編集部
2023年における世界の食品用素材会社ランキングについてご紹介します。このランキングは各社の時価総額を基に作成されており、その時点での世界の食品用素材産業の動向と競争状況を理解するうえで非常に有用な情報を提供します。
なお、ランキングは業界全体の動きを示すための一部分に過ぎませんが、企業の財務健全性、規模、成長性といった側面を把握するための参考点となるでしょう。今回はランキング上位21社を見ていきましょう。
世界の食品用素材会社ランキング：時価総額TOP21
下記の世界の食品用素材会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 地域の分布：ランキング上位には、ヨーロッパ、アメリカ、日本の企業が多く含まれています。特に、日本の企業が多数を占めていることが特徴的です。ただし、時価総額で見ると、日本の企業は大半が下位に位置しており、一方でヨーロッパとアメリカの企業が上位を占めています。
- 時価総額：時価総額に関しては、Givaudan SA（スイス）が最も高く、有機合成薬品工業（日本）が最も低いことが分かります。また、時価総額には大きな差があり、上位企業の時価総額は下位企業のそれを大きく上回っています。
- 業種：ランキングに含まれる企業は、食品やフレーバー、香料などの分野で活動していることが多く、これらの業界では、独自の製品や技術を持つ大企業が高い時価総額を持つ傾向にあります。
以上の分析から、このランキングは食品やフレーバー、香料などの分野で活動する企業の時価総額に基づいており、各企業の規模や地域、決算期などによる差が見られます。また、日本企業は数においては多いものの、時価総額では海外の大手企業に比べて劣っていることが見受けられます。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位：Givaudan SA（スイス）
Givaudanは香料および食品フレーバーの分野で全球リーダーの1つであり、その製品は食品、飲料、消費者製品に広く利用されています。
その成功は、顧客との強固な関係、持続可能な製品開発への取り組み、そして幅広い分野にわたる革新的な技術によるものです。
2位：味の素（日本）
味の素は、アミノ酸を主体とした製品を提供することで知られており、特に「うま味」の研究と製品化で成功を収めています。
その成功は、アミノ酸の包括的な研究とその成果を商品化する能力、そしてその製品が日本国内外で広く認知されていることによるものです。
3位：International Flavors & Fragrances Inc（アメリカ）
IFFは、食品・飲料、パーソナルケア、洗濯・家庭用品の分野で香料とフレーバーを提供しています。
多岐にわたる業界と顧客に対する広範な提供能力と、技術開発への投資により、IFFは時価総額ランキングで高い位置を確保しています。
4位：Kerry Group PLC（アイルランド）
Kerry Groupは、食品・飲料産業に向けて食品成分とフレーバーを提供しています。また、消費者向け食品も扱っています。
同社の成功は、革新的なソリューションと持続可能な製品開発への強いコミットメントによるものです。
5位：Symrise AG（ドイツ）
Symriseは香料、フレーバー、食品、栄養製品などを製造しています。
技術的な専門知識と、多岐にわたる市場での深い洞察力により、高品質で持続可能な製品を供給する能力によりランキング上位に位置しています。
これらの企業がランキング上位に位置している理由は、高品質な製品やサービスの提供、持続可能な製品開発と革新への強い取り組み、そして幅広い市場への製品供給能力にあります。また、これらの企業はそれぞれが独自の強みと専門知識を持っており、その分野でのリーダーシップを維持し続けています。
【世界の食品用素材会社ランキング：時価総額TOP21リスト】
※対象となる食品用素材社として「上場企業」かつ「食品用素材業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点（2023年6月28日）の株価および為替レートで算出
| ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額（億円） |
| 1 | Givaudan SA | スイス | 2022/12 | 38,674 |
| 2 | 味の素 | 日本 | 2023/03 | 29,992 |
| 3 | International Flavors & Fragrances Inc | アメリカ | 2022/12 | 25,483 |
| 4 | Kerry Group PLC | アイルランド | 2022/12 | 21,807 |
| 5 | Symrise AG | ドイツ | 2022/12 | 18,207 |
| 6 | Novozymes A/S | デンマーク | 2022/12 | 16,593 |
| 7 | Chr. Hansen Holding A/S | デンマーク | 2022/08 | 11,629 |
| 8 | Ingredion Inc | アメリカ | 2022/12 | 9,123 |
| 9 | Balchem Corp | アメリカ | 2022/12 | 5,516 |
| 10 | Tate & Lyle PLC | イギリス | 2023/03 | 5,027 |
| 11 | Sensient Technologies Corp | アメリカ | 2022/12 | 3,899 |
| 12 | キユーピー | 日本 | 2022/11 | 3,325 |
| 13 | Corbion NV | オランダ | 2022/12 | 2,089 |
| 14 | 扶桑化学工業 | 日本 | 2023/03 | 1,491 |
| 15 | Koninklijke DSM NV | オランダ | 2021/12 | 957 |
| 16 | 理研ビタミン | 日本 | 2023/03 | 714 |
| 17 | 太陽化学 | 日本 | 2023/03 | 360 |
| 18 | 新田ゼラチン | 日本 | 2023/03 | 133 |
| 19 | ニッピ | 日本 | 2023/03 | 106 |
| 20 | 焼津水産化学工業 | 日本 | 2023/03 | 94 |
| 21 | 有機合成薬品工業 | 日本 | 2023/03 | 68 |
出典：各社プレスリリースなど
世界の食品用素材会社ランキングの有用性
食品用素材会社のランキングを参照することで、以下のような有用性があります。
- 業界の理解：ランキングを見ることで、どの企業が業界をリードしているのか、どの地域が食品素材産業において強いのか、どの企業が成長しているのかなど、業界全体の動向や傾向を把握することが可能です。
- 投資判断：時価総額や企業の順位を元に、投資家は投資判断の一助とすることができます。上位の企業は安定したパフォーマンスを発揮していると推測されるため、安全な投資対象となる可能性があります。
- ビジネスチャンス：新製品開発や新規ビジネスの立ち上げの際には、ランキング上位の企業の製品や戦略を参考にすることで、市場への適応や成功の可能性を高めることができます。
- 競争分析：企業自身が自社の位置を確認し、競争状況を把握するためにランキングを利用することができます。これは、市場のシェア、成長のペース、競争優位性などを評価する上で非常に重要な情報となります。
- 市場トレンドの把握：ランキングを時間をかけて追跡することで、市場のトレンドや業界内での力関係のシフトを把握することが可能となります。これは、将来のビジネス戦略を立てる際の重要なインサイトを提供します。
以上のように、食品用素材会社のランキングは、業界の理解、投資判断、ビジネスチャンスの発掘、競争分析、市場トレンドの把握といった多様な観点から有用な情報を提供することが可能です。
世界の食品用素材会社ランキング：変化を与える要素
世界の食品用素材会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
革新的な技術開発
新しい食品技術や製品開発が成功した場合、それは企業の業績と時価総額に直接影響を及ぼします。例えば、植物由来のタンパク質製品やラボ肉の開発などは、食品素材業界に革新をもたらしています。
規制と法律
食品安全に関する法律や規制の変更は、企業の運営に大きな影響を与えます。特に、食品添加物に対する規制やラベル表示要件の変更は、食品用素材の製造業者に直接影響を及ぼします。
消費者の嗜好の変化
消費者の嗜好や消費トレンドの変化は、食品用素材企業の業績に大きな影響を与えます。例えば、健康志向、オーガニックやナチュラルな製品への需要の増加、植物ベースの食品へのシフトなどは、食品用素材の市場に大きな変化をもたらしています。
マクロ経済の変動
為替レートや原材料の価格、経済の成長や衰退など、マクロ経済の変動は企業の業績や時価総額に影響を与えます。
環境保護と持続可能性
消費者や投資家からの持続可能性や環境への配慮の要求は増加しており、この要求に対応できるかどうかが企業の評価に影響を及ぼします。
M&A（合併・買収）
企業が他の企業を買収または合併すると、その規模や業績、時価総額は大きく変動します。成功したM&Aは企業のランキングを大きく上昇させる可能性があります。
以上のように、食品用素材企業のランキングは、内部と外部の様々な要因によって変化します。これらの要素を理解し、適応する能力は、企業が競争力を維持し、ランキングを向上させるために重要となります。
まとめ
以上、2023年最新版の世界の食品用素材会社ランキングをご紹介しました。ランキングからは、食品用素材業界における各社の地位や影響力が見て取れます。また、各企業の国籍や特性を通じて、食品用素材産業がどのようにグローバルに展開されているか、そしてどのような企業がその中心的な役割を果たしているかが理解できます。
ランキングは単なる順位付け以上の意味を持ちます。それは市場の動向、消費者の嗜好の変化、新たな技術の導入など、業界全体の変化を反映するものです。これらの情報を用いて、投資家、研究者、そして消費者自身がより深い理解を得ることが可能となります。
2023年のランキングはあくまで一時点のスナップショットであり、これからも食品用素材産業は革新的な技術や新しい市場トレンドにより変化していくでしょう。これらの変化を見据えつつ、我々は引き続きこのエキサイティングな業界の動きに注目してまいります。