編集部
近年、グローバルな経済の動向や技術の革新、さらには環境問題や政治的変動など、多岐にわたる要因が世界の港湾運送業界に影響を与えています。これらの背景のもと、どの港湾運送会社が業界をリードし、どのような変動が見られるのかは、多くの関心を集めています。
2023年の最新データを基に、時価総額TOP100の港湾運送会社を特集します。このランキングを通じて、現在の業界の動向や将来の展望について深く掘り下げていきます。
世界の港湾運送会社ランキング：時価総額TOP100
下記の世界の港湾運送会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 地域の集中度
- 中国がこのリストの中で非常に強い存在感を放っています。合計で24社が中国に所在しています。
- 次に、日本も15社でリストに名を連ねています。
- その他、インドネシアやインドも複数社でリスト内に位置しています。
- 時価総額
- 1位の「PT Bayan Resources Tbk」は55,196億円と、2位の「A. P. Moller Maersk A/S」の45,306億円よりも約10,000億円高い。
- 1位と100位の差はかなり大きく、1位が55,196億円なのに対し、100位の「Grupo TMM SA」は11億円である。
- 業種や活動内容
- 多くの企業が港湾関連や輸送業務、物流関連の事業を行っていることが推測されます。
- トップ5
- トップ5の企業はアジアを中心に、ヨーロッパ、北米からも1社ずつ入っています。
- 1位はインドネシア、2位はデンマーク、3位と4位はアジアの大国、インドと中国からで、5位はバミューダに所在しています。
- 時価総額の中央値
- リストの中央に位置する50位の「Asian Terminals Inc」の時価総額は701億円です。これは、上位と下位の企業の時価総額の大小を知るための参考点として役立ちます。
この分析から、アジアの特に中国や日本の港湾や物流関連の企業がランキングに強く名を連ねていること、またトップの企業と中央、下位の企業との時価総額の差が非常に大きいことがわかります。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位：PT Bayan Resources Tbk（インドネシア）
PT Bayan Resources Tbkは、主に石炭の採掘・生産に従事する大手企業です。
石炭市場の需要に応えて効率的な生産を実施していること、またアジア地域での石炭の需要が高いことが背景と考えられます。
2位：A. P. Moller Maersk A/S（デンマーク）
世界最大級の船舶・物流会社で、コンテナ輸送、ターミナル運営、油田開発など多岐にわたる事業を展開しています。
世界中の主要港にサービスを提供しており、物流ネットワークの充実とともに、多岐にわたる事業展開が評価されているため。
3位：Adani Ports & Special Economic Zone Ltd（インド）
インドの大手港湾・物流会社で、インド国内の主要港を運営しています。
インドの経済成長とともに、インフラの拡充が急速に進行しており、Adani Portsはその中心的な役割を果たしているため。
4位：Shanghai International Port (Group) Co Ltd（中国）
上海の港を中心に、コンテナ輸送、貨物輸送、物流サービスなどを提供する大手企業です。
上海はアジアの主要な物流ハブの一つであり、その中心としての役割を果たしていること、中国の経済活動の中心地の一つであるため。
5位：Brookfield Infrastructure Partners LP（バミューダ）
グローバルなインフラ資産を持つ企業で、エネルギー、輸送、ユーティリティなど幅広いセクターに事業を展開しています。
世界中の多様なインフラ投資を通じて安定した収益を上げており、その多角的な事業展開とグローバルなネットワークが評価されているため。
以上の企業は、それぞれが持つ地域やセクターにおけるリーダーシップ、業界内での強固なポジション、継続的な成長と革新によって、ランキング上位に位置していると考えられます。
【世界の港湾運送会社ランキング：時価総額TOP100リスト】
※対象となる港湾運送会社として「上場企業」かつ「港湾運送業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点（2023年7月26日）の株価および為替レートで算出
| ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額（億円） |
| 1 | PT Bayan Resources Tbk | インドネシア | 2022/12 | 55,196 |
| 2 | A. P. Moller Maersk A/S | デンマーク | 2022/12 | 45,306 |
| 3 | Adani Ports & Special Economic Zone Ltd | インド | 2023/03 | 25,820 |
| 4 | Shanghai International Port (Group) Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 23,290 |
| 5 | Brookfield Infrastructure Partners LP | バミューダ | 2022/12 | 21,783 |
| 6 | Ningbo Zhoushan Port Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 12,824 |
| 7 | International Container Terminal Services Inc | フィリピン | 2022/12 | 10,273 |
| 8 | Qingdao Port International Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 8,113 |
| 9 | China Merchants Port Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 8,008 |
| 10 | China Merchants Port Holdings Co Ltd | 香港 | 2022/12 | 7,453 |
| 11 | Liaoning Port Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 7,266 |
| 12 | Container Corporation of India Ltd | インド | 2023/03 | 6,742 |
| 13 | Qube Holdings Ltd | オーストラリア | 2022/06 | 4,742 |
| 14 | Guangzhou Port Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 4,729 |
| 15 | FTAI Aviation Ltd | アメリカ | 2022/12 | 4,441 |
| 16 | Tangshan Port Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 4,132 |
| 17 | Cargotec Oyj | フィンランド | 2022/12 | 4,036 |
| 18 | 上組 | 日本 | 2023/03 | 3,718 |
| 19 | Westports Holdings Bhd | マレーシア | 2022/12 | 3,680 |
| 20 | Port of Tauranga Ltd | ニュージーランド | 2022/06 | 3,557 |
| 21 | Qinhuangdao Port Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 3,449 |
| 22 | 山九 | 日本 | 2023/03 | 2,930 |
| 23 | COSCO SHIPPING Ports Ltd | 香港 | 2022/12 | 2,766 |
| 24 | Beibu Gulf Port Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 2,735 |
| 25 | Tianjin Port Holding Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 2,481 |
| 26 | Hutchison Port Holdings Trust | シンガポール | 2022/12 | 2,246 |
| 27 | Santos Brasil Participacoes SA | ブラジル | 2022/12 | 2,175 |
| 28 | Shenzhen Yan Tian Port Holdings Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 2,117 |
| 29 | Westshore Terminals Investment Corp | カナダ | 2022/12 | 1,926 |
| 30 | Huaihe Energy (Group) Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,873 |
| 31 | Novorossiysk Commercial Sea Port PJSC | ロシア連邦 | 2020/12 | 1,764 |
| 32 | Rizhao Port Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,740 |
| 33 | Sociedad Matriz SAAM SA | チリ | 2022/12 | 1,458 |
| 34 | Log-In Logistica Intermodal SA | ブラジル | 2022/12 | 1,304 |
| 35 | Evergreen International Storage & Transp | 台湾 | 2022/12 | 1,247 |
| 36 | Hamburger Hafen und Logistik AG | ドイツ | 2022/12 | 1,232 |
| 37 | Irish Continental Group PLC | アイルランド | 2022/12 | 1,172 |
| 38 | Jinzhou Portco Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,167 |
| 39 | Xiamen Port Development Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,112 |
| 40 | Jiangsu Lianyungang Port Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,021 |
| 41 | Hextar Technologies Solutions Bhd | マレーシア | 2022/03 | 1,003 |
| 42 | Gemadept Corp | ベトナム | 2022/12 | 973 |
| 43 | Zhuhai Port Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 973 |
| 44 | Gujarat Pipavav Port Ltd | インド | 2023/03 | 969 |
| 45 | Chongqing Port Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 945 |
| 46 | 三井倉庫ホールディングス | 日本 | 2023/03 | 871 |
| 47 | 丸全昭和運輸 | 日本 | 2023/03 | 845 |
| 48 | Piraeus Port Authority SA | ギリシャ | 2022/12 | 813 |
| 49 | Logistec Corp | カナダ | 2022/12 | 796 |
| 50 | Asian Terminals Inc | フィリピン | 2022/12 | 701 |
| 51 | Bintulu Port Holdings Bhd | マレーシア | 2022/12 | 696 |
| 52 | Nanjing Port Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 647 |
| 53 | Gateway Distriparks Ltd | インド | 2023/03 | 608 |
| 54 | Ocean Wilsons Holdings Ltd | バミューダ | 2022/12 | 589 |
| 55 | Tianjin Port Development Holdings Ltd | 香港 | 2022/12 | 576 |
| 56 | EUROKAI GmbH & Co KGaA | ドイツ | 2022/12 | 566 |
| 57 | PT Samudera Indonesia Tbk | インドネシア | 2022/12 | 550 |
| 58 | Luka Koper d.d | スロベニア | 2022/12 | 467 |
| 59 | 澁澤倉庫 | 日本 | 2023/03 | 441 |
| 60 | 名港海運 | 日本 | 2023/03 | 403 |
| 61 | Transimex Corp | ベトナム | 2022/12 | 367 |
| 62 | PT Kawasan Industri Jababeka Tbk | インドネシア | 2022/12 | 319 |
| 63 | China Infrastructure & Logistics Group Ltd | 香港 | 2022/12 | 270 |
| 64 | Puerto Ventanas SA | チリ | 2022/12 | 269 |
| 65 | Vietnam Container Shipping JSC | ベトナム | 2022/12 | 242 |
| 66 | PT Nusantara Pelabuhan Handal Tbk | インドネシア | 2022/12 | 230 |
| 67 | 伊勢湾海運 | 日本 | 2023/03 | 195 |
| 68 | Chu Kong Shipping Enterprises (Group) Co Ltd | 香港 | 2022/12 | 187 |
| 69 | Namyong Terminal PCL | タイ | 2022/12 | 178 |
| 70 | PT Nusantara Infrastructure Tbk | インドネシア | 2022/12 | 172 |
| 71 | Chien Shing Harbour Service Co., Ltd. | 台湾 | 2022/12 | 161 |
| 72 | Navkar Corp Ltd | インド | 2023/03 | 147 |
| 73 | Hans Energy Co Ltd | 香港 | 2022/12 | 138 |
| 74 | Dinh Vu Port Investment & Development JSC | ベトナム | 2022/12 | 135 |
| 75 | Suria Capital Holdings Bhd | マレーシア | 2022/12 | 133 |
| 76 | Sical Logistics Ltd | インド | 2022/03 | 127 |
| 77 | PT Indonesia Kendaraan Terminal Tbk | インドネシア | 2022/12 | 123 |
| 78 | China Container Terminal Corp. | 台湾 | 2022/12 | 120 |
| 79 | PT Dwi Guna Laksana Tbk | インドネシア | 2022/12 | 120 |
| 80 | Sun Kwang Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 120 |
| 81 | 東洋埠頭 | 日本 | 2023/03 | 106 |
| 82 | Singapore Shipping Corp Ltd | シンガポール | 2023/03 | 103 |
| 83 | 東海運 | 日本 | 2023/03 | 84 |
| 84 | Blue River Holdings Ltd | 香港 | 2023/03 | 78 |
| 85 | 大東港運 | 日本 | 2023/03 | 68 |
| 86 | Prime Oil Chemical Service Corporation | 台湾 | 2022/12 | 66 |
| 87 | アサガミ | 日本 | 2023/03 | 64 |
| 88 | Begistics PCL | タイ | 2022/12 | 46 |
| 89 | Viet Nam Petroleum Transport JSC | ベトナム | 2022/12 | 45 |
| 90 | 伏木海陸運送 | 日本 | 2022/06 | 42 |
| 91 | リンコーコーポレーション | 日本 | 2023/03 | 42 |
| 92 | Sahathai Terminal PCL | タイ | 2022/12 | 29 |
| 93 | 櫻島埠頭 | 日本 | 2023/03 | 28 |
| 94 | EA Technique (M) Bhd | マレーシア | 2022/12 | 27 |
| 95 | 兵機海運 | 日本 | 2023/03 | 25 |
| 96 | 大運 | 日本 | 2023/03 | 24 |
| 97 | Sanco Trans Ltd | インド | 2023/03 | 20 |
| 98 | トレーディア | 日本 | 2023/03 | 19 |
| 99 | Harbor Star Shipping Services, Inc | フィリピン | 2022/12 | 19 |
| 100 | Grupo TMM SA | メキシコ | 2022/12 | 11 |
出典：各社プレスリリースなど
世界の港湾運送会社ランキングの有用性
港湾運送会社のランキングを参照することには多くの有用性があります。以下にいくつかの主な点を挙げます。
- 投資判断の基準: 投資家は、業界のトップ企業を特定して投資判断を下す際の参考情報としてランキングを使用することができます。高いランキングの会社は、安定した運営や強固な業界内の地位を示す可能性があります。
- 市場動向の把握: トップの港湾運送会社の動向を追うことで、市場の現在の状況や将来のトレンドを掴むことができます。例えば、アジアの企業がランキングで高い位置を占めている場合、アジア市場の拡大やその重要性を示唆する可能性があります。
- ビジネス戦略の参考: 他の港湾運送会社や関連業界の企業は、ランキングを参考に自社の競合分析や戦略の策定を行うことができます。
- パートナーシップの検討: 企業が新しいビジネスパートナーを探している場合、ランキングは信頼性や業績を示す指標として役立ちます。高いランキングの企業との提携や協業を検討することで、ビジネスの拡大や新たな市場への進出が期待できます。
- 業界の健全性の指標: トップの企業が健全な財務状態や高い時価総額を持っている場合、それは業界全体の健全性を示す可能性があります。
- イメージやブランドの向上: 企業がランキング上位に位置すると、その事実をマーケティングやPRの材料として使用することができます。これは企業のイメージやブランド価値の向上に貢献する可能性があります。
- 消費者の選択の基準: 企業としての取引や消費者としてのサービスの利用時に、ランキング情報は信頼性やサービスの質を判断する一つの基準となる可能性があります。
以上のように、港湾運送会社のランキングは、多方面での意思決定や情報収集の際に非常に有用な情報を提供します。ただし、ランキングだけを鵜呑みにせず、他の情報やデータも組み合わせて総合的な判断を行うことが重要です。
世界の港湾運送会社ランキング：変化を与える要素
世界の港湾運送会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
経済の動向
世界経済の拡大や縮小は、貿易量の増減として反映され、港湾運送業界に影響を与えます。
特定地域や国の経済成長は、その地域の港湾運送会社の業績やランキングに影響を与える可能性があります。
技術の進化
IT技術や物流技術の進化は、物流の効率やコストを改善させ、企業の競争力を高める要因となることがあります。
環境問題と持続可能性
環境対策や持続可能な事業運営を強化する企業は、イメージの向上や新しい市場の開拓が期待されることがあります。
政治的・法的要因
貿易戦争、制裁、法規制の変更など、政治や法律の変動は、港湾運送会社の業績やランキングに大きな影響を与えることがあります。
インフラの整備
港湾や物流インフラの整備や拡張は、その地域の港湾運送業の成長を促進します。
企業の経営戦略
新しい市場への進出、M&A、新サービスの開発など、企業独自の戦略や取り組みは、その企業のランキングに変化をもたらす可能性があります。
競合との関係
新しい競合の登場や既存競合との競争激化は、ランキングの変動を引き起こす要因となり得ます。
災害や緊急事態
天災やパンデミックなどの緊急事態は、物流や供給チェーンに大きな影響を与え、港湾運送会社の業績やランキングに影響を与えることがあります。
これらの要因は、一つ一つが独立して影響を与えるわけではなく、しばしば相互に関連しながら複雑に作用します。したがって、ランキングの変動を分析する際には、これらの要因を総合的に考慮する必要があります。
まとめ
2023年の世界の港湾運送会社ランキング時価総額TOP100を振り返ると、多様な外部要因が業界の変動を生んでいることが確認できます。特定の地域や国の経済成長、新たな技術の導入、環境対応の取り組み、政治的な変動といった要因が、ランキング内での上昇や下降の主要な原因となっています。
このランキングは単なる数字以上のもので、これからのグローバルな物流業界の方向性を予測する鍵となるでしょう。業界の関係者や投資家、そして一般の方々にとって、このランキングが今後の戦略やビジョンの策定に役立てられることを期待します。