内航海運業界は、世界の経済成長や貿易動向と密接に関わるビジネスであり、その動向は各国の経済状況や地政学的変動を映し出す鏡のような存在です。近年、燃料価格の変動、環境規制の強化、技術革新など、多岐にわたる要因によって業界内でのポジションが激しく変動しています。この記事では、2023年の最新のデータを基に、時価総額でランク付けされた世界の内航海運会社TOP47を取り上げ、その背後にある要因や動向を深堀りします。

世界の内航海運会社ランキング:時価総額TOP47

下記の世界の内航海運会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。

このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。

  • 国別の企業分布
    • 中国がリストの上位に複数の企業を持つことが目立ちます。具体的には、1位から4位までと、7位、11位、13位、14位に位置しています。
    • インドネシアの企業も多数ランクインしており、中下位に集中しています。
    • 日本の企業は下位に集中しています。

  • 時価総額の差
    • 1位の「COSCO SHIPPING Holdings Co Ltd」の時価総額は30,531億円で、2位の約2倍以上の差があります。
    • リストの下位に行くほど、時価総額の差が小さくなっています。

  • 時価総額の範囲
    • 上位3社の時価総額は、それぞれ30,531億円、12,743億円、6,155億円と非常に大きな差がありますが、4位以下は4,229億円から1億円までの幅が狭くなっています。

  • 地域の特徴
    • アジアの企業がリストの大部分を占めており、特に中国とインドネシアの企業が多いです。
    • アメリカやアイルランドなどの西洋の国の企業はリストに少なく、アジア地域の海運業が活発であることが伺えます。

  • 時価総額の下位企業
    • リストの40位以下の企業は、時価総額が100億円以下であり、特に45位以下は10億円以下と非常に低い水準になっています。

以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。

1位:COSCO SHIPPING Holdings Co Ltd(中国)

COSCO SHIPPING Holdings Co Ltd は、中国の最大の船舶運送会社の一つとして知られ、国際的にもその名が知られています。これにはコンテナ運送、ドライブルク運送などが含まれます。


COSCOは中国という世界の主要な貿易国に拠点を持っており、また、世界中の多くの港にサービスを提供しているため、その規模と収益性は非常に高いです。

2位:COSCO SHIPPING Energy Transportation Co Ltd(中国)

この会社はCOSCOグループの一部として、エネルギー関連の運送、特に石油や天然ガスなどの液体貨物の運送を専門としています。


エネルギー関連の運送は、常に需要が高く、また高収益を上げることができる分野です。中国はエネルギー輸入に大きく依存しており、このニーズを満たすための主要な運送会社としての役割が、時価総額の増加に寄与していると考えられます。

3位:Kirby Corp(アメリカ)

Kirbyはアメリカを拠点とするタンカーやバージの運航会社で、主に内陸や沿岸の輸送を担当しています。


アメリカは巨大な経済大国であり、内陸輸送の需要も非常に高いです。Kirbyは、特に化学品や石油製品の輸送を得意としており、安定した需要に応えて収益を上げています。

4位:Shanghai Zhonggu Logistics Co Ltd(中国)

この企業は、コンテナの輸送やロジスティクスサービスを提供する中国の会社です。


中国は世界の製造業のハブとしての地位を保持しており、製品の輸出入のためのロジスティクスサービスの需要は非常に高い。この需要を満たす主要なプレーヤーとして、Shanghai Zhongguは高い収益性を維持しています。

5位:Matson Inc(アメリカ)

Matsonは、アメリカを拠点とする船舶運送会社で、太平洋地域を中心にサービスを提供しています。


太平洋地域は多くの島々から成っており、船舶による輸送が欠かせない。Matsonはこの地域の主要な運送会社として、多くのルートをカバーしており、安定した需要と収益を得ています。

【世界の内航海運会社ランキング:時価総額TOP47リスト】

※対象となる内航海運会社として「上場企業」かつ「内航海運業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年7月26日)の株価および為替レートで算出

ランキング企業名所在国決算期 (決算期)時価総額(億円)
1COSCO SHIPPING Holdings Co Ltd中国2022/1230,531
2COSCO SHIPPING Energy Transportation Co Ltd中国2022/1212,743
3Kirby Corpアメリカ2022/126,155
4Shanghai Zhonggu Logistics Co Ltd中国2022/124,229
5Matson Incアメリカ2022/124,202
6PT Transcoal Pacific Tbkインドネシア2022/123,336
7Hainan Strait Shipping Co Ltd中国2022/122,697
8PT Temas Tbkインドネシア2022/121,402
9Log-In Logistica Intermodal SAブラジル2022/121,304
10Irish Continental Group PLCアイルランド2022/121,172
11Ningbo Marine Co Ltd中国2022/12814
12Prima Marine PCLタイ2022/12637
13Bohai Ferry Group Co Ltd中国2022/12636
14Chang Jiang Shipping Group Phoenix Co Ltd中国2022/12575
15Algoma Central Corpカナダ2022/12573
16PT Samudera Indonesia Tbkインドネシア2022/12550
17Transimex Corpベトナム2022/12367
18Hong Kong Ferry (Holdings) Co Ltd香港2022/12314
19PT Sillo Maritime Perdana Tbkインドネシア2022/12313
20PT Pelita Samudera Shipping Tbkインドネシア2022/12254
21Shin Yang Group Bhdマレーシア2022/06212
22PT Mitrabahtera Segara Sejati Tbkインドネシア2022/12207
23PT Wintermar Offshore Marine Tbkインドネシア2022/12146
24PT Jasa Armada Indonesia Tbkインドネシア2022/12132
25Swift Haulage Bhdマレーシア2022/12129
26PT AirAsia Indonesia Tbkインドネシア2022/12128
27PT Buana Lintas Lautan Tbkインドネシア2022/12119
28PT Soechi Lines Tbkインドネシア2022/12116
29PT Trans Power Marine Tbkインドネシア2022/12112
30栗林商船日本2023/0391
31東海運日本2023/0384
32Anek Lines SAギリシャ2021/1279
33東京汽船日本2023/0362
34Oricon Enterprises Ltdインド2023/0357
35Krungdhep Sophon PCLタイ2022/1255
36東海汽船日本2022/1255
37PT Pelayaran Nasional Bina Buana Raya Tbkインドネシア2022/1248
38Viet Nam Petroleum Transport JSCベトナム2022/1245
39Ever Harvest Group Holdings Ltd香港2022/1241
40玉井商船日本2023/0331
41Nam Cheong Ltdシンガポール2022/1230
42PT Rig Tenders Indonesia Tbkインドネシア2022/0628
43兵機海運日本2023/0325
44Raja Ferry Port PCLタイ2022/1211
45Lorenzo Shipping Corpフィリピン2022/127
46PT Pelayaran Tamarin Samudra Tbkインドネシア2022/123
47Scomi Energy Services Bhdマレーシア2022/061

出典:各社プレスリリースなど

世界の内航海運会社ランキングの有用性

内航海運会社のランキングを評価する際の有用性について詳しく考えると、以下のような点が挙げられます。

  • 市場認識の向上:ランキングは、市場での主要なプレーヤーやその規模・影響力を明らかにします。これにより、投資家、取引先、顧客などが、どの企業がその分野でリーダーや主要プレーヤーであるかをすぐに理解することができます。

  • 投資判断の参考:投資家やアナリストはランキングを利用して、各企業の安定性、成長性、市場での地位などを評価する材料として活用します。上位企業は一般に、安定した経営基盤や強固な市場地位を持っていると認識されるため、投資判断の参考として価値があります。

  • 業界のトレンドや動向の把握:ランキングの変動や新たにランクインする企業の存在は、業界内での最新の動向やトレンドを示唆します。これを通じて、新興企業の台頭や従来の大手企業の衰退など、業界の変化をリアルタイムで捉えることができます。

  • 企業の自己評価と目標設定:企業自身もランキングを利用して、自社の業界内での位置付けや競争力を評価することができます。ランキング上位を目指すことで、社内のモチベーション向上や目標設定の具体的な指標として活用することができます。

  • 消費者の選択の参考:消費者やビジネスパートナーは、ランキングを参考にしてサービスを利用する企業を選択することができます。上位の企業は、信頼性やサービスの質が高いと認識されることが多いため、消費者の選択を助ける情報としてランキングが活用されます。

  • 業界の健全性の指標:ランキングに多様性が見られるか、あるいは特定の企業が独占的な地位を持っているかなど、ランキングの構成は業界の健全性や競争状況を示す指標として解釈されることがあります。

しかし、ランキングはあくまで一つの評価軸であり、企業の総合的な実力や業界の健全性を完全に反映するものではありません。利用する際には、その背景や評価基準を正確に理解し、他の情報と併せて判断することが重要です。

世界の内航海運会社ランキング:変化を与える要素

世界の内航海運会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。

経済の成長・変動


国や地域の経済成長は、貨物需要の増加を引き起こすことがあります。一方、経済の減速や不況は、輸送ニーズの減少を招くことがあり、内航海運会社の収益に影響を及ぼす可能性があります。

燃料価格の変動


石油価格や代替燃料の価格変動は、運賃や運営コストに大きな影響を及ぼすことがあります。特に、燃料価格の急激な上昇は、薄利の業界である内航海運にとって大きな打撃となることがあります。

環境規制


排出ガス規制やバラスト水規制など、環境に関する新しい規制は、船舶の改修や更新を必要とすることがあります。これにより、運営コストが増加することが予想されます。

技術革新


自動化やデジタル技術の進化は、業界の効率化やサービスの向上をもたらす可能性があります。先進的な技術を採用した企業は、競争優位を築くことができるかもしれません。

インフラの整備


港湾や水路の整備は、効率的な運航を支えます。逆に、インフラが十分でない場所では、運航が困難になることがあります。

安全規制


海難事故や安全問題が発生すると、新たな安全規制が導入されることがあります。これにより、運営コストが増加することが予想されます。

地政学的要因


戦争、政治的不安、経済制裁などの地政学的要因は、特定の地域や航路の利用に制限をもたらす可能性があります。

契約や業務提携


大手顧客との長期契約や他の海運会社との業務提携は、企業の安定した収益をサポートします。

経営戦略


企業の経営戦略や投資判断、コスト削減策などは、その業績や市場での位置づけに大きな影響を及ぼすことがあります。

これらの要因は、内航海運会社のランキングに変動をもたらす可能性があります。しかし、これらの要因は常に動的であり、状況によって影響の度合いや方向性が変わることがあります。

まとめ

2023年の世界の内航海運会社ランキング時価総額TOP47を見ると、アジアの勢力が非常に強いことが確認できます。特に中国とインドネシアの企業がランキング上位を独占していることが際立っています。これは、これらの国々の経済成長と内航の需要増加が大きく関係していると考えられます。また、技術の進化や環境への配慮という共通の課題を持ちつつ、各社がそれぞれの戦略で業界の中での位置を築いていることが見て取れます。今後も、これらの動向は世界経済の変動や業界の技術革新とともに進化していくことでしょう。業界の今後の変動と、それに伴うランキングの変化にも目が離せません。

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