近年、日本市場で「ブランドへの信頼」がこれまでとは明らかに異なる意味を持ち始めています。品質が良い、有名である、長年続いているといった従来の評価軸だけでは、生活者やビジネスパーソンの選択を左右できなくなりました。

インフレの長期化により消費者の目は厳しくなり、生成AIの急速な普及は「その情報は本当に正しいのか」という疑念を常に伴います。さらに、企業不祥事やガバナンス問題がSNSを通じて瞬時に拡散される時代において、信頼は一度失えば回復が極めて困難な経営資源となりました。

本記事では、2026年時点の日本市場を舞台に、ブランド信頼性がどのような構造へと変容しているのかを整理します。最新の調査データ、AIと情報信頼性を巡る技術動向、実際に起きた企業事例を踏まえながら、これから企業やブランドが取るべき現実的な戦略の要点を読み解いていきます。信頼を「感覚」ではなく「設計できる資産」として捉えたい方にとって、最後まで読む価値のある内容です。

2026年に再定義される「ブランド信頼性」とは何か

2026年におけるブランド信頼性は、従来の好感度や知名度とは明確に異なる概念へと再定義されています。エデルマン・トラストバロメーター2026によれば、日本では政府・企業・メディアなど主要機関への信頼度が平均40%未満にとどまり、社会全体に「不信が常態化」している状態です。この環境下でブランドに求められる信頼とは、単に優れた商品を提供することではなく、不確実な社会においても行動の妥当性を説明し続けられる力に他なりません。

特に重要なのは、信頼が「評価」ではなく「機能」として扱われ始めている点です。インフレや地政学リスク、生成AIの普及によって情報の真偽判定が難しくなる中、信頼は購買を後押しする付加価値ではなく、事業継続の前提条件になりつつあります。エデルマンはこれを企業が社会で活動するための「License to Operate」と位置づけており、信頼を欠いた企業は価格や性能に関係なく選択肢から外される傾向が強まっています。

この変化を理解するうえで、日経リサーチのブランド戦略サーベイ2025が示す結果は示唆的です。高評価を得たブランドに共通するのは、派手な広告ではなく、労働環境改善や価値維持策など、意思決定の背景が説明可能であることでした。生活者は「なぜその価格なのか」「なぜその技術を使うのか」という理由を重視し、納得できないブランドから静かに離れていきます。

従来の信頼観 2026年型の信頼観
品質・実績への期待 判断プロセスの透明性
評判やイメージ 説明責任と一貫性
問題発生後の謝罪 問題発生前後の情報開示

さらに生成AIの普及は、ブランド信頼性を一段と厳しいものにしています。AI生成コンテンツや自動判断が日常化する一方で、日本ではAIそのものへの信頼度が30%台にとどまっています。エデルマンやマイクロソフトの調査によれば、生活者は利便性以上に「その情報は誰が、どのように作ったのか」を気にしています。つまり、技術を使うか否かではなく、使い方を説明できるかどうかが信頼を左右します。

2026年に再定義されるブランド信頼性とは、完璧であることではありません。不確実性や失敗を前提としたうえで、その都度説明し、対話し、修正する姿勢を持ち続けることです。信頼は積み上げる資産であると同時に、日々検証されるプロセスでもあります。この動的な信頼をマネジメントできるかどうかが、これからのブランド価値を根本から分けていきます。

エデルマン・トラストバロメーターが示す日本の信頼低下の実態

エデルマン・トラストバロメーターが示す日本の信頼低下の実態 のイメージ

エデルマン・トラストバロメーターの最新データが示す日本の姿は、単なる一時的な信頼低下ではなく、社会全体に不信が定着しつつある構造的な問題です。世界最大級の信頼調査として知られる同レポートによれば、日本の信頼指標は2025年時点で調査対象28カ国中、最下位水準に位置し、2026年に向けたプレビューでも回復の兆しは確認されていません。

特に深刻なのは、政府、企業、メディア、NGOという主要4機関すべてに対する平均信頼度が37〜39%という水準にとどまっている点です。エデルマンの定義では、これは明確に「不信」の領域に分類されます。先進国の中でも日本は、経済停滞や政治的閉塞感が長期化した結果、制度そのものへの期待値が恒常的に低下している国と位置づけられています。

対象機関 日本の信頼度水準 評価領域
政府 約37% 不信
企業 約39% 不信
メディア 約38% 不信
NGO 約37% 不信

この低迷をさらに深刻化させているのが、エデルマンが2025年以降の中核テーマとして強調する「Grievance(不満)」の蔓延です。世界全体で6割超の人々が「システムは一部の富裕層だけを利している」と感じていますが、日本では円安とインフレによる実質賃金の停滞が重なり、中間層以下を中心に被害者意識が強く可視化されています。

その結果、企業が好調な業績を発表しても、「自分たちの生活は良くなっていない」という認識が先行し、称賛ではなく反発を招くケースが増えています。エデルマンの分析でも、日本は選挙や制度改革といったイベントが信頼回復の契機になりにくい国の一つとされ、政治資金問題などがむしろ不信を増幅させたと指摘されています。

加えて見逃せないのが、信頼の「二極化」です。経済的に恵まれた層やテクノロジーを前向きに受容する層は相対的にシステムを信頼する一方、そうでない層は強い不信感を抱いています。日本では「国全体の空気」としての信頼が失われ、立場や情報リテラシーによって評価が分断される段階に入ったと言えます。

エデルマン・トラストバロメーターが示す日本の現状は、単に数値が低いという事実以上に、信頼が自然回復しない状態に陥っていることを意味します。この前提を正しく理解することが、2026年以降の日本市場で信頼を語るための出発点になります。

不確実性の時代に進む信頼の二極化とその背景

不確実性が常態化した2026年の日本市場では、信頼が均等に低下するのではなく、信頼される主体と信頼されない主体が明確に分かれる「二極化」が進んでいます。エデルマン・トラストバロメーターによれば、日本は主要28カ国の中でも信頼指標が最下位水準にありながら、その内訳を見ると「全面的不信」ではなく、「条件付きの信頼」が局所的に残存している点が特徴です。

この背景には、経済・情報・価値観の三層で同時に進む分断があります。まず経済面では、インフレと実質賃金の停滞により、生活に余力のある層とそうでない層の間で、企業や制度に対する評価が大きく乖離しています。資産を持つ層ほど現行システムを合理的と捉え、持たざる層ほど「自分たちは恩恵を受けていない」という被害者意識を強めています。

情報面での分断はさらに深刻です。生成AIやSNSの普及により、同じ出来事でも接触する情報源によって解釈が大きく異なります。エデルマンはこれを「情報リテラシー格差が信頼格差を増幅させている」と分析しています。専門家の解説や一次情報にアクセスできる層は判断を保留できますが、断片的で感情を刺激する情報に晒されやすい層ほど、企業やメディアへの不信を強めやすい構造にあります。

分断の軸 信頼が高まりやすい層 不信が強まりやすい層
経済状況 資産保有層・安定雇用層 実質所得が圧迫される層
情報接触 一次情報・専門家に接触 SNS中心・断片情報中心
技術観 AIを機会と捉える層 AIを脅威と捉える層

価値観の分断も信頼の二極化を後押ししています。AIや自動化を成長のチャンスと捉える層は、技術導入を進める企業を前向きに評価します。一方で、雇用や公平性への不安を抱く層は、同じ企業行動を「冷酷」「自分たちを切り捨てる存在」と受け止めがちです。同一のメッセージが、支持と反発を同時に生む状況が生まれています。

この環境下で特に重要なのは、もはや「万人に好かれる中立性」が機能しないという現実です。曖昧で当たり障りのない発信は、どの層にも深く刺さらず、結果として「何を考えているかわからない存在」と見なされます。エデルマンが指摘するように、信頼は価値中立ではなく、「どの立場に立ち、誰のために行動しているのか」を明確にすることで初めて成立します。

不確実性の時代における信頼の二極化とは、単なる評価のばらつきではありません。それは、企業やブランドが選ばれる理由と、拒否される理由が同時に鋭く可視化される状態です。この構造を理解せずに従来型の一律コミュニケーションを続けること自体が、信頼を失うリスクになりつつあります。

生成AIの普及がもたらすブランド信頼への新たなリスク

生成AIの普及がもたらすブランド信頼への新たなリスク のイメージ

生成AIの急速な普及は、企業の生産性や顧客体験を飛躍的に高める一方で、ブランド信頼に対してこれまでになかった種類のリスクを生み出しています。2026年の日本市場において最大の特徴は、**「AIそのものへの不信」と「AIを使う企業への不信」が強く結びついている点**です。

エデルマン・トラストバロメーターによれば、日本におけるAIへの信頼度は30%台前半にとどまり、先進国の中でも特に低水準です。注目すべきは、不安の中心が利便性や雇用代替ではなく、「情報の正確性」「意図的な操作」「責任の所在の不明確さ」に置かれている点です。つまり、AIが生み出した誤情報や不透明な判断は、そのままブランドの誠実性への疑念に直結します。

実務の現場では、AI生成コンテンツの活用が進むほど、**「それは本当に企業の公式見解なのか」「誰が責任を負うのか」**という問いが生活者の中で強まっています。AIが作成した広告コピーやカスタマーサポートの自動応答が炎上した場合、原因がアルゴリズムであっても、最終的な評価責任はブランドに帰属します。

生成AIに起因するリスク ブランド信頼への影響
AI生成の誤情報・不正確表現 情報を信じてよい企業かという根本的疑念
生成AI利用の非開示 「隠していた」という印象による不誠実評価
判断プロセスのブラックボックス化 説明責任を果たさない企業という認識

特に日本市場では、AI生成であることを明示せずに発信された情報に対し、発覚後に強い反発が生じやすい傾向があります。エデルマンが指摘する「透明性ファースト」の原則に反し、**利便性を優先して説明を省いた企業ほど、信頼低下のリスクを抱え込む**構造です。

さらに深刻なのが、ディープフェイクやなりすまし広告の高度化です。第三者が生成AIを用いて企業トップの発言を捏造した場合、事実でないにもかかわらず、ブランドイメージは短時間で毀損されます。慶應義塾大学などが関与するOriginator Profileのような真正性証明技術が注目されている背景には、**「信頼を言葉ではなく技術で示さなければならない」**という時代認識があります。

生成AI時代のブランドリスクは、失敗そのものよりも「説明しないこと」「開示しないこと」によって拡大します。

重要なのは、AI活用をやめることではありません。どこで、何の目的で、どのようにAIを使っているのかを継続的に説明し、人が最終判断を担っていることを示し続ける姿勢です。生成AIの普及は、ブランドにとって効率化の武器であると同時に、**信頼を証明し続ける覚悟を問う試金石**になっています。

ディープフェイク時代の情報真正性とOriginator Profileの役割

生成AIの進化により、ディープフェイクは2026年時点で「専門家でなければ見抜けない偽装」から「一般の生活者でも日常的に遭遇するリスク」へと変化しています。音声、動画、画像、さらには企業公式を装った文章までが高度に生成される中で、**情報の真偽を個人のリテラシーだけに委ねることは限界に達しています**。

この課題に対し、日本市場で現実的な解として注目されているのがOriginator Profile(OP)です。OPは、コンテンツの内容そのものを評価するのではなく、「誰が責任を持って発信したのか」を技術的に証明する仕組みです。慶應義塾大学サイバー文明研究センターを中心とする産学連携の枠組みで設計され、第三者認証を通じて発信者情報をメタデータとして付与します。

**真偽判定をAIに任せるのではなく、発信主体の信認をインフラ化する点がOPの本質です**

世界的に見ると、MITメディアラボや欧米プラットフォームはディープフェイク検知精度の向上に注力していますが、完全な検出は依然困難だと指摘されています。これに対しOPは、「偽物を見抜く競争」から「本物だけを可視化する設計」へと発想を転換しています。この思想はW3Cで議論されているコンテンツ真正性の潮流とも整合的です。

観点 従来の対策 Originator Profile
主な焦点 偽情報の検知 発信者の証明
技術的限界 生成精度向上で検知が困難 第三者認証で担保
企業価値への影響 受動的な防御 能動的な信頼構築

広告・広報の現場では、OP対応の有無がブランドリスクを左右し始めています。アドフラウドやなりすまし広告への出稿を避けるため、広告配信システム側がOP付きメディアを優先する動きも進んでいます。これは、**「正しいことを言っているか」以前に「誰が言っているか」が評価軸になる時代**の到来を示しています。

ディープフェイク時代の信頼は、倫理や姿勢だけでなく、技術的に裏付けられて初めて成立します。OPはそのための日本発の信頼インフラであり、企業や専門家が自らの真正性を静かに、しかし確実に証明するための新しい標準となりつつあります。

AI検索時代に高まる一次情報と企業発信の価値

AI検索が主流化した2026年、情報の価値基準は根本から変わりました。GoogleのAI OverviewsやPerplexity、SearchGPTといった生成AI型検索は、複数サイトを横断して要約する一方で、参照元として一次情報を持つ発信者を強く優遇する設計になっています。これは単なるSEOの変化ではなく、企業の情報発信そのものがブランド信頼性を左右する時代に入ったことを意味します。

エデルマン・トラストバロメーターが示す通り、日本ではメディアやプラットフォームへの信頼が低下する一方、「その企業自身が語る事実」への期待は高まっています。AIは匿名のまとめ記事や二次情報よりも、決算資料、公式リリース、技術ブログ、調査レポートといった一次情報を優先的に学習・引用する傾向があり、情報の発信主体が誰かが可視化されるようになりました。

特に注目すべきは、AI検索ではクリック前に回答が提示される「ゼロクリック」が常態化している点です。この環境下では、検索結果での順位以上に、AIの回答文中に社名やブランド名が登場するかが認知と信頼の分岐点になります。COOD社の2025年調査でも、AIに引用されやすい日本企業の共通点として「一次データの保有」「継続的な公式発信」「発信者の明確さ」が挙げられています。

従来の検索評価 AI検索時代の評価
被リンク数や更新頻度 一次情報の有無と独自性
キーワード最適化 事実性・再利用可能性
媒体の知名度 発信主体の信頼履歴

この変化は、企業広報やマーケティングに新たな役割を求めています。単なるニュース配信ではなく、調査結果の公開、失敗事例の説明、技術的背景の解説など、他者が代替できない情報を継続的に積み上げることが重要です。日経リサーチも、ブランド評価が高い企業ほど公式サイト内のオウンドデータや一次コメントが豊富であると指摘しています。

さらに、Originator Profileのような発信者認証技術が普及することで、AIは「誰が語ったか」をより正確に判別できるようになります。これは企業にとって、誠実な情報開示を続けてきた履歴そのものが、AI時代の信頼資産として蓄積されることを意味します。広告表現やバズを狙った発信よりも、地道な一次情報の公開こそが、AI検索時代における最も再現性の高いブランド戦略になりつつあります。

インフレ下で変わる消費者行動とブランド選別の基準

インフレが常態化した2026年の日本市場では、消費者行動の前提そのものが変化しています。物価上昇は単なる節約志向を生むのではなく、「何にお金を払うか、何には払わないか」をより厳密に選別する行動を加速させています。日経リサーチのブランド戦略サーベイ2025によれば、多くの消費者は一律に支出を削るのではなく、価値を感じる対象には支出を維持、あるいは増やす「メリハリ消費」を選択しています。

この環境下で重要になるのが、価格と価値の関係性に対する消費者の認知です。エデルマン・トラストバロメーターが示すように、インフレ下では「企業は自分たちの生活を本当に理解しているのか」という視点が信頼評価に強く影響します。単なる値上げは不信を招きますが、値上げの理由や背景が合理的かつ誠実に説明されれば、一定の理解が得られる点が2026年の特徴です。

ブランド選別の基準は、大きく「機能的信頼」と「情緒的信頼」に分かれています。前者では、失敗しない品質、時間短縮、価格妥当性が重視され、食品や日用品で顕著です。後者では、体験価値や自己肯定感、ブランドの世界観が評価軸となり、美容、百貨店、高付加価値耐久財で見られます。重要なのは、どちらも「信頼」が前提条件であり、価格だけでは選ばれない点です。

評価軸 重視される要素 消費者の心理
機能的信頼 コスパ、タイパ、品質の安定性 失敗したくない、合理的に選びたい
情緒的信頼 体験価値、世界観、接客 納得してお金を使いたい

また、インフレはプライベートブランドへの評価も変えました。エクスクリエの調査では、PB購入時に品質を重視する割合が2019年比で大幅に上昇しています。これは、「安いからPB」ではなく「合理的に優れているからPB」という認識への転換を意味します。一度PBで満足体験を得た消費者は、ナショナルブランドへ簡単には戻らず、ブランド側には明確な差別化理由が求められます。

さらに、価格高騰を背景に代替行動が常態化している点も見逃せません。ヴァリューズの消費行動調査によれば、3人に1人が価格上昇を理由に商品を切り替えています。この行動は衝動的ではなく、比較・検討を経た冷静な判断であり、ブランドロイヤルティは条件付きのものへと変化しています。

総じて2026年の消費者は、価格、品質、企業姿勢を総合的に評価しています。インフレはブランドにとって逆風である一方、誠実さと一貫性を示せる企業には選ばれる機会でもあります。消費者は「安さ」ではなく「納得できる理由」を買っているという事実を、ブランド戦略の起点に据えることが不可欠です。

プライベートブランド台頭が示す信頼構造の変化

プライベートブランドの台頭は、単なる価格競争の激化ではなく、生活者が「何を信頼の拠り所にするか」という構造そのものの変化を示しています。インフレが常態化した2026年の日本市場では、ブランドの信頼は知名度や広告量ではなく、日常的な購買体験の積み重ねによって形成される傾向が一段と強まっています。

エクスクリエの調査によれば、PB購入時に品質を重視する消費者の割合は2019年比で24.0%上昇しました。これは「安かろう悪かろう」という過去の認識が後退し、**価格と品質の両立を実感できるブランドこそが信頼に値する**という判断軸が定着したことを意味します。イオンのトップバリュや西友のみなさまのお墨付きは、第三者評価や返金保証といった仕組みを通じて、企業ではなく小売そのものが品質を担保する主体として認識されるようになっています。

観点 ナショナルブランド プライベートブランド
信頼の源泉 企業の歴史・知名度 購買体験と実用実感
品質判断 ブランドイメージ依存 具体的な比較・検証
価格への納得感 説明が必要 体感で理解

特に注目すべきは、PBが「信頼の近接性」を獲得している点です。生活者はPBを、遠いメーカーではなく、日々利用する店舗や流通企業との関係性の延長として捉えています。日経リサーチの分析でも、PB評価の高い小売は総じて店舗体験や情報開示への満足度が高く、**信頼が商品単体ではなく接点全体で構築されている**ことが示唆されています。

この変化は、信頼の主体が「語るブランド」から「選ばれ続ける仕組み」へ移行したことを意味します。メーカーが一方的に品質を訴求する時代から、生活者が自ら比較し、納得して選ぶ時代へと移ったのです。結果として、PBは信頼のハードルを引き上げ、市場全体に透明性と説明責任を求める存在となっています。

2026年におけるPBの成長は、既存ブランドへの不信の裏返しではありません。むしろ、**信頼が幻想ではなく実証によって測られる段階に入った**ことの表れです。この新しい信頼構造を理解できない企業は、価格でも価値でも選ばれにくくなるという、静かな淘汰に直面しつつあります。

企業不祥事に学ぶ信頼崩壊と回復の分岐点

企業不祥事は、信頼がどのように崩壊し、どこで回復の分岐点が生まれるのかを最も鮮明に示します。2025年から2026年にかけて日本で起きた一連の事例は、**不祥事そのものよりも「初動対応」と「説明の姿勢」が信頼を決定づける**ことを改めて証明しました。

エデルマン・トラストバロメーターによれば、日本では企業への信頼がもともと低水準にあり、ネガティブ情報に対する許容度が極めて低いとされています。この環境下では、対応を誤った瞬間に信頼は非連続的に崩れ、回復には年単位の時間を要します。

事例 初期対応 信頼への帰結
すき家(異物混入) 約2か月非公表 隠蔽認識が拡散し急激な信頼低下
小林製薬(紅麹問題) 原因究明と補償が長期化 ガバナンス不信が企業全体に波及
トヨタ自動車(認証不正) 早期説明と構造要因の開示 対話評価により信頼回復基調

すき家の事例では、衛生問題そのものよりも「公表しなかった時間」が致命傷となりました。SNS時代において沈黙は中立ではなく、**最悪の意図を想像させる行為**として解釈されます。専門家の間でも、危機対応の鉄則であるバッドニュース・ファーストを破った典型例と評価されています。

一方、小林製薬の紅麹問題は、対応を続けていても信頼が戻らないケースを示しました。被害規模の大きさに加え、意思決定が特定の経営構造に依存していた点が、日経や経済誌で繰り返し指摘されています。**説明があっても、統治の仕組み自体が疑われると信頼は回復しません。**

対照的にトヨタ自動車は、不正を個人の問題に矮小化せず、開発プロセスや組織文化という構造要因を開示しました。国土交通省やメディアとの継続的な対話が、ステークホルダーの納得感を生み、ブランド評価の回復につながっています。

これらの分岐点を分けたのは、謝罪の巧拙ではなく、**事実をどこまで、どの速度で、誰の言葉で語ったか**です。不祥事対応は広報イベントではなく、企業の価値観そのものが試される経営判断であることを、2026年の日本市場は厳しく突きつけています。

2026年に求められるブランド信頼構築の戦略的要諦

2026年に求められるブランド信頼構築の核心は、好意的なイメージを作ることではなく、不確実性の高い環境下でも選ばれ続ける理由を、行動と仕組みで示し続けることにあります。エデルマン・トラストバロメーターが示す通り、日本では政府・企業・メディアすべてへの信頼が4割を下回る低水準に定着しており、企業は「疑われる前提」で評価される時代に入りました。

この環境で重要になるのが、信頼をマーケティング成果ではなく「事業継続の前提条件」として扱う視点です。エデルマンは2026年版で、信頼を企業のLicense to Operateと位置づけています。これは、価格競争力や技術優位性があっても、信頼を欠けば市場参加そのものが制限されることを意味します。

特に日本市場では、透明性と説明責任が戦略レベルで組み込まれているかが分水嶺になります。生成AIの活用や価格改定、品質問題など、企業にとって不都合になり得るテーマほど、先回りして説明する姿勢が評価されます。総務省の偽・誤情報対策報告書やAI事業者ガイドラインも、企業の自主的な開示と説明を前提に制度設計されています。

2026年の信頼構築は「何を語るか」より「どう振る舞い、それをどう検証可能にするか」が問われます。

戦略的に見ると、信頼は三つのレイヤーで同時に設計する必要があります。第一にオペレーションの信頼です。日経リサーチのブランド戦略サーベイで評価を高めた企業は、品質管理や価格政策、労働環境といった足元の業務を着実に改善しています。第二に情報の信頼です。Originator Profileのような技術を活用し、発信情報の出所と責任主体を明確にすることが、AI検索時代の前提条件になりつつあります。

第三に社会的整合性の信頼です。エデルマンによれば、企業が社会課題に沈黙すること自体がリスクと認識され始めています。ただし、表層的なパーパス表明は逆効果になりやすく、事業活動そのものがどのように社会の不満や不安を軽減しているかを、具体的なデータで示す必要があります。

信頼のレイヤー 評価される要素 2026年のポイント
オペレーション 品質・価格・労働環境 平時からの一貫性
情報 透明性・真正性 技術による検証可能性
社会的整合性 公平性・貢献度 事業と課題解決の連動

重要なのは、これらを広報施策として切り出すのではなく、経営判断の基準に組み込むことです。トヨタ自動車が不正問題後に評価を回復した背景には、説明の巧拙ではなく、意思決定プロセスそのものを見直し、継続的に対話している点があります。

2026年のブランド信頼構築は、短期的な好感度向上策では成立しません。疑念が生まれることを前提に、検証されても耐えうる構造を先に作ることこそが、最も合理的で、結果的に最も強いブランド戦略になります。

参考文献

Reinforz Insight
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