世界経済が一体となって成長する時代は終わり、地域ごとに異なるルールとリスクが支配する時代に入りました。海外展開を担うビジネスパーソンにとって、「どこに投資し、どこから撤退するのか」という判断は、これまで以上に重く、そして難しくなっています。

中国市場の減速、地政学リスクの高まり、高金利の長期化といった逆風の中でも、一方ではインドやアフリカ、中南米で着実に成果を上げる日本企業が現れています。その差を分けているのは、単なるコスト比較ではなく、市場構造や政策、規制の変化を見据えた戦略の質です。

本記事では、最新の世界経済動向と各地域の具体的な事例を踏まえながら、日本企業が直面するリスクとチャンスを立体的に整理します。読み終えたとき、自社の海外戦略を見直すための視点とヒントを得られる内容を目指します。

多極化が進む世界経済と日本企業への影響

2026年の世界経済は、多極化が明確に進行し、日本企業にとって事業環境の前提条件そのものが変わりつつあります。かつてのように主要国が同時に成長する局面は終わり、地域ごとに異なる成長率、金融環境、政治リスクが併存する構造が定着しています。国連やIMFによれば、2026年の世界経済成長率は2.7〜3.0%とされ、パンデミック前の平均水準を下回る低成長が常態化しています。これは一時的な景気減速ではなく、地政学的分断と供給網再編がもたらす構造変化です。

この多極化を最も端的に示すのが、地域間の成長格差です。インドが6%台半ばの高成長を維持する一方で、中国は4%台半ばへと減速し、先進国の多くは2%前後にとどまっています。世界銀行が指摘するように、「新興国」という一括りの概念はすでに実態を反映していません。成長の源泉は人口動態、内需、政策の組み合わせによって大きく分岐しており、日本企業には国別・地域別に異なる戦略設計が求められています。

国・地域 2026年成長率予測 日本企業への含意
インド 6.5%前後 生産・消費の両面で中核市場化
中国 4.6% 汎用市場は競争激化、選別が必須
ASEAN 4.5〜4.9% 国別戦略と高付加価値化が前提
日本 0.9% 外需依存のリスクが増大

加えて、金融環境も日本企業の意思決定に直接的な影響を与えています。FRBが「より高く、より長く」金利を維持する姿勢を示していることから、米ドル建ての資金調達コストは高止まりしています。これは海外M&Aや大型投資の採算性を厳しくする一方、日米金利差を背景とした円安基調を通じて、既存の海外事業の円換算利益を押し上げる側面もあります。野村證券の分析によれば、この為替構造は短期的に解消されにくいとされています。

さらに重要なのが、経済と安全保障の結びつきです。国連は、関税引き上げや輸出規制が世界貿易の不確実性を高めていると指摘しています。コスト効率だけで構築されたサプライチェーンは、もはや最大のリスク要因になり得ます。日本企業は、生産拠点の立地だけでなく、その国が将来どの経済圏に位置付けられるのかという地政学的視点を含めた判断を迫られています。

多極化が進む世界経済とは、単に選択肢が増える世界ではありません。誤った地域配分は成長機会の逸失だけでなく、収益基盤そのものを揺るがします。2026年は、日本企業にとって「世界をどう分解して捉えるか」という認知の精度が、競争力を左右する時代に入ったことを意味しています。

低成長時代に常態化する高金利と資金調達リスク

低成長時代に常態化する高金利と資金調達リスク のイメージ

低成長が常態化する2026年の世界経済において、企業経営を静かに、しかし確実に圧迫しているのが高金利環境の長期化です。IMFや世界銀行の見通しでは、インフレ率はピークアウトしたものの、米国を中心にサービス価格の粘着性が強く、金融引き締め解除は緩慢に進むとされています。FRBが掲げる「より高く、より長く」という方針は、新興市場ビジネスにおける資金調達リスクを構造的なものへと変えました。

とりわけ影響が大きいのは、米ドル建てでのプロジェクトファイナンスやM&Aです。アライアンス・グローバル・インベスターズの分析によれば、2026年初時点でも新興国向けドル建て融資のスプレッドはコロナ前を大きく上回っており、投資判断におけるハードルレートは恒常的に引き上げられています。**従来であれば採算に乗った中規模投資が、資本コストの上昇だけで見送られるケースが増えている**のが実情です。

項目 低金利期 2026年時点
ドル建て調達金利 年2〜3%台 年5〜6%台
想定IRR 8%前後 10%超
為替前提 安定的 円安リスク常在

加えて、日本企業特有の論点として円安と高金利の組み合わせがあります。野村證券のアナリストが指摘するように、日米金利差の縮小が遅れることで円安基調が続く場合、既存の海外資産からの配当は増えますが、新規投資では初期投資額が膨らみます。**資金調達コストと為替コストが同時に効いてくる状況は、海外展開の意思決定を二重に難しくします**。

この環境下で顕在化しているのが、現地金融市場への過度な期待が裏目に出るリスクです。グローバルサウス諸国では名目成長率が高く見える一方、国内金利や信用リスクプレミアムは依然として高水準にあります。国連の報告書でも、資本流入の減速とドル高局面では、新興国企業・外資企業ともに借換リスクが高まると警告されています。

高金利時代の資金調達は「調達できるか」ではなく「調達条件に耐えられるか」が問われます。

そのため先進的な企業ほど、JBICなど公的金融の活用、現地通貨建て調達の組み合わせ、段階投資による資金需要の平準化といった守りの財務戦略を重視しています。高成長市場を狙う積極性と同時に、金利が下がらない前提での資本設計ができるかどうかが、2026年以降の海外事業の成否を分ける重要な分岐点になっています。

中国市場で進む構造変化と日本企業の撤退判断

2026年の中国市場は、日本企業にとって「拡大を前提とした成長市場」から「構造変化を見極め、撤退を含めて選別する市場」へと性格を大きく変えています。背景にあるのは、中国経済の循環的な減速ではなく、デフレ圧力、産業競争力の内製化、人口動態の転換が同時進行する構造問題です。国連やIMFが示す成長率予測でも、中国は4%台半ばにとどまり、かつての高成長を前提とした事業モデルは成立しにくくなっています。

特に深刻なのが、需要不足と過剰供給がもたらす価格破壊です。Eurasia Groupが指摘する「中国のデフレの罠」は、現地市場での収益性低下にとどまらず、EVや鉄鋼、化学品などの過剰生産が第三国市場へ流出することで、日本企業のグローバル収益構造全体を圧迫しています。中国国内で利益が出ないだけでなく、中国発の安値輸出が他地域での競争環境をも悪化させる点が、2026年特有の難しさです。

こうした環境変化を受け、日本企業の撤退判断は「敗北」ではなく、経営資源の再配置として位置づけられるようになりました。日本製鉄が宝山鋼鉄との合弁を解消し、生産能力を大幅に削減した事例は象徴的です。自動車用鋼板などの高付加価値領域でも中国企業の技術力が急速に向上し、合弁による優位性が薄れたことが、撤退判断を後押ししました。

構造変化の要因 中国市場の変化 日本企業への影響
デフレ圧力 需要低迷と価格競争の激化 高品質戦略でも利益確保が困難
産業高度化 現地企業の技術力向上 合弁・技術優位の希薄化
地政学リスク 規制・関税の不透明感 長期投資判断の難易度上昇

製造業以外でも、コニカミノルタが事務機器の生産を終了したように、需要構造の変化とサプライチェーン再編が撤退を加速させています。複合機市場の縮小という業界要因に加え、中国に依存しない供給体制を構築すること自体がリスク管理と認識されるようになった点は重要です。三菱自動車やスズキがすでに中国生産から撤退した自動車分野でも、ホンダや日産が構造改革を迫られています。

一方で、撤退は全面的な中国離れを意味しません。多くの企業は「汎用市場」から撤きつつ、「中国でなければ成立しない領域」に限定して残る戦略を採っています。高齢化が急速に進む中国では、介護・ヘルスケア分野や環境・省エネ技術、ファクトリーオートメーションなど、社会課題と直結した市場が拡大しています。規模ではなく必然性で市場を選ぶことが、2026年の対中戦略の核心です。

中国市場で進む構造変化は、日本企業に撤退の勇気と同時に、撤退を設計する技術を求めています。いつ、どの事業を、どの規模で縮小・撤退するのか。その判断の質が、次の成長市場へ資源を振り向けられるかどうかを左右しています。中国はもはや「居続ける市場」ではなく、勝てる理由がある場合にのみ残る市場へと変貌したのです。

それでも中国に残る価値があるニッチ領域とは

それでも中国に残る価値があるニッチ領域とは のイメージ

中国市場からの撤退が相次ぐ一方で、2026年時点でも中国に残る合理性があるニッチ領域は、明確に存在しています。それらに共通する条件は、市場規模の大きさではなく、中国特有の社会課題や政策要請と、日本企業の強みが一点で交差している点にあります。

代表的なのが高齢化関連ビジネスです。国連人口部の推計によれば、中国の65歳以上人口は2030年に約2億人へ達すると見込まれており、すでに日本を上回る高齢者絶対数を抱えています。この急激な高齢化に対し、介護人材・制度・機器のすべてが不足しており、日本の介護ノウハウやリハビリ機器、見守り技術は代替が効きにくい領域として評価されています。

特に注目されているのが、医療と介護の中間に位置する分野です。慢性疾患管理、在宅ケア支援、介護施設向けの業務効率化ソリューションなどは、中国国内企業が価格競争に陥りにくく、日系企業が実証データや運用実績を武器に参入しやすいとされています。世界銀行や中国国家衛生健康委員会も、高齢者医療の効率化を国家課題として繰り返し言及しています。

ニッチ領域 中国側の構造課題 日本企業の優位性
介護・リハビリ 高齢化の急進と人材不足 現場運用ノウハウと機器品質
環境・省エネ 規制強化と脱炭素目標 長期安定稼働する技術力
FA・自動化 人件費上昇と労働力減少 高精度・高耐久の装置設計

環境・省エネルギー分野も依然として有望です。中国政府は第14次五カ年計画以降、工場のエネルギー効率改善や水処理、大気汚染対策を強化しており、単なる設備販売ではなく、長期的な省エネ効果を数値で示せる企業が選別されています。Eurasia Groupは、中国の環境規制は今後も後戻りしないと分析しており、この分野では日本技術への信頼は根強いとされています。

さらに、製造業の自動化需要も底堅く存在します。賃金上昇と若年労働力の減少により、中国企業自身がFA投資を拡大しており、センサーや制御機器、検査装置などの高付加価値領域では、日本企業が価格以外の競争軸を維持しています。ジェトロの調査でも、FA関連は撤退検討比率が相対的に低い分野として報告されています。

2026年の中国で価値があるのは「巨大市場に売る企業」ではなく、「中国の課題解決に不可欠な企業」です

重要なのは、中国を成長市場としてではなく、高度に選別された専門市場として再定義する視点です。汎用製品や価格競争型ビジネスは撤退しつつも、中国でしか成立しないニッチに経営資源を集中させる。この外科手術的な残留戦略こそが、2026年時点で中国に残る唯一の合理的な選択肢と言えます。

インドが生産拠点から必須市場へ変わった理由

かつてインドは、日本企業にとって「中国やASEANを補完する低コスト生産拠点」という位置づけにとどまっていました。しかし2026年時点で、その認識は決定的に変わっています。インドはもはや作る場所ではなく、攻略しなければ中長期の成長が成立しない必須市場へと転換しました。

この変化を支える最大の要因は、内需主導型の高成長です。IMFや世界銀行によれば、インドの2026年実質GDP成長率は6.5%前後と主要国で突出しており、その大半を個人消費と公共投資が占めています。輸出依存度が高い国と異なり、外部ショックに対する耐性が高い点は、企業戦略上きわめて重要です。

特に注目すべきは、中間層の質的変化です。可処分所得の増加により、価格最優先から「品質・ブランド・体験」を重視する消費者が急速に拡大しています。ファーストリテイリングの柳井正会長がインドを中国に次ぐ成長エンジンと位置づけ、将来的に1,000店舗規模を構想していることは、その象徴的な動きです。

観点 従来のインド 2026年時点のインド
主な役割 低コスト生産拠点 巨大消費市場かつ戦略拠点
成長ドライバー 輸出向け製造 内需・中間層消費
企業の関与 限定的投資 本格的コミット

加えて、インド政府の産業政策も市場化を後押ししています。生産連動型優遇策PLIは、単なる雇用創出策ではなく、現地市場向け製品の高度化とサプライチェーン定着を促す設計です。スズキがインドを世界戦略車の輸出拠点としつつ、同時に国内販売を拡大しているのは、地産地消と市場攻略を両立させるモデルケースです。

さらに見逃せないのが、経済安全保障の観点です。Quadを軸とした日印関係の深化や、日本のODAによる高速鉄道・都市インフラ整備は、民間企業にとっての制度的安心材料となっています。JBICなど公的金融機関もインド向け支援を強化しており、投資リスクの相対的低下が進んでいます。

これらを総合すると、インドが必須市場へ変わった本質は「人口が多いから」ではありません。高成長・巨大内需・政策的後押し・地政学的安定性が同時に成立する、数少ない国になった点にあります。この条件を無視したグローバル戦略は、2026年以降、現実的ではなくなりつつあります。

ASEANは一枚岩ではない──国別に異なる勝ち筋

ASEAN市場は一見すると4%台後半の安定成長が続く有望地域に見えますが、**2026年時点では「ASEAN」という括り自体が戦略判断を誤らせるリスク**になっています。世界銀行やIMFの分析でも、域内平均値は実態を覆い隠しており、国ごとの産業構造、規制姿勢、外資受容度の差が決定的になっています。

象徴的なのが製造業の立ち位置です。タイ、ベトナム、インドネシアはいずれも製造拠点として語られてきましたが、2026年には勝ち筋が明確に分岐しています。タイはEVシフトの加速により、中国勢が完成車・電池分野で存在感を急拡大し、日本企業は既存の内燃機関サプライチェーンの再構築を迫られています。一方、ベトナムは最低賃金の平均7.2%引き上げと外国人労働許可の厳格化により、低コスト生産拠点としての魅力が後退しました。

インドネシアは事情がさらに異なります。人口約2.8億人という内需の厚みはASEAN最大ですが、輸入規制や現地調達義務を伴う産業保護政策が強く、単なる輸出拠点ではなく「現地市場を本気で取りに行く企業」だけが報われる構造です。ジェトロやJBICの分析でも、インドネシアでは販売・サービス・アフター領域まで含めた投資が収益性を左右すると指摘されています。

2026年の特徴 日本企業の勝ち筋
タイ EV化と中国勢台頭で産業構造が激変 EV部品・高付加価値工程への転換
ベトナム 賃金上昇と規制強化による成長の踊り場 自動化投資と現地人材主導経営
インドネシア 巨大内需と保護主義の同時進行 現地市場深耕型ビジネスモデル

**重要なのは、ASEAN全体での最適解は存在しないという前提に立つこと**です。国連や世界銀行の成長率予測が示す通り、ASEANは今後も成長しますが、その果実を得られる企業は国別に戦略を切り替えた企業に限られます。かつて有効だった「ASEAN横断で同じ製品を展開するモデル」は、規制・所得水準・競争環境の差によって機能しなくなっています。

2026年のASEAN戦略は、拠点分散ではなく拠点最適化のフェーズに入りました。どの国で勝つのか、どの国では守りに徹するのかを明確に線引きできるかどうかが、日本企業の明暗を分けています。

アフリカで黒字企業が増える背景と第三国連携

2026年時点でアフリカ市場を巡る最大の変化は、進出日系企業の収益構造が明確に改善している点です。ジェトロの「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)」によれば、黒字企業比率は2年連続で過去最高を更新しており、もはやアフリカは将来性だけを語る市場ではなく、実際に利益を生むフェーズに入ったと評価されています。

背景には、人口増加と都市化の進展による内需拡大に加え、各国政府がインフラ・エネルギー・消費財分野への投資を加速させている点があります。特にケニアやナイジェリアでは自動車関連需要、南アフリカではエネルギー・鉱業関連投資が堅調で、日本企業が強みを持つ高耐久・高品質製品が価格競争に巻き込まれにくい構造が生まれています。

もう一つの重要な要因が、第三国連携モデルの定着です。アフリカでは単独進出よりも、現地に深いネットワークを持つ第三国企業と組むことで、立ち上げコストと事業リスクを大幅に低減するケースが増えています。ジェトロ調査でも、連携先として最も多いのはフランス企業、次いでインド企業とされています。

連携相手国 主な地域 連携の強み
フランス 西アフリカ(仏語圏) 商社網・行政対応力・金融アクセス
インド 東アフリカ(英語圏) 印僑ネットワーク・中価格帯市場理解

象徴的な事例が、豊田通商グループによるCFAOの活用です。フランス系商社が築いた販売・物流網を通じて、トヨタ車や医薬品、生活必需品を広域展開し、国単位ではなく地域単位での黒字化を実現しています。これは自前主義にこだわらず、既存の商流を買うという発想転換の成功例と言えます。

また、インド企業との連携では、価格感度の高い層向けの商品設計や人材マネジメントにおいて相互補完が進んでいます。世界銀行や国連の分析でも、アフリカ市場では中間所得層向けの実用型製品が最も成長余地が大きいとされており、日本企業単独では届きにくいゾーンを第三国パートナーが橋渡ししています。

アフリカで黒字企業が増えている本質は、市場の成熟そのものよりも、進出手法が高度化した結果にあります。第三国連携を前提に、リスクを分散しながら需要の芯を捉える戦略こそが、2026年型アフリカビジネスの勝ち筋として定着しつつあります。

中南米で進むニアショアリングと資源戦略

中南米は2026年において、米国主導のニアショアリングと資源戦略が重なり合う戦略地域として再評価されています。特にメキシコ、ブラジル、チリは、サプライチェーン再編と経済安全保障の両面で存在感を高めています。地理的近接性だけでなく、通商制度と資源ポテンシャルが投資判断を左右する局面に入っています。

メキシコはUSMCAの枠組みの下、対米輸出拠点としての地位を維持しています。ジェトロによれば、日本企業の対メキシコ直接投資はニアショアリング需要を背景に増勢が続いています。一方で、米国の通商政策、とりわけ原産地規則の厳格化リスクが顕在化しており、日本企業は完成品輸出型から、現地調達率を高める製造・調達一体型モデルへと戦略を転換しています。

戦略的役割 主な留意点
メキシコ 対米ニアショア生産拠点 USMCA原産地規則
ブラジル 資源・内需型巨大市場 税制・規制の複雑さ
チリ 重要鉱物の安定供給国 環境・社会配慮要件

資源戦略の観点では、脱炭素と電動化の進展が中南米の価値を押し上げています。チリは世界有数の銅・リチウム供給国として位置づけられ、JBICは銅鉱山開発や関連インフラへの融資を強化しています。ブラジルでも、鉄鋼分野におけるグリーンスチール構想が進み、日本の技術と金融を組み合わせた官民連携が展開されています。

国際通貨基金やJBICの分析によれば、中南米での成功は短期的なコスト優位ではなく、長期の制度対応力と現地パートナーシップにかかっています。ニアショアリングと資源外交を一体で捉え、自社の技術や調達力をどこで、どの国と組み合わせるかが、2026年以降の競争力を左右します。

サプライチェーン再編とAI時代の新たな制約条件

2026年におけるサプライチェーン再編は、単なる生産拠点の移転ではなく、AI時代特有の新たな制約条件を織り込んだ高度な経営判断へと進化しています。最大の変化は、**データ・電力・地政学という三つの要素が、供給網の設計そのものを規定し始めている点**です。従来は人件費や物流コストが主因でしたが、AI活用が前提となることで、最適地の定義が根本から変わりました。

特に顕著なのが、AI導入と電力インフラの関係です。国際エネルギー機関や世界銀行の分析によれば、AIを活用する製造業やデータセンターは、安定した電力供給がなければ成立しません。グローバルサウスの多くの国では停電や電圧変動が日常的であり、**AIによる需要予測や自動化を進めたくても、電力がボトルネックとなり投資回収が不安定になる**ケースが報告されています。

この制約は、サプライチェーン再編の優先順位にも影響を与えています。インドやマレーシアが「次の製造ハブ」として評価される背景には、人口規模や市場性だけでなく、データセンター建設が相次ぐほどの電力・通信インフラの相対的な安定があります。IMFやJBICの関係者も、インフラ整備の進度が今後の投資選別を左右すると指摘しています。

制約条件 企業活動への影響 再編上の示唆
電力供給の不安定さ AI・自動化投資の稼働率低下 電力網が整う国への集中
データ越境規制 需要予測や統合管理の分断 地域別サプライチェーン設計
地政学リスク 関税・輸出規制の突発化 中国非依存ルートの確保

もう一つの見落とされがちな制約が、データの扱いです。AI時代のサプライチェーンでは、生産計画や在庫情報がリアルタイムで統合されますが、各国のデータローカライゼーション規制がこれを阻みます。国連やEurasia Groupによれば、**データ越境を前提とした一元管理モデルは、2026年時点ですでに現実的ではなくなりつつあります**。

その結果、多くの日本企業はサプライチェーンを「物理的にもデジタル的にも分断した上で最適化する」方向へ舵を切っています。中国向け、中国を含まないグローバル向けといった二重構造に加え、AIモデル自体も地域別に最適化する動きが進んでいます。これは効率性を犠牲にする一方で、規制順守と事業継続性を確保するための現実解です。

**AIは万能の加速装置ではなく、インフラと制度に強く依存する技術である**という前提に立つことが、2026年のサプライチェーン再編では不可欠です。低コストや成長率だけでなく、電力、データ、政治の三点を同時に満たす国・地域を選別できるかどうかが、次の競争優位を決定づけています。

参考文献

Reinforz Insight
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