近年、経済のグローバル化や都市化の進行、さらには環境への意識の高まりといった背景から、鉄道業界の動向がますます注目されています。鉄道はエコフレンドリーな交通手段としての位置付けが強まり、多くの国で新路線の開発や技術革新が進められています。また、経済活動や観光需要の増加に伴い、各鉄道会社のビジネスモデルや収益性にも大きな変動が見られる時代となっています。

そこで今回、時価総額に基づく2023年版の世界の鉄道会社ランキングをご紹介します。このランキングを通じて、世界の鉄道産業の現状と今後のトレンドを掴んでいただければ幸いです。

世界の鉄道会社ランキング:時価総額TOP65

下記の世界の鉄道会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。

このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。

  • 国別企業数
    • 日本: 24社
    • 中国: 7社
    • アメリカ: 3社
    • カナダ: 2社
    • フランス: 3社
    • その他(香港、台湾、インド、オーストラリア、タイ、シンガポール、ブラジル、ロシア連邦、イギリス、スイス、ドイツ、イタリア、ポーランド、フィリピン、チリ): 各1社
    一番多いのは日本で、ランキング上位50社のうち約半分が日本の企業です。

  • 業種
    • 大部分の企業は鉄道関連の企業であることがわかる。この中にも高速鉄道、地下鉄、通常の鉄道などさまざまな種類が含まれています。
    • その他、物流やコンテナ関連の企業もいくつかランキングに入っています。

  • 時価総額の範囲
    • 最も高い時価総額はUnion Pacific Corpの175,389億円で、最も低いのはArshiya Ltdの21億円です。
    • トップ5の企業は時価総額が86,000億円以上です。

  • 地域的な特徴
    • 北アメリカ(アメリカとカナダ)の鉄道関連企業はトップ10内に複数社ランクインしており、特にUnion Pacific Corpはランキング1位で非常に大きな影響力を持っていることがわかります。
    • 中国の企業もトップ10内に複数社入っており、中国の鉄道およびエネルギー関連企業の規模と影響力が大きいことが示唆されます。

  • 日本の企業について
    • 日本の企業はリストの中で最も多いが、トップ10内に入っているのは2社のみです。
    • 一方、中位から下位にかけての密度が高く、多くの中小規模の鉄道関連企業がランキングに名を連ねています。

この分析から、特に北アメリカと中国の鉄道関連企業が大規模であること、日本には多くの鉄道関連企業が存在するが、それぞれの企業の規模は比較的小さいことなどがわかります。

以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。

1位:Union Pacific Corpアメリカ

アメリカ合衆国の大手鉄道会社で、アメリカ中西部と西部を中心に幅広いネットワークを持っている。

アメリカ国内の鉄道輸送市場での強固な地位、効率的な運営モデル、広大なネットワーク、そして安定した収益モデルの結果としての高い時価総額。

2位:China Shenhua Energy Co Ltd中国

中国最大の石炭企業であり、石炭の採掘から輸送、発電までの一連の業務を手掛けている。

中国の急成長するエネルギー市場におけるリーディングカンパニーとしての地位、広範囲にわたる事業展開、継続的な収益成長

3位:Canadian National Railway Coカナダ

カナダの大手鉄道会社で、北米全域にネットワークを有する。

カナダおよび北米の鉄道輸送市場での強い地位、多岐にわたるサービス提供、効率的な資産運用による高い収益性

4位:Canadian Pacific Kansas City Ltdカナダ

カナダのもう一つの主要な鉄道運営会社で、北米全体での運営ネットワークを持つ。

北米の鉄道輸送における競争力、安定した収益モデル、広大な運営ネットワーク、そして効率的な運営

5位:CSX Corpアメリカ

アメリカの東部地域を中心に運営する大手鉄道会社。

アメリカ東部での強固な市場地位、効率的な鉄道ネットワーク、安定した収益性および資産の適切な管理

これらの企業は、それぞれの地域や市場におけるリーディングカンパニーであり、効率的な運営モデルや戦略的な投資により、高い収益性と市場価値を維持しています。

【世界の鉄道会社ランキング:時価総額TOP65リスト】

※対象となる鉄道会社として「上場企業」かつ「鉄道業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年7月26日)の株価および為替レートで算出

ランキング企業名所在国決算期 (決算期)時価総額(億円)
1Union Pacific Corpアメリカ2022/12175,389
2China Shenhua Energy Co Ltd中国2022/12104,741
3Canadian National Railway Coカナダ2022/12101,614
4Canadian Pacific Kansas City Ltdカナダ2022/1298,020
5CSX Corpアメリカ2022/1286,422
6Norfolk Southern Corpアメリカ2022/1270,387
7Beijing-Shanghai High Speed Railway Co Ltd中国2022/1251,644
8MTR Corp Ltd香港2022/1237,758
9東海旅客鉄道日本2023/0336,040
10東日本旅客鉄道日本2023/0329,226
11Daqin Railway Co Ltd中国2022/1220,748
12西日本旅客鉄道日本2023/0313,937
13Getlink SEフランス2022/1212,066
14阪急阪神ホールディングス日本2023/0311,687
15東急日本2023/0310,692
16京成電鉄日本2023/0310,072
17近鉄グループホールディングス日本2023/038,801
18東武鉄道日本2023/037,654
19Taiwan High Speed Rail Corporation台湾2022/127,345
20小田急電鉄日本2023/037,068
21Container Corporation of India Ltdインド2023/036,742
22Aurizon Holdings Ltdオーストラリア2022/066,464
23Inner Mongolia Yitai Coal Co Ltd中国2022/126,308
24京王電鉄日本2023/035,710
25Bangkok Expressway and Metro PCLタイ2022/125,140
26西武ホールディングス日本2023/034,915
27Compagnie du Cambodgeフランス2022/124,830
28九州旅客鉄道日本2023/034,812
29Qube Holdings Ltdオーストラリア2022/064,742
30Guangshen Railway Co Ltd中国2022/124,602
31名古屋鉄道日本2023/034,358
32京阪ホールディングス日本2023/034,250
33BTS Group Holdings PLCタイ2023/033,939
34京浜急行電鉄日本2023/033,636
35南海電気鉄道日本2023/033,391
36ComfortDelGro Corp Ltdシンガポール2022/122,675
37MRS Logistica SAブラジル2022/122,659
38相鉄ホールディングス日本2023/032,449
39西日本鉄道日本2023/031,943
40Huaihe Energy (Group) Co Ltd中国2022/121,873
41PJSC TransContainerロシア連邦2021/121,842
42FirstGroup PLCイギリス2023/031,630
43China Railway Tielong Container Logistics Co Ltd中国2022/121,510
44Jungfraubahn Holding AGスイス2022/121,255
45Mobico Group PLCイギリス2022/12970
46SBS Transit Ltdシンガポール2022/12798
47Shanghai Shentong Metro Co Ltd中国2022/12758
48Gateway Distriparks Ltdインド2023/03608
49山陽電気鉄道日本2023/03487
50Uestra Hannoversche Verkehrsbetriebe AGドイツ2022/12444
51Longzhou Group Co Ltd中国2022/12443
52Fnmイタリア2022/12272
53Globaltrans Investment PLCロシア連邦2022/12259
54広島電鉄日本2023/03246
55神戸電鉄日本2023/03241
56BVZ Holding AGスイス2022/12237
57PKP Cargo SAポーランド2022/12225
58Engenco Ltdオーストラリア2022/06122
59La Forestiere Equatorialeフランス2022/12121
60京福電気鉄道日本2023/0382
61Ceres Global Ag Corpアメリカ2022/0679
62Metro Global Holdings Corpフィリピン2022/1248
63Ferrocarril del Pacifico SAチリ2022/1242
64秩父鉄道日本2023/0334
65Arshiya Ltdインド2023/0321

出典:各社プレスリリースなど

世界の鉄道会社ランキングの有用性

世界の鉄道会社ランキングの有用性を考察するにあたり、以下の観点からその価値や意義を理解することができます。

  • 市場の評価: 企業の時価総額や収益性を基にしたランキングは、市場におけるその企業の評価や信頼性を示す指標となる。特に投資家やアナリストにとっては、市場の動向を把握する上で有益な情報となる。

  • 業界トレンドの理解: ランキングを通じて、どの地域や国の鉄道企業が強いのか、またその背景や理由を深堀りすることで、鉄道産業のグローバルなトレンドや変動を把握することができる。

  • 競合分析: 企業同士のランキングを比較することで、競合関係や市場のシェア、競合優位性を明確にすることができる。これは企業の戦略立案や業界への参入意向を持つ企業にとっての参考情報となる。

  • 投資判断の参考: 投資家や機関投資家は、ランキング情報を基に、鉄道産業への投資判断を行う際の一つの参考として使用することができる。

  • 業界の健全性の確認: 鉄道業界のトップ企業が健全な収益を上げているか、あるいはその地位が揺らいでいるかを知ることで、業界全体の健全性や成熟度を評価することができる。

  • 新しいビジネス機会の発見: ランキングを通じて新興市場や急成長している企業を発見することができ、これが新しいビジネス機会や提携・M&Aの機会を見つける手助けとなる。

  • 一般の理解向上: 一般の人々が鉄道産業やその重要性、さらにはトップ企業の役割や影響力について理解する助けとなる。

  • 企業の認知度向上: ランキングに名を連ねることで、その企業のブランドや認知度が高まる可能性がある。

しかし、ランキングを鵜呑みにするのは危険である。企業の実力や価値を時価総額のみで判断するのは短絡的であり、他の多くの要因(経営戦略、長期的なビジョン、企業文化など)も考慮に入れる必要がある。

世界の鉄道会社ランキング:変化を与える要素

世界の鉄道会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。

経済状況

各国の経済成長や不況は、鉄道の利用者数や貨物輸送量に直接影響を与えるため、鉄道会社の収益性やランキングに影響を与えます。

技術革新

高速鉄道技術や自動運転技術の進化、デジタルチケットの導入などの技術革新は、効率性や収益性の向上をもたらし、ランキングに影響を及ぼす可能性があります。

政策・規制

政府の鉄道インフラへの投資、規制緩和や厳格化、公共輸送の推進政策などが鉄道会社の業績やビジネスモデルに影響を与える。

環境意識の高まり

環境に優しい移動手段として鉄道の需要が高まると、鉄道会社の収益やランキングが向上する可能性があります。

大規模事故

重大な鉄道事故や安全問題が発生すると、その鉄道会社のブランドや信頼性が大きく損なわれることがあります。

競合との関係

航空業界やバス業界などの他の輸送手段との競争状況が、鉄道の需要や価格戦略に影響を与える。

都市開発

新しい都市や商業地域の開発、都市間の接続強化などが鉄道の利用を促進し、収益性に影響を与える。

国際的な取り組み

国境を越える鉄道プロジェクトや国際的な協力により、鉄道会社の業績や影響力が変動することがあります。

タリフ・運賃政策

運賃の値上げや割引キャンペーンなどの価格政策が、利用者数や収益に影響を与える。

労働関係

ストライキや労働協約の交渉状況が、鉄道サービスの提供や業績に影響を及ぼすことがある。

外部要因

天災、パンデミック、テロなどの予期しない外部要因が鉄道の運行や収益に影響を与えることがある。

これらの要因は、鉄道会社の業績や市場評価に影響を与え、その結果としてランキングの変動をもたらす可能性があります。

まとめ

2023年の世界の鉄道会社ランキングを見ることで、各国の経済状況や鉄道技術の進化、さらには政策や規制の影響が如実に現れています。アメリカやカナダ、中国をはじめとする国々での鉄道の成長は、これからの世界経済の動きや持続可能な社会の実現に向けた足跡とも言えるでしょう。

このランキングは一つの指標に過ぎませんが、それぞれの鉄道会社の背後にあるストーリーや、今後の鉄道産業の展望を感じ取ることができます。鉄道が持つ無限の可能性と、それを支える各鉄道会社の努力を今後も注視していきたいと思います。

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