あらゆる業界でテクノロジーの発展が見受けられる中、鉄道業界もまた例外ではありません。鉄道車両の製造業者は、革新的な技術を活用し、効率性の向上、環境負荷の軽減、乗客の快適性の向上を目指しています。
今回は、これらの競争が激しい世界の鉄道車両製造業界の中で、2023年現在で最も時価総額が高い企業TOP25をリストアップしました。これらの企業は、市場における影響力、技術的なリーダーシップ、そして経済的な成功を具現化しています。
世界の鉄道車両会社ランキング:時価総額TOP25
下記の世界の鉄道車両会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 地域的な観点から見ると、企業の時価総額はその所在国により異なる傾向があります。特に、ドイツのSiemens AGと日本の日立製作所がそれぞれランキングのトップとなっています。また、上位25位の中にはアメリカ、中国、フランス、スイス、大韓民国、スペイン、インド、オーストラリアという8つの国からの企業も含まれています。このことから、この分野では多様な国々からの競争が存在することが分かります。
- 時価総額について見ると、Siemens AGが他の企業を大きく引き離しており、一方でリストの下位にある企業の時価総額は非常に小さいことが見て取れます。このことから、この業界では大手企業が大きな市場支配力を持っていることが示唆されます。
- 中国と日本はそれぞれ5つと4つの企業をランキング内に持っており、これらの国々がこの業界で重要な役割を果たしていることを示しています。
- 企業の大半がアジアとヨーロッパに拠点を置いています。これは、これらの地域が鉄道や重工業における技術的進歩を牽引していることを示しています。ただし、アメリカからも4つの企業がランキングに入っています。
以上のように、ランキングは企業の規模や影響力、さらにはその拠点となる地域の経済状況や産業動向を反映しています。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位:Siemens AG(ドイツ)
Siemens AGはドイツのマルチナショナルエンジニアリング会社であり、エネルギー、ヘルスケア、産業、インフラストラクチャなどの分野で幅広く事業を展開しています。同社の製品は世界中で高い評価を受けています。
Siemensは先進的な技術力と品質、さらには事業の多様性が評価されており、グローバルに展開する大規模な事業が高い時価総額を支えています。
2位:日立製作所(日本)
日立製作所は、ITサービスからエネルギーソリューション、インフラシステム、産業機器に至るまで、広範な分野でビジネスを展開している大手電機メーカーです。
日立製作所は幅広い事業領域と技術的優位性を持っており、特にITやインフラ関連の分野での実績が高く評価されています。
3位:CRRC Corp Ltd(中国)
CRRCは中国最大の鉄道車両製造会社で、鉄道車両の設計、製造、販売を手掛けています。また、都市鉄道車両や急行列車、高速鉄道車両など、多種多様な製品を提供しています。
中国が近年進めている鉄道インフラの大規模な拡大に伴い、CRRCの事業も大きく成長しています。また、世界最大の市場である中国での強固な地位と、海外への積極的な展開が時価総額を押し上げています。
4位:Westinghouse Air Brake Technologies Corp(アメリカ)
Wabtec Corporationは、フレイトとトランジット用の鉄道製品およびサービスを提供しています。ディーゼルエンジン、ブレーキシステム、電子制御装置など、幅広い製品を手掛けています。
Wabtecは、信頼性の高い製品とサービスの提供により、業界内で強い地位を確立しています。また、鉄道インフラの近代化や電化が進む中、Wabtecの革新的な技術や製品が評価されています。
5位:Knorr-Bremse AG(ドイツ)
Knorr-Bremseは、鉄道と商用車用のブレーキシステムを中心に製造するドイツの企業です。その他にも、ドアシステムや空調装置なども提供しています。
Knorr-Bremseは、鉄道と商用車向けの高品質なブレーキシステムの開発と製造において、世界をリードする地位にあります。そのため、その技術力と信頼性が評価され、高い時価総額を維持しています。
【世界の鉄道車両会社ランキング:時価総額TOP25リスト】
※対象となる鉄道車両会社として「上場企業」かつ「鉄道車両業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年6月28日)の株価および為替レートで算出
ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額(億円) |
1 | Siemens AG | ドイツ | 2022/09 | 181,059 |
2 | 日立製作所 | 日本 | 2023/03 | 81,627 |
3 | CRRC Corp Ltd | 中国 | 2022/12 | 34,666 |
4 | Westinghouse Air Brake Technologies Corp | アメリカ | 2022/12 | 24,422 |
5 | Knorr-Bremse AG | ドイツ | 2022/12 | 14,545 |
6 | Alstom SA | フランス | 2023/03 | 14,376 |
7 | Zhuzhou CRRC Times Electric Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 9,648 |
8 | 川崎重工業 | 日本 | 2023/03 | 5,948 |
9 | Stadler Rail AG | スイス | 2022/12 | 4,927 |
10 | Hyundai Rotem Co | 大韓民国 | 2022/12 | 4,422 |
11 | Trinity Industries Inc | アメリカ | 2022/12 | 2,530 |
12 | Construcciones y Auxiliar de Ferrocarriles SA | スペイン | 2022/12 | 1,702 |
13 | KTK Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,536 |
14 | Greenbrier Companies Inc | アメリカ | 2022/08 | 1,390 |
15 | BEML Ltd | インド | 2023/03 | 1,108 |
16 | Jinxi Axle Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 994 |
17 | Titagarh Rail Systems Ltd | インド | 2023/03 | 941 |
18 | Vontron Technology Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 881 |
19 | Texmaco Rail & Engineering Ltd | インド | 2023/03 | 408 |
20 | 日本車輌製造 | 日本 | 2023/03 | 297 |
21 | Engenco Ltd | オーストラリア | 2022/06 | 119 |
22 | 近畿車輛 | 日本 | 2023/03 | 111 |
23 | 東洋電機製造 | 日本 | 2022/05 | 93 |
24 | FreightCar America Inc | アメリカ | 2022/12 | 64 |
25 | 森尾電機 | 日本 | 2023/03 | 23 |
出典:各社プレスリリースなど
世界の鉄道車両会社ランキングの有用性
鉄道車両会社のランキングは、さまざまな観点から有用であると言えます。以下に具体的な有用性について説明します。
- 市場の理解: ランキングは各企業の相対的な市場規模や影響力を示しているため、市場全体の構造や競争状況を理解するのに役立ちます。これにより、投資家やアナリストは投資決定を行うための有益な情報を得ることができます。
- 業界の動向把握: このランキングから、どの国や地域が鉄道車両製造の主要なプレイヤーであるか、または新興市場がどのように成長しているかなど、業界全体の動向を把握することが可能です。
- 技術の比較: 各企業がどの程度の市場価値を持つかを示すことで、それぞれの企業がどれだけ技術的に進んでいるか、またはどれだけの製品やサービスを市場に提供しているかを間接的に示すことができます。
- 企業分析: 各企業の時価総額とその変動を追跡することで、企業の財務状況や業績、市場に対する評価などを分析するのに役立ちます。
- 投資判断: 投資家にとっては、各企業のランキングはその投資価値を判断する一つの指標となります。例えば、時価総額が大きい企業は安定した投資先とみなされることが多いです。
- 戦略立案: 企業にとっては、自社の位置づけや競争相手の動向を把握するために、このようなランキングは重要な情報源となります。これを基に、自社の事業戦略やマーケティング戦略を立案・調整することが可能です。
世界の鉄道車両会社ランキング:変化を与える要素
世界の鉄道車両会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
技術革新
鉄道業界は、環境に優しい技術や自動運転、高速化技術などの革新的な技術が求められています。そのため、これらの技術を開発・導入している企業は市場価値を向上させ、ランキング上位に進出する可能性があります。
経済状況
グローバル経済の状況は、鉄道車両の需要や各企業の財務状況に大きく影響を与えます。景気が良い時期は鉄道車両の需要が増え、企業の収益性が向上し、時価総額が増加する可能性があります。
政策・規制
各国の鉄道政策や規制は、鉄道車両の製造企業に大きな影響を与えます。例えば、公共交通の充実や鉄道インフラの整備を進める政策があれば、その国や地域の鉄道車両会社の収益性が向上する可能性があります。
市場拡大・収縮
新興国などでの鉄道インフラの整備や、高速鉄道の導入などにより新たな市場が生まれ、そこに早く参入する企業は市場価値を大幅に向上させることができます。一方、市場の収縮や飽和も企業の評価を下げる要因となり得ます。
企業の財務状態
企業の財務状態や業績が悪化すると、その企業の時価総額は減少し、ランキングも下がることになります。
M&A(合併・買収)
鉄道車両会社間でのM&Aは、企業の規模や市場シェアを大きく変動させ、ランキングに大きな影響を及ぼすことがあります。
これらの要素は全て相互に関連しており、一つの要素が変化するとそれが他の要素に影響を与え、結果としてランキングに影響を及ぼすことがあります。
まとめ
本記事では、2023年時点での世界の鉄道車両製造業界のトッププレーヤーを時価総額に基づいてランキング化しました。ランキングは、業界の動向を把握するだけでなく、企業の財務状況や技術力の比較、市場規模の理解にも役立ちます。
また、ランキングの変動は、技術革新、経済状況、政策や規制、市場の拡大・収縮、企業の財務状態、そしてM&Aなど多岐にわたる要素によって左右されます。これらの要素が相互に影響し合い、鉄道車両製造業界の風景を形成しています。
今後も各企業が革新を続け、鉄道業界がさらなる進化を遂げることを期待しつつ、鉄道車両製造業界の動向に注目していきましょう。