング上位を維持した。さらに2025年には中国市場でのライセンスも獲得し、再成長軌道に入っている。『ARC Raiders』も10月末のグローバルリリースが予定されており、PvPvE形式のサバイバルシューターとして高い期待を集めている。

ネクソンが欧米AAA市場で勝負する背景には、地域集中リスクの打破がある。2024年度の売上の約85%を韓国・中国が占める構造を変革しなければ、企業の持続的成長は難しい。欧米市場では、F2P(基本無料)モデルとライブサービスの運営力というネクソンの強みが通用する余地がある。

箇条書きで整理すると、ネクソンの欧米展開は次のような意図を持つ。

・韓中依存構造からの脱却によるリスク分散
・グローバルIP創出によるブランド価値の再定義
・欧米開発拠点の活用による制作ノウハウの獲得
・AAA級品質を実現する技術スタックの確立(Unreal Engine 5など)

これらの挑戦は莫大な投資を伴うが、長期的にはIP資産の多様化と企業価値の再評価につながる。ネクソンの欧米戦略は、単なる地域拡大ではなく、事業ポートフォリオそのものを再構築する大胆な実験である。

トランスメディア戦略の衝撃――AGBO提携が示すエンタメ統合構想

ネクソンが次に狙うのは、ゲームの枠を超えた「トランスメディア・エンターテインメント企業」への進化である。その鍵を握るのが、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』の監督として知られるルッソ兄弟の制作会社AGBOへの戦略的出資である。2022年以降、ネクソンはAGBOの株式38%を取得し、最大5億ドル規模の投資を実施した。これは単なる資本提携ではなく、ネクソンIPを映像・ドラマ・アニメなど他領域へ拡張するトランスメディア戦略の中核に位置づけられている。

ネクソンの狙いは、ゲーム体験と映像体験を統合することで、IPのライフサイクルを劇的に延ばすことにある。たとえば、人気タイトル『メイプルストーリー』や『ブルーアーカイブ』を題材にした映像化プロジェクトが構想段階にあり、ゲーム内ストーリーと映画・シリーズ作品を相互に行き来できるような仕組みを検討している。これにより、ファンは単なるプレイヤーではなく、「IP世界の住人」として没入する新しい消費者層へと進化する。

この動きは、世界のメディア産業で進む「IPエコシステム化」の潮流と軌を一にする。ディズニーがマーベルやスター・ウォーズの宇宙を横断的に展開するように、ネクソンも自社IPを多次元的に展開しようとしている。特にAGBOは、シネマティックな世界観構築力に優れ、ネクソンの強みである長期運営力と組み合わせることで、**「物語が進化し続けるIPプラットフォーム」**を実現できる可能性がある。

この提携は、ネクソンの企業ブランドにも大きな変化をもたらす。従来の「オンラインゲーム企業」という枠を越え、「総合IPプロデューサー」としての地位を確立することが可能になる。財務的にも、映像事業が成功すれば高収益な版権ビジネスとして寄与し、為替や市場依存リスクの軽減にもつながる。

AGBOとの協業による成果はまだ初期段階だが、両社の開発チームはすでに複数の新企画を進行中である。ネクソンが“ゲームを起点にしたエンタメ複合企業”へと進化できるか否かは、このトランスメディア戦略の成否にかかっている。 それは単なるIP拡張ではなく、ネクソンという企業が「ストーリーテリング企業」へと再定義される挑戦なのである。

競争環境と市場ポジション:日本勢との決定的な違い

ネクソンの特徴は、同じく国内上場する大手ゲーム企業群とは異なる「グローバル収益構造」と「F2P(基本無料)運営モデル」にある。売上高ではソニー、任天堂、バンダイナムコに続く国内6位(4,233億円)に位置し、コナミやスクウェア・エニックスを上回る規模を誇るが、その収益源の約99%は海外で生み出されている。この構造こそが、ネクソンを他の日本勢とは一線を画す存在にしている。

日本のゲーム大手がハードウェアやパッケージ販売を主軸とするのに対し、ネクソンは創業以来オンラインゲーム専業として成長してきた。F2Pモデルを世界で初めて商業的に成功させた企業として知られ、課金・運営・ユーザーコミュニティの三位一体構造を磨き上げてきた。『メイプルストーリー』や『アラド戦記』など、10年以上にわたり運営されるタイトルが依然として収益の中核を占めることは、その運営力の強さを示すものだ。

また、利益率の高さも注目に値する。2024年度の営業利益率は27.8%と、任天堂(30.0%前後)に匹敵し、セガサミー(15%台)やコナミ(20%未満)を大きく上回る。ハードを持たず、開発・運営・配信を自社内で完結できる構造が固定費を抑え、経済変動に左右されにくい高収益体質を支えている。

さらに、他社との最大の違いは「ゲームの寿命」にある。多くのパブリッシャーが年間ヒットを追うのに対し、ネクソンは1タイトルを10年、20年単位で運営し続ける長期戦略を採用している。これにより、安定的な収益と強固なコミュニティを維持している。

主要企業売上高(億円)主力モデル特徴
ソニー20,065ハード+パッケージグローバルブランド力
任天堂16,717ハード+ファミリーIP自社IP完結型
バンダイナムコ10,502キャラIP・玩具連携多角的メディア展開
セガサミー4,678パチスロ+ゲーム国内依存構造
ネクソン4,233F2Pライブ運営海外収益主導・運営力特化

この表からも明らかなように、ネクソンは「日本企業」でありながら事業実態はむしろアジア発グローバル企業に近い。日本市場におけるプレゼンスは限定的であるが、それは戦略的選択であり、海外収益を最大化する構造を確立した結果である。

アナリストの間では「国内で最もグローバルに稼ぐゲーム企業」との評価も多く、同社のポジションは日本市場という枠を超えた特異な存在感を放っている。ハード依存型から脱却できずにいる他社に対し、ネクソンはソフトとIP運営力だけで世界市場に挑む、**“プラットフォームに縛られない成長モデル”**を体現している。

ネクソンの未来を占うカタリストとリスクシナリオ

ネクソンの将来を左右する鍵は、既存フランチャイズの維持と新規IPの成功の両立にある。特に、欧米市場を狙った『The First Descendant』やEmbark Studiosの『ARC Raiders』の成否は、同社がアジア中心企業から真のグローバルプレイヤーへ脱皮できるかを占う指標となる。

短期的な成長カタリストとしては以下の4点が挙げられる。

・欧米AAAタイトルのヒットによる新収益源の確立
・『メイプルストーリー』『アラド戦記』など既存IPの再成長
・『マビノギモバイル』『ブルーアーカイブ』の海外展開強化
・AGBOとの提携による映像化・トランスメディア戦略の実現

これらが順調に進展すれば、企業価値は再評価され、株価にも上昇圧力がかかる。アナリスト平均目標株価は3,177円(2025年10月時点)と、現行株価に対して約5%の上昇余地を見込む。長期的には、**トランスメディア展開による“ゲームを超えたIPブランド化”**が実現すれば、収益構造は劇的に変わる可能性がある。

一方で、リスクも明確である。中国市場への依存度は依然として高く、規制変更や為替変動が業績を直撃する可能性がある。また、欧米AAA市場は競争が激しく、開発費高騰が利益を圧迫するリスクも存在する。『The First Descendant』の初期評価が示すように、欧米プレイヤー層の嗜好に完全に適応するには時間とコストを要する。

要素成長要因リスク要因
欧米展開新市場開拓・ブランド向上高開発費・文化的適応の難しさ
既存IP安定収益とファン層維持ユーザー高齢化・飽和リスク
モバイルグローバル展開の拡張余地市場飽和・競争激化
財務体質高キャッシュフローと資本余力為替差損・投資効率悪化

ネクソンの未来を左右するのは、これらのリスクをいかに制御しながら、成長機会を確実に実らせるかにある。イ・ジョンホンCEOが掲げる「垂直×水平」の二軸戦略は、単なる拡張ではなく、**安定と挑戦のバランスを取る“長期持続型成長モデル”**である。

結論として、ネクソンは確かな財務基盤を背景に、グローバルIP戦略の第二幕を迎えている。次の12〜24ヶ月は、新作群とトランスメディア展開の成果が可視化される「真価を問われる期間」となるだろう。

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