2023年、技術革新がますます加速し、世界経済が変貌を遂げている今、電子製品の製造とサプライチェーン管理を担うEMS(Electronics Manufacturing Services)企業の重要性が高まっています。新型コロナウイルスのパンデミックからの回復、技術の進歩、持続可能な製品への世界的なシフトなど、各種の要因がEMS企業の動向を形成し、その業績を左右しています。

ここでは、最新のデータに基づき、「2023年最新版:世界のEMS会社ランキング時価総額TOP 100」をご紹介します。各企業の成長、業績、および市場での地位を評価し、ランキング形成の背後にある要素を分析しています。

世界のEMS会社ランキング:時価総額TOP100

下記の世界のEMS会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。

このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。

  • 国別分布: 企業の多数が台湾と中国に所在しています。台湾企業が最も多く、さらに中国がそれに続きます。これらの地域が時価総額の大部分を占めていることは、それらが電子製品の製造と供給において全世界で主導的な役割を果たしていることを示しています。アメリカ、シンガポール、日本など他の国もランキングに名を連ねていますが、それらは中国と台湾ほど頻繁には現れません。

  • 時価総額分布: 上位の企業は非常に大きな時価総額を有していますが、ランキングが下がるにつれて時価総額は急速に減少します。1位のBYD Co Ltdの時価総額は148,520億円ですが、100位のElate Holdings Ltdの時価総額はたったの15億円です。これは市場の不平等性を示しており、一部の大企業が市場の大部分を占めていることを示しています。

この情報に基づいて、このランキングは、電子製品製造業界における主要なプレイヤーとその市場価値を反映していると言えます。大手企業は競争力が高く、多くの小規模企業よりも明らかに優れた市場地位を維持しています。また、この業界は地域によって異なる特性を持っており、特にアジアの一部地域が業界を主導しているようです。

以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。

1位:BYD Co Ltd(中国)

BYDは電気自動車、プラグインハイブリッド、従来型燃料車の製造を手がける大手自動車メーカーであり、またリチウム電池の大手製造企業でもあります。再生可能エネルギーソリューションも提供しています。

電気自動車市場の急速な拡大と、高品質なリチウム電池の需要増加が主な理由です。エネルギー転換と再生可能エネルギーソリューションへの需要も高まっています。

2位:Hon Hai Precision Ind. Co., Ltd.(台湾)

Hon Hai Precision IndustryはFoxconn Technology Groupの一部で、電子製品の製造とサプライチェーンソリューションを提供しています。主にAppleの製品を含む多くの大手ブランドのOEMおよびODMを担当しています。

Hon Haiは大規模な製造能力と幅広い顧客ベースを持つため、大量生産とコスト効率の観点から優位性を持っています。また、技術革新と自動化への投資が評価されています。

3位:Luxshare Precision Industry Co Ltd(中国)

Luxshareはデータ通信コネクタ、車両コネクタ、ネットワーク接続、プレシジョンコンポーネントなどの製造を手がけています。また、AppleのAirPodsなどの製品を製造しています。

Luxshareは電子製品の需要が高まる中、精密コンポーネントの供給において強力な地位を築いています。特に、無線デバイスと高品質オーディオ機器の需要増加が同社の成長を後押ししています。

4位:Jabil Inc(アメリカ)

Jabilは電子製品の設計、製造、供給チェーン管理サービスを提供する大手企業で、幅広い産業分野で活動しています。

Jabilの強みは、技術革新、効率的なサプライチェーンマネジメント、高品質な製品とサービスです。また、その多角化した事業ポートフォリオがビジネスのリスクを分散させ、安定した成長を支えています。

5位:Flex Ltd(シンガポール)

Flexは電子製品の設計、エンジニアリング、製造を手がけるグローバルなサプライチェーンソリューション企業です。様々な産業向けに製品を供給しています。

Flexは世界中に生産施設を持ち、様々な市場に対応できる柔軟性を持っています。また、製品の設計から製造までを一元管理し、クライアントの製品開発をスムーズに進行させることが可能です。これらの強みが市場からの高い評価を受けています。

【世界のEMS会社ランキング:時価総額TOP100リスト】

※対象となるEMS会社として「上場企業」かつ「EMS業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年6月29日)の株価および為替レートで算出

ランキング企業名所在国決算期 (決算期)時価総額(億円)
1BYD Co Ltd中国2022/12148,520
2Hon Hai Precision Ind. Co., Ltd.台湾2022/1267,683
3Luxshare Precision Industry Co Ltd中国2022/1241,309
4Jabil Incアメリカ2022/0818,953
5Flex Ltdシンガポール2023/0315,629
6Wingtech Technology Co Ltd中国2022/1212,028
7Wistron Corporation台湾2022/1210,156
8Asustek Computer Inc.台湾2022/1210,094
9Pegatron Corporation台湾2022/128,873
10BYD Electronic (International) Co Ltd中国2021/128,700
11Inventec Corporation台湾2022/126,937
12Universal Scientific Industrial (Shanghai) Co Ltd中国2022/125,934
13Shenzhen Kaifa Technology Co Ltd中国2022/125,750
14Catcher Technology Co., Ltd.台湾2022/125,586
15Compal Electronics, Inc.台湾2022/125,526
16Sanmina Corpアメリカ2022/094,785
17Venture Corp Ltdシンガポール2022/124,300
18Asia Vital Components Co., Ltd.台湾2022/124,132
19Inesa Intelligent Tech Inc中国2022/124,120
20Qisda Corporation台湾2022/124,050
21Plexus Corpアメリカ2022/093,729
22Foxconn Technology Co., Ltd.台湾2022/123,398
23Inari Amertron Bhdマレーシア2022/063,164
24Shenzhen H&T Intelligent Control Co Ltd中国2022/122,914
25Xiamen Intretech Inc中国2022/122,848
26Guangdong Create Century Intelligent Equipment Group Corp Ltd中国2022/122,321
27Celestica Incカナダ2022/122,265
28Knowles Corpアメリカ2022/122,083
29Nanjing Panda Electronics Co Ltd中国2022/121,898
30加賀電子日本2023/031,780
31Ichor Holdings Ltdアメリカ2022/121,373
32Ennoconn Corporation台湾2022/121,351
33Hana Microelectronics PCLタイ2022/121,338
34Benchmark Electronics Incアメリカ2022/121,178
35AEM Holdings Ltdシンガポール2022/121,104
36FIH Mobile Ltd台湾2022/121,074
37V.S Industry Bhdマレーシア2022/071,048
38Kitron ASAノルウェー2022/121,000
39Forth Corp PCLタイ2022/12969
40Kimball Electronics Incアメリカ2022/06887
41Intron Technology Holdings Ltd香港2022/12881
42Note ABスウェーデン2022/12810
43Chenbro Micom Co., Ltd.台湾2022/12784
44シークス日本2022/12783
45立花エレテック日本2023/03778
46Suzhou Etron Technologies Co Ltd中国2022/12724
47SVI PCLタイ2022/12691
48FIC Global, Inc.台湾2022/12613
49Shenzhen Zowee Tech Co Ltd中国2022/12594
50Orient Semiconductor Electronics, Limite台湾2022/12563
51Amtran Technology Co., Ltd.台湾2022/12502
52Hong Kong Aerospace Technology Group Ltd香港2022/12494
53Microelectronics Technology Inc.台湾2022/12462
54Cal-Comp Electronics (Thailand) PCLタイ2022/12436
55Altek Corporation台湾2022/12418
56Frencken Group Ltdマレーシア2022/12367
57Avalue Technology Inc台湾2022/12365
58Sunrex Technology Corporation台湾2022/12360
59アバールデータ日本2023/03329
60Forward Electronics Co Ltd台湾2022/12276
61Info-Tek Corp台湾2022/12273
62Centum Electronics Ltdインド2023/03269
63Karrie International Holdings Ltd香港2022/03269
64Chenming Electronic Technology Corporati台湾2022/12251
65Valuetronics Holdings Ltd香港2022/03207
66Browave Corp台湾2022/12202
67Cicor Technologies Ltdスイス2022/12196
68Nexteq PLCイギリス2022/12183
69Chuan Hup Holdings Ltdシンガポール2022/06174
70ユー・エム・シー・エレクトロニクス日本2023/03163
71Ezconn Corp台湾2022/12146
72Stars Microelectronics (Thailand) PCLタイ2022/12143
73Wong’s International Holdings Ltd香港2022/12138
74EG Industries Bhdマレーシア2022/06136
75Tailyn Technologies Inc台湾2022/12135
76AEWIN Technologies Co Ltd台湾2022/12131
77PJ Electronics Co Ltd大韓民国2022/12113
78PT Sat Nusapersada Tbkインドネシア2022/12108
79Cheng Fwa Industrial Co Ltd台湾2022/12107
80Min Aik Technology Co., Ltd.台湾2022/12104
81nms ホールディングス日本2023/0390
82Key Tronic Corpアメリカ2022/0682
83Hind Rectifiers Ltdインド2023/0380
84平山ホールディングス日本2022/0669
85PNE Industries Ltdシンガポール2022/0964
86Suga International Holdings Ltd香港2022/0358
87Alltronics Holdings Ltd香港2022/1250
88CCT Fortis Holdings Ltd香港2022/1242
89Kinergy Corp Ltdシンガポール2022/1241
90大日光・エンジニアリング日本2022/1240
91Mikro MSC Bhdマレーシア2022/0639
92Nortech Systems Incアメリカ2022/1233
93Rare Earth Magnesium Technology Group Holdings Ltd香港2022/1233
94GBA Holdings Ltd香港2022/1230
95ジェイテック日本2023/0326
96Sunright Ltdシンガポール2022/0726
97Sigmatron International Incアメリカ2022/0424
98Cofidur SAフランス2022/1217
99Echo International Holdings Group Ltd香港2022/0315
100Elate Holdings Ltd香港2022/1215

出典:各社プレスリリースなど

世界のEMS会社ランキングの有用性

世界のEMS(Electronics Manufacturing Services)会社ランキングを理解することは、以下の理由から多くの有益な洞察を提供します。

  • 市場の動向理解: EMSランキングは、市場全体の動向とそれらの企業がどのように対応しているかを把握するための重要な手がかりとなります。例えば、電気自動車やリニューアブルエネルギー技術に重点を置いている企業がランキング上位にいることから、これらの分野への投資とイノベーションが現在の市場トレンドであることが分かります。

  • 競争分析: ランキングは、特定のEMS企業が他の企業と比較してどのようにパフォーマンスを発揮しているかを理解するのに役立ちます。これにより、企業の強み、弱み、機会、脅威を評価するための貴重な情報が得られます。

  • 投資決定: 投資家にとっては、業界のリーダーを把握することは、投資決定を下す上で重要な一部です。ランキングは、業界内で最も有望な企業とその成長見通しを識別するのに役立ちます。

  • パートナーシップとビジネスの機会: ビジネスにおいては、信頼できるパートナーを見つけることが重要です。ランキングは、可能性のあるパートナーを見つけ、自社の供給チェーンを強化するための基準となります。

  • テクノロジートレンドと革新: ランキングはまた、最新の技術トレンドと革新を追跡するのにも役立ちます。上位企業は、通常、市場トレンドをリードし、最先端の技術を採用しています。

ただし、ランキングはあくまで一つの視点であり、企業の全体像を理解するためには、財務状況、企業文化、戦略など、他の多くの要素も考慮する必要があります。

世界のEMS会社ランキング:変化を与える要素

世界のEMS会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。

技術革新

EMS業界は、技術的な進歩と革新が主導する業界であり、最新の技術を採用している企業は競争力を保持または増強することができます。例えば、AIやロボット技術のような先進的な製造技術を導入する企業は、生産効率を向上させ、品質を保証し、ランキングで上位を維持する可能性があります。

財務パフォーマンス

企業の収益、利益、負債、キャッシュフローなどの財務指標は、その健全性と成長能力を示し、ランキングに大きな影響を与えます。経済的な安定性は、企業が新しい投資を行い、市場の変化に適応する能力を示すため、ランキングに大きな影響を与えます。

市場のトレンドと需要

市場のニーズとトレンドは常に変化しており、それに適応した企業は競争力を維持することができます。例えば、電気自動車やリニューアブルエネルギーなどの新興市場に対応した企業は、ランキングで上昇する可能性があります。

運営効率

生産効率、供給チェーン管理、原材料の調達、製品の品質管理などのオペレーショナルな要素もランキングに影響を与えます。これらの要素は、企業が生産コストを管理し、製品の品質を確保し、顧客満足度を向上させる能力を示します。

戦略的パートナーシップとM&A(合併・買収)

企業が他の企業と戦略的なパートナーシップを結んだり、他の企業を買収したりすると、その市場規模や能力が拡大し、ランキングが変動することがあります。

これらはランキングの変化を左右する主要な要素ですが、政治的な変化、経済の不安定性、パンデミックのような予期せぬ事態など、外部の影響も考慮する必要があります。

まとめ

ここまで、2023年の「世界のEMS会社ランキング時価総額TOP 100」を概観してきました。技術革新、財務パフォーマンス、市場のトレンドと需要、運営効率、そして戦略的パートナーシップやM&Aなどが、これら企業のランキングを決定づける主要な要素であることが明らかになりました。これらの要素が複雑に絡み合い、各企業の競争力を形成し、市場のダイナミクスを生み出しています。

これらの要因を理解することで、私たちは現在の市場環境をより深く理解し、未来の可能性を予測する手助けになります。EMS業界は今後も技術の進化とともに変化し続けるでしょう。その変化を追いかけ、理解し、適応することで、新たなビジネスチャンスを見つけ出すことができるでしょう。

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